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殿村誠士

毒舌、あざとい、勘違い、女子アナらしくない――「聞きたくないです」弘中綾香が目指す革命

2019/07/11(木) 07:17 配信

オリジナル

可愛すぎる、毒舌、あざとい、勘違いしている――。テレビ朝日の弘中綾香アナウンサーは、常にネット上で称賛と批判にさらされている。2017年10月から始まった『激レアさんを連れてきた。』が話題になり、昨年12月発表の『好きな女性アナウンサーランキング』(オリコン調べ)では、ベストテン圏外から2位に急上昇。しかし、もともとアナウンサーになる気はまったくなかったという。「夢は革命家」と言い切る彼女に、本音を聞いた。(取材・文:岡野誠/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース 特集編集部)

自分にとっては普通のこと

「『毒舌』『勘違い』という二つの言葉はよく耳に入ってきます。人によって、物事の感じ方って違うと思うんですよ。同じ発言でも、ある人にとっては『毒舌』かもしれないけど、私にとっては『普通』かもしれないじゃない? って」

SNS全盛の時代、「周囲からの見られ方」を気にする風潮が強いなか、弘中綾香は堂々としている。

「入社1、2年目の頃は、自分に関するネットニュースも読んでいました。でも、テレビで言ったことも曲解されて書かれますし、『(記事に出てくる)“関係者”ってどなたのことかしら?』『私に会わせてくださいますか?』とカチンときちゃって。パソコンは使いますけど、今は自分のことを検索しないですね。記事も見ないように心がけています。絶対目にしたくないと思っていて。それでも、友人や会社の皆さんが伝えてくるんですよ。だから、『聞きたくないです』と返答します」

あどけなさを残す表情から強気な言葉が繰り出されるため、“アナウンサーらしくない言動”と評されることもある。

「ステレオタイプ的に“アナウンサーなのに○○”と考えたがる人もいるみたいで。“清楚な顔なのに、こういうことやっています”のような話が好きなんですよね、きっと。それを見つけたがっていらっしゃる。女子アナも同じ人間だよ、と思いますけどね」

“毒舌”と評される発言を抑えようと考えたことはなかったのか。

「性根は変えられないですからね。学生時代、毒舌なんて言われなかったですからね。私はずっと同じ性格で生きてきましたし、もう今さら変えられない」

アナウンサーになる気はなかった

アナウンサーになる気は全くなかったという弘中。慶応義塾大学時代、女子アナの登竜門といわれるミスコンテストに応募することもなく、アナウンススクールに通ったこともない。フィールドホッケー部のマネージャーとして、日吉のホッケーグラウンドに通う生活を送っていた。大学3年秋から始まる就職活動では、テレビ局の総合職を目指していた。

「人事部に顔を覚えてもらえたら、総合職の試験で有利になるかもしれないと思って、(募集が先の)アナウンサー採用試験を受けました。だから、面接がどんどん進み、最終的に合格の電話がかかってきた時は驚きました。部活で報告しても、『ほんとに受かったの?』とあんまり信じてくれなかった(笑)。どうして受かったのか全くわからなかったです。今思えば、もう一人の(同期入社の)林美沙希アナウンサーがすごくしっかりしているので、『あんなのも面白いんじゃないか』と感じてくれたのかなって。やっぱり、同期のバランスってあると思います」

本人は謙遜するが、面接担当者は潜在能力を感じ取っていた。『アメトーーク!』などのプロデューサーである加地倫三氏は、『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)で入社試験時の弘中をこう語っている。

「アナウンサースキルはひどかったけど、当時はね。声もよくないし、滑舌も。でも、フリートークは、図抜けてすごかった。面白かった」
「この子は、タレントになったら(『踊る!さんま御殿!!』〈日本テレビ〉の)“踊るヒット賞”を取るようなタイプだなって」

テレビ朝日は、弘中を入社から半年で看板番組『ミュージックステーション』のサブ司会者に抜擢し、メイン司会者であるタモリと組ませた。過去に下平さやか、武内絵美、堂真理子、竹内由恵という局を代表するアナウンサーが務めてきたポジションだ。

「歴代のそうそうたる顔触れの中で埋もれちゃいけないと思いました。選んでくださった方々のためにも、番組のためにも、ちゃんとステップアップしていかなきゃいけない。『テレビ朝日といえば弘中』と言われなくてはいけない。私、意外と義理堅いところがありまして(笑)。その頃から、他の人と一緒だと良くないと考え始めましたね」

大きかったタモリの影響

もともとアナウンサーらしくない性質を持っていた弘中に、サラリーマン生活を経て30歳で芸能界に入った特異な経歴を持つタモリの姿勢は、大きな影響を与えた。

「タモリさんはハプニングやアクシデントがあっても、常に泰然自若としている。(サブ司会を務めた昨年9月までの)5年間、一度も『こうしたほうがいい』とか『これは駄目だ』って注意されたことがなかった。考えを押しつけたりすることがまったくないんです。30周年記念で初の10時間生放送をした時、私はずっとドタバタしていました。終わったら、緊張感から解放されて一気に疲れが出た。でも、タモリさんは『見応えあったね〜』とまるで他人事のように話していたんです(笑)。プレッシャーに押し潰されるのではなく楽しむ気持ちが一番大事だと、立ち居振る舞いを見て学びました」

4月20日には弘中たっての希望で、『激レアさんを連れてきた。』で共演中の若林正恭、相方の春日俊彰がパーソナリティーを務める『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)に出演。その2日前にテレビ番組で10年間交際していた女性にプロポーズした春日には「見ました。1.5倍速で(笑)」とジャブを放ち、若林には「同じ話を何度もしすぎです!」などと臆せず突っ込み、リスナーの笑いを誘っていた。

「まさかテレビ朝日社員の私が出られるとは思いませんでした。オードリーさんの胸を借りて、すごく楽しかったです。若林さんには、(テレビ共演で)普段ため込んでいたものを一気に伝えさせていただきました。怒っていたら、悲しいですけど。テレビだと短い時間で一つの話をまとめなければならないけど、ラジオだと話の前振りに20分使って最後の一言で落としてもいい。それに、数人でしゃべるなら一つのテーマに対して議論を深めていける。当面の目標はラジオ番組を持つことです」

番組では、〈結婚したからといって幸せになるとは限らない〉という発言も話題を呼んだ。

「(一般的な)向こうの尺度で測られたくないんです。何で決めつけるんだろうと思って。最近、『いい年だから結婚したほうがいいんじゃない?』とよく言われます。結婚イコール幸せと決めつけている。でも、私は今も幸せです。(人生を)自分の力だけではどうにもできないかなと感じた時、二人になったら幸せになれると思うのかな。わからないですけど」

ランキングは「ホントなんですかね?」

世間の“こうでなければならない”という概念を変えていきたいと話す弘中には他にも、違和感を覚える世の風潮がある。

「友達多いイコール良いこと、(SNSで)フォロワー多いイコールかっこいいという考え方は疑問ですね。本当に数が必要ですか? ネットにいろいろ書かれることについて、数少ない友達に相談したこともあります。そしたら、『綾香の人となりをちゃんと知っている人は、絶対に信じないから大丈夫。外野の人が何と言おうと気にしなくていいんじゃないの?』って。このアドバイスが、すごくしっくりきました」

従来のアナウンサー像から離れている弘中を、支持する層は確実に増えている。昨年12月発表の『好きな女性アナウンサーランキング』では1位の有働由美子(元NHK)、3位の加藤綾子(元フジテレビ)という長年にわたって高い人気を保つアナウンサーに挟まれ、2位になった。

「ホントなんですかね? 何かエラいことになったぞという感覚はありました。(ネットに)また書かれるんじゃないかって。私は私なりに細々と頑張ってきました。帯番組を担当しているわけでもないし、他の方に比べて、テレビ露出は多くない。正統派のアナウンサーではない部分を評価していただいたとすれば、保身に走らなくて良かったと思いました。ちゃんと見てくれている方はいるんだなって。もちろん、今もアナウンサーらしさを求められる場面もありますし、控えるべきところもたくさんあります」

弘中に限らず、20代後半を迎えた人気アナウンサーには、独立の噂が持ち上がる。今春、テレビ朝日からは小川彩佳、宇賀なつみが巣立っていった。弘中はフリーへの転身を考えているのか。

「やっぱり、夢が革命家なので、マスコミという媒体に所属していると大きいじゃないですか。テレビ局員じゃないとできないことがある。たとえば、『おっさんずラブ』というドラマを放送したことで、同性同士の恋愛に対する見方は変わったと、肌感覚で感じます。ドラマっていうソフトなパワーでも世論を動かしたり、ひいては世の中を変える力を持っているんですよね。何かを作って発表することで、人の考えに影響を与えたい。それが、革命家という意味です。だから、個人よりいろんな人を巻き込んだほうが作りやすいんじゃないかと。今はアナウンサーという職業柄、表に出ていますけど、もともと総合職志望でしたし、この会社でしたいことがたくさんあるんです」

「らしさ」を貫く自分らしさ

昨今、アナウンサーが単独で番組を仕切る形式はほとんど見受けられない。しかし、弘中は『激レアさんを連れてきた。』で毎回、約1万字の台本を頭に入れ、60枚にも上る自作の手書きフリップをもとにプレゼンテーションする。出演ゲストはテレビ慣れしていない一般人で、毎回ジャンルが異なる。しかも、1日2本撮りだ。相当な準備をしているはずである。

そう水を向けると、弘中は「もう慣れましたね」「ちょっと調べたりはしますけど」と素っ気なく言う。

「大変そうに見えます? それって、あんまり良くないんじゃないですか。簡単に見えるようにやっています」

陰での努力など見せる意味がない。テレビを見て、ただ楽しんでくれればいい――。大勢が無責任に他人を批判し、努力をひけらかすなかで、弘中はそんな雰囲気に惑わされることなく、ただ黙々と、自分らしさを貫く。

弘中綾香(ひろなか・あやか)
神奈川県出身。慶応義塾大学法学部政治学科卒。2013年テレビ朝日入社。アナウンサーとして「激レアさんを連れてきた。」などの番組を担当する。最近、遅ればせながら始めたインスタグラムにハマっている。

スタイリング:村田ゆみ子


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