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都会で老いるコストとリスク 介護・住居・教育がカギ

2015/10/30(金) 13:44 配信

長い間まじめに働いたんだから、人生の最後くらい、好きな場所で好きなように暮らしたい。そんな思いを抱くことさえ、許されないのか。

「介護」「住居」「教育」、都会で暮らすうえで注意しなければならないのがこの3つだ。いつ親が倒れ、介護生活を強いられるかはわからない。仮に介護と仕事との両立ができなくなれば、「詰み」だ。中には住宅ローンに子どもの教育費まで「三重苦」を背負う場合もある。その上、すべてのコストが都会では高い。年収1200万円を稼いでいてもホームレスに転落してしまう事例もある。(AERA)

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写真:Fujifotos/アフロ

介護のために退職するが…

JRの線路下を走る地下道。そこに段ボールでしつらえた、棺桶サイズの"部屋"で横になる。明日の天気が知りたくて携帯ラジオをつけると、花火大会の情報が流れた。

「その日まで、俺は生きていられるのか」

男性(60)は、6年ほど前のホームレス生活を振り返る。いつも頭に浮かんだのは、血を吐いて倒れ、そのまま息を引き取った仲間や、電車に飛び込んだ年配の女性の姿……。何日も食べられないこともあり、体はみるみる痩せていた。

そんな男性も、かつては都内の大手百貨店で食品部門を仕切っていた。ブランド店との付き合いでオーダーした1着70万円のスーツを着て全国を飛び回り、新商品を見つけ出す。物産展もすべてを指揮し、年収は1200万円を超えていた。

そんなとき、母を介護していた父にがんが見つかった。

「一度ネクタイを外したら、また着けるのは難しいぞ」

上司にはそう引き留められたが、両親に最後の恩返しがしたくて、1千万円の退職金と引き換えに仕事を手放した。45歳のときだった。貯金も2千万円ほどあった。父の葬式と墓の購入に850万円を使ったが、それ以外に大きな買い物をした記憶はない。

知人の会社に再就職したが、年齢とともに条件が悪くなり、何度も職を変えた。50歳を過ぎて就いた仕事は、オートレース場の売店でのアルバイト。しかも給料の遅配や不払いが続き、母が85歳で亡くなるころには貯金も底をつき、母の遺骨を抱えて路上に出るしかなかった。

親の介護や自身の病気、ケガや事故、会社の経営悪化など、歯車の一つが狂っただけで、「下流」に転落していく人がいる。特に地価や物価の高い都心部では、収入を失えば最低限の生活さえままならなくなる。都会で老いるには、コストとリスクを把握し、それに備える必要があるのだ。

写真:アフロ

介護施設は満床、高すぎる住宅費

リスクの一つは、先の男性が転落するきっかけとなった「介護離職」だ。都会に住む人たちは、生まれ育った田舎に親を残していることも多い。国は医療費抑制のため、在宅医療や在宅介護を推進し、誰もが病院で親を看取れる時代ではなくなった。施設に預けたくても、ベッドは満床。さらに都会では料金もかさむ。

ファイナンシャルプランナーの有田美津子さんによると、有料老人ホームの相場(家賃や食費などの月額)は地方では15万円程度。東京都内ではそれが25万~30万円ほどに跳ね上がり、23区内ともなると40万円ほどにもなる。

生活困窮者を支援するNPO法人ほっとプラスの代表理事で、『下流老人』(朝日新書)の著書がある藤田孝典さんは、都会で老いるもう一つのリスクは圧倒的に高い家賃だと考えている。

「この高水準はスペインのマドリードとアメリカのロサンゼルス、東京ぐらいでしょう。特に日本は生活困窮者でもなかなか公営住宅に入れず、普通なら払えないような住宅ローンを払って家を持つという、まれな国です」

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