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【#分け合うふたり】 実親が家に来ない…背景に妻への遠慮?夫の悩みを解決するには

2020/04/03(金) 16:00 配信

オリジナル

「近くて遠い」と言われる、義理の親との関係。良好でいたいと思いながらも、価値感の違いなどから、義親との付き合いがストレスになってしまうことも。子育て中の夫婦や共働きの夫婦が、義親とうまくやっていくにはどうしたらいいのか? 今回、関係は悪くはないが、「姑と深い話ができない」という妻、「実親が遊びに来てくれない」と嘆く夫を取材。解決の糸口を探った。(取材・文 上條まゆみ 撮影 岡田晃奈、村上宗一郎/Yahoo!ニュース 特集編集部)

家族4人で年に1回帰省

「姑さんは少し口うるさいところがありますが、基本は優しいです。娘2人も会いに行くのを楽しみにしています」

こう話すのは、神奈川県在住の古川美也子さん(仮名・42歳・パート)。関西出身で長男の夫と13年前に結婚し、小学生の娘が2人いる。4人暮らしだ。

夫の両親はともに70歳を超えているが、海外旅行にも出かけるアクティブシニア。関西の実家に2人で暮らしている。古川さん一家は毎年1回帰省し、近況を報告したり、食事をごちそうになったりしている。

神奈川県で夫、娘2人と暮らす古川さん(右、撮影:岡田晃奈)

「姑さんは当時としては珍しい元キャリアウーマン。私との関係は姑と嫁というより、上司と部下のような感じです。実家に行ったときは、義母の近くに立って、指示を受けながら料理や片付けのサポートをしています。これはこれでやりやすい。滞在は5日間だけですし。まずまず楽しく過ごしています」

夫の実家との関係は悪くはないという古川さん。一方で大きな不安も抱えている。義親が体調を崩したとき、だれが介護するのか? 実家はどうするのか?

「私も夫も職場は神奈川です。娘2人もこちらで育てる予定です。私の両親も首都圏にいます。夫の実家は良いところですが、住んだり頻繁に通ったりするのは難しい。今後、義親の世話は誰がして、広大な土地と家とお墓は誰が守るのでしょうか」

夫には弟がいて、実家近くで一人暮らしをしている。結婚の予定はなく、実家について兄弟で話し合っている様子もみられない。夫の実家のこととはいえ、古川さんの不安は高まっていった。

写真はイメージです(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

夫を経由して義親に意見

こうした問題は多くの家庭でも起こっている。親が元気なうちに話し合いを持つことが大切だが、嫁から直接、姑に言うのは難しい。どう言葉を選んだとしても角が立ってしまう。

モヤモヤが募るなか、古川さんは意を決した。

「ここは夫から言ってもらおう、と。長男だけどあまり深く考えていない様子だったので、まずは状況を理解してもらうことから始めました」

古川さんが、夫に自身の希望を伝えるときのコツがある。

「インターネットに悩み相談のサイトがあります。検索すると、私が夫に相談したいことと同じような事例が出てくるので、それを夫に見せるんです。私じゃなくて、他の人の相談ごととして読むと、客観的になれるみたいで(笑)」

結婚するとき、義母が式の日取りや時間を指定してきた。夫は気にしていない様子だったが、古川さんは不満だった。「勝手に決められるのは困る」と夫に伝えたいが、どんな言い方ならいいのか。迷った末、古川さんはインターネットで検索し、同じような悩み相談の文面を見せた。

その後も時折、この方法で夫婦げんかを回避してきた。今回もそうした。

「サイトを見せて客観的に問題を認識させたあと、『うちも娘2人でしょう。弟さんは結婚しないかもしれない。そうしたら、いずれ実家もお墓も草ぼうぼう、どうするの?』と、懇々と諭しました。夫は初めて気づいたようで、『わかった、僕から言ってみるよ』と義母に電話をしてくれました。一歩前進です。夫は近いうち実家に帰り、弟さんも交えて相談することになっています」

(撮影:岡田晃奈)

夫より妻のほうが、義親への不満が多い?

義親との付き合いは、なかなか一筋縄ではいかない。民間の調査では、「義親との関係に不満がある」と答える人の割合は、夫よりも妻のほうが多いというデータもある。

背景について、東京大学社会科学研究所の鈴木富美子特任助教はこう説明する。

「女性は昔から、親族のなかで人間関係を調整し、維持していく役割を担ってきました。昭和22(1947)年の民法改正で家制度は廃止されましたが、時代が令和になっても『嫁』という言葉は残っています。男性、そして長子優位の意識は、曖昧なかたちで一部続いています。地域によっては、まだまだ義親から『嫁』としての役割を期待されるところもあることから、妻側もそれを負担に感じ、不満につながっているのかもしれません」

東京大学社会科学研究所・鈴木富美子特任助教。家族社会学が専門(撮影:村上宗一郎)

一方、この30年の間に大きく産業構造が変化し、仕事も多様化した。子どもが親の仕事を継ぐことが難しくなり、実家から遠く離れて居を構えることも珍しくなくなった。

「でも現実には、親の家や土地はどうするか、お墓はどうするか、といった問題は残ります。古川さんの抱える悩みは、まさにこれでしょう」

両実家のバランスで苦労

自分の実家と、妻の実家のバランスのとり方に悩んでいる人もいる。東京都在住の会社員・矢代亮介さん(仮名・36歳)もその一人だ。

家族は妻と小学生の娘2人。妻の両親は山形県在住で、年に3、4回矢代家にやって来て、5日間ほど滞在する。夏休みや冬休みなどは、矢代さん一家が泊まりがけで会いに行く。

「もちろん気は使いますが、義親には結婚前から『亮ちゃん』と可愛がってもらっています。6人で過ごすのもにぎやかで、なかなか楽しいです」

「結婚前から義親に可愛がってもらっている」という矢代さん(撮影:編集部)

妻の実家と濃密な付き合いをする一方、自身の両親との付き合いは淡泊だ。矢代さんの実家は東京にあり、電車で30分ほどと近い。だが、矢代さんから年に数回会いに行くものの、両親が来ることはほとんどない。

「僕は3人兄弟の次男で、兄も弟も独身。両親にとっては娘たちが唯一の孫です。もっと両者の距離が縮まってほしいので、会う機会を増やしたいのですが、両親は妻に遠慮があるのか、進んで会いに来ることがないんです」

それで最近は、娘の運動会や休日の外食時に、意識して声をかけるようにしている。

「みんなで仲よくできたら」との思いから、娘の卒園式には双方の両親を呼んだ。

「その後、みんなで食事に行こうとなり、僕は急な仕事で抜けたんですが、後から妻に『義親と話が弾まなくて困った』と言われてしまいました(苦笑)。改めて、自分の両親と妻の間を取り持つことの難しさを感じました」

「お嫁さん」への遠慮がある姑

前出の鈴木特任助教によれば、矢代さんのようなケースは珍しくないという。

「いまの時代、息子の親には『お嫁さん』に遠慮する傾向もあります。自分自身が嫁姑の苦労を経験しており、どういった言動や行動が疎ましがられるか十分にわかっているからです。息子に嫌われたくないという気持ちもあるでしょう。一方、息子からすれば、妻には妻の親と同様、自分の親も大事にしてほしいという思いもある。ここは夫が妻に『自分の親とも仲よくしてほしい』と率直に伝え、夫婦で話し合いながら、双方のバランスをとっていくことが重要です。現代のようにきょうだいが少ない時代には、それぞれの親との付き合い方について、夫婦間の調整作業が不可欠になっていくと思います」

義親との関係がうまくいっている夫婦には、共通項があるという。それは「夫婦仲がよい」ということだ。古川家も矢代家も、その土壌はありそうだ。

なお、鈴木特任助教によると、夫が自宅に自分の両親を呼ぶ場合、増える家事負担を夫が積極的に担っていくようにすると、妻も快く両親を迎えられるのではないか、という。パートナーへの配慮や気遣いが、解決への一歩と言えそうだ。

写真はイメージです(写真:アフロ)

連載「分け合うふたり」

共働き夫婦が1500万世帯を超えた現在。公平な役割分担をパートナーに求めようとしても、すれ違いや偏りが生まれてしまうことも。お互いが役割やタスクを分かち合い、ストレスなく生きていくためには、どうすればよいのでしょうか。さまざまな事例から、解決のヒントを探ります。