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木村哲夫

「母親にも母親の人生がある」――女優でYouTuberで母、仲里依紗が「型にハマらない」理由

2021/01/11(月) 18:15 配信

オリジナル

「“お女優”にはなりたくないんです。昔ながらの『女優はこうあるべき』というしきたりを守ろうとすると、つらくなっちゃう」
NHK連続テレビ小説『エール』で喫茶店の店主としてコミカルな演技を見せたかと思えば、TBS系『恋する母たち』ではダブル不倫する妻役を好演。女優・仲里依紗は、ドラマでの演技だけにとどまらず、「型にハマらない生き方」を地で行っている。話題のYouTubeチャンネル、夫との関係、子育て論……包み隠さずに打ち明けた。(取材・文:岡野誠/撮影:木村哲夫/Yahoo!ニュース 特集編集部)

アンチは「知らない人だから気にしない」

「女優さんって、私生活が謎に包まれているし、優雅なイメージがあると思うんです。『ファミレスのご飯なんて食べないでしょ』と言われるけど、月に何回も行くほど大好きだし、スーパー銭湯で知らないおばちゃんからミカンをもらうこともある。ホント、普通の生活をしてます。でも、インスタグラムだと、作り込んだおしゃれとか“映える写真”ばかりになる。それは違うなって。YouTubeで偽りのない素の自分を見てほしかったんです」

夕飯の準備がだるいと言いながら家のソファでゴロゴロする私生活をさらけ出し、黒ギャルメイクやキティちゃんのコスプレも披露する――。企画、編集、テロップ入れなど全て自らが手掛けるYouTubeチャンネル『仲里依紗です。』は、登録者数100万人を超えた。温泉に向かう車中で突然『もののけ姫』を歌い始めることもあれば、パジャマ姿で寝転がりながら愚痴ることもある。鼻をすすっても、あくびをしても、くしゃみをしても、編集でカットしない。

「『あっ、ウケる』と思って、残してます。基本的に、何を言ったか覚えてない。『何やってるの? この人』『すごいテンション高いんだけど』と冷めた目で編集していますね」

毎回のように女優の固定概念を打ち破る衝撃に、コメントは2000件を頻繁に超える。だが、人気を呼べば呼ぶほど、意に沿わない書き込みも生まれる。エゴサーチをすれば、「劣化した」「昔は可愛かったのに」という言葉が並ぶ。

「傷つかないと言ったら、絶対ウソですよね。でも、知り合いに言われたら悲しいけど、知らない人だから、全然気にしない」

この心境にたどり着くまでには、幾多の試練があった。海と山に囲まれた長崎県東彼杵郡に生誕した仲里依紗は中学2年の2003年、少女漫画雑誌のモデルオーディションに応募。現在の所属事務所であるアミューズに見いだされ、卒業と同時に上京した。

「カリスマになりたかった。とりあえず、カリスマになりたかったんです、私。カリスマ、イコール、東京に行かないとなれない。女優というより、ギャルになりたかった。長崎に住んでいると、福岡まで行かないと好きなお洋服を買えないから、ギャルになれない。109の店員になって、渋谷を制覇したかったんです」

両親は、娘に3年という期限を設けた。高校在学中に芽が出なかったら、長崎に戻らなければならない。渋谷のカリスマを目指す彼女は、ハングリー精神の塊となった。太りやすい体質を改善するため、1回300円のジムに毎日通った。高校の寮で、自分だけ遊びに誘われていないと気付いても、全く羨ましさを感じなかった。

「両親に『東京って、怖かとよ。おそろしか』と教育されてきたんですよ。全員、敵だと思えと。完全に、田舎者の発想なんですけど(笑)。だから、自分しか信じないというか、自分の身は自分で守ろうと決意していたんです」

“お女優”ではない生き方を結婚が後押し

我が道を一直線に進んできたように見えるが、当初は“お女優”のレールを歩いていた。

「駆け出しの頃、服装も髪形も“清純派”を求められました。そういう作品も多かったし、イメージに沿わなきゃいけないと思ってました。でも、本当の自分ではないから、ファンの人が付いてもつらくなっちゃう。ピュアに見える女の子の真逆の一面を週刊誌で知ったら、『だまされた!』と感じませんか?」

お嬢さま役なのに、斜めに前髪を切ってしまい、必死にごまかしたこともあった。眉毛を細くしようとしたら、間違って真ん中に線を入れてしまい、ヤンキーのようになったまま、オーディションを受けたこともあった。

「普段から、かわいらしい洋服じゃなくて原色系ばかり着ていたし、好きなものを好きと言い続けていました。そしたら、マネージャーさんもあきらめモードになった。変化球タイプだと気づいてくれて、本当に助かりました」

20歳の時、映画『ゼブラーマン ―ゼブラシティの逆襲―』(2010年)にヒロインとして出演。ボンデージ衣装で〈なぶり殺しにしてやるわ!〉と叫ぶ極悪悩殺キャラを演じ、吹っ切れた。3年後には、俳優・中尾明慶と結婚。自分にない性格を持つ彼の存在は、“お女優”ではない生き方をさらに後押しした。

「私はすごく人見知りをしてしまうタイプ。でも、旦那さんは誰とでもすぐ打ち解けられるし、引っ張ってくれる。それに、派手な服を着ても、何も言わない。むしろ、普通の格好をしたら『今日何か違うな。……モテようとしてるんじゃないか、この女』って思われそう。結婚してから、より自分を出せるようになりました」

2020年11月22日には、ある調査で“理想の芸能人夫婦”1位に選ばれた。だが、彼女は世間の評価を冷静に捉えている。

「ウケる! って感じでした。もっといますよ、いい夫婦。旦那さんとは『毎日、けんかしているのにね』と話しました。いつも些細なことで言い合ってます。洗面所にあるマウスウォッシュのキャップを半分ぐらい開けておくんです、旦那さんが。しかも、タオルやドライヤーのあるほうに置くから、倒れて液が漏れるんですよ。トイレやお風呂の換気扇も付けないし。子供が学校の先生に『昨日、ウチのお父さんとお母さんがまたけんかしてた』と告げ口していたくらいです(笑)」

「母親にも母親の人生がある」

女優、1児の母、YouTuberと三足のわらじを履く仲は毎朝5時に起床し、小学生の長男の弁当をこしらえる。6時半に学校へ送り出した後、家の掃除や洗濯を済ませ、8時15分から1時間ほどヨガのレッスンを受ける。その足で、皮膚科やクリニックでメンテナンスをしたり、ジムに赴いたりして、自分の体と向き合う。

「夕方になると、白目むいてますもん、眠くて。朝起きた時には絶対、今日はもう一度寝ようと決めます。でも、お弁当を作っていると、『ああ、ヨガ行きたい』と思っちゃう」

日が沈む前に自転車を漕いで、スーパーに寄って食材を買い込み、駅前に子供を迎えに行く。夕暮れ過ぎ、家に到着すると夕食の準備に取り掛かる。食事を終えれば、食器を洗い、洗濯物を畳み、明日の弁当の準備をする。全ての家事を終えてようやく、YouTubeの編集をしたり、ドラマの台本を覚えたりする。

「夜は、いつも何時に寝たかわからない。気絶したように横たわります。でも、世の中のお母さんはみんな、忙しいですよね。家事も編集もだるいなあと思うこともあるけど、仕事も子育てもYouTubeも全部好きだし、本当に楽しい」

温和な日々だけが続くわけではない。長男を叱り、お互いに引きずっていたことがあった。数日経つと、学校から帰ってきた息子がそっとテストの紙を渡しながら、ボソッと〈せっかくママのために100点取ったんだけどな。だから仲直りしようよ〉とつぶやいた。

「キュンとしましたね。子育ては、あんまり考え過ぎないでやってます。母親も子供も、人と比べないことが大事かなって。育児の本も読まないです。最低限、食べちゃいけないものとかを把握するくらい。あと、お互いに楽しいほうがいい。母親にも母親の人生がある。子供の好きなアニメ映画を見終わったら、私の行きたい洋服屋に付き合ってもらうようにしてます。だからなのか、『こんな静かな子は初めて見ました』とよく言われます。我慢のできる子に育っているのかな」

かつて、〈ずっとネバーランドにいたい〉〈大人になりたくない〉(「週刊文春」2011年11月10日号)と発言していた仲も31歳を迎えた。誰しも加齢は避けられない。

「人生はソフトクリームだと思います。子供の頃は1年が長く感じるけど、大人になると時間がどんどん短くなる。でも、透明な気持ちでいれば、いろんなものを吸収できるし、どんな状況にも対応できる。コロナによって世の中がこんなに変わっちゃったけど、これからも自分が楽しく感じることをやり続けて、周りの人やファンの人も楽しんでくれたらいいなって」

仲里依紗は現状を受け止めながら、自分の道を模索し、感情を素直に発する。嫌な出来事があれば愚痴り、嬉しい瞬間があれば歓喜する。決して己を誇示せず、卑下もしない。女優の檻に入ることなく、繕わずに日々を生きる。ただ、あるがままに――。

衣装協力:dix、PERMINUTE、Lemme.、lost in echo


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