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殿村誠士

「自分の言葉に責任を持たなきゃ」――“パーフェクト超人”三田友梨佳を支える「中居の言葉」

2020/05/04(月) 09:55 配信

オリジナル

SNS全盛の昨今、自らの発信が批判を浴び、萎縮した経験を持つ人もいるだろう。まして、テレビで意見を言えば、“1億総ツッコミ”を受ける時代。そんな状況下にもかかわらず、フジテレビ・三田友梨佳アナウンサーのコメントが共感を呼んでいる。なぜ、彼女の発信は世間に受け入れられるのか。(文:岡野誠/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース 特集編集部)

順風満帆に見えるキャリアの裏側

「4月から夜の報道番組のキャスターをやってもらいたい」

昨年1月。三田は、アナウンス室長から番組の担当変更を告げられる。安藤優子や高橋克実と司会を務めた『直撃LIVE グッディ!』からの独り立ち。『Live News α』への抜擢だった。

「大きなプレッシャーを感じましたが、安藤さんから『三田なら大丈夫。今のままでいいのよ』と背中を押していただき、等身大の自分で頑張ろうと決意しました。生放送中、スタジオにはカメラしかないですが、その先にいる視聴者の方々にわかりやすく伝えたい。最近は『オーバーシュート』や『ロックダウン』など横文字が多いですよね。言葉の響きに気を取られて、本来の情報が頭に入ってきづらいのではないかと思っていて。日本語で補足したり、自分なりに噛み砕いて説明したりするよう心がけています」

今年4月18日に放送された『さんまのFNSアナウンサー全国一斉点検2020』で“パーフェクト超人”の二つ名がつけられていた三田。彼女のキャリアは順風満帆に見える。

2011年4月にフジテレビに入社すると、1年目から局の看板番組『笑っていいとも!』『めざにゅ〜』のレギュラーに起用された。千野志麻や高島彩、加藤綾子などが務めた『○○パン』シリーズも受け継ぎ、歌手デビューも果たす。

「『いいとも!』ではずっとテレビで見ていた方たちが目の前にいますし、毎回緊張でガチガチでした。そんな私を見かねてか、ある日、タモリさんがサングラスの奥にうっすら見える瞳をキラキラさせながら、『生放送は始まったら終わるから楽しんだもの勝ちだよ』とさらっと仰ったんです。すごく気持ちが楽になりました」

入社5年目、転機が訪れる。『めざましテレビ』から、新たに立ち上がる情報番組『グッディ!』への異動だ。

「番組立ち上げの時、プロデューサーに『三田なりの意見を発信して』と言われました。それまで自分の考えを述べる機会はほとんどなかったですし、周りは大御所の方ばかり。一言も発することなく2時間の生放送が終わってしまう日々が、最初は続きました。ニュースの理解も浅く、無力感にさいなまれました」

危機感を覚えた三田は裁判や法律、選挙の仕組みなどを一から勉強し直す。

休日を使い、都知事選の演説を聴きに行ったときのこと。聴衆はどんな場面で足を止めるのか。なぜこの候補が支持を集めるのか。有権者の反応に着目した。移転問題で揺れていた築地市場にも足を運び、話を聞いて回った。机上の学習と現場の感覚を組み合わせていくことで、オリジナリティーが生まれた。

「2年くらい経つと、ニュースへの理解が深まり、自分の言葉で話せるようになってきました。やはり、(現場に)足を運ばないといけないと実感しました」

電車の中も取材の一部

2018年、東京・南青山で児童相談所の建設をめぐり、住民が「ランチ単価1600円もする一等地にふさわしくない」などと反対。このとき三田は『グッディ!』で、「そういう表現自体が南青山の品位を下げかねない」と持論を述べてみせた。

昨年、ハロウィンを控えた渋谷の街が奇怪な熱気を帯びると、『Mr.サンデー』で「アメリカはあくまでも子どもが主役。日本のように大人たちがハメを外す要素は全くない」と警鐘を鳴らした。

「(南青山の近隣住民が)他人ごとのように話す言葉を聞いていると辛くて。子は親を選べないですし、親から保護してもらえない子は社会が守るべきです。ハロウィンも、お祭り騒ぎする人たちの警備費に1億円もの税金を使うなんて……。当時は豪雨災害で仮設住宅生活を余儀なくされている方たちを現場で取材していたので、悲しくなりました」

ニュースの現場を見るだけではない。報道の過程からも、細かく情報を拾おうとする。

「例えば、電車の中も取材の一部です。(スポーツ観戦で)スタジアムに向かうお客さんの表情や会話も情報になる。私は会社員だからこそ、満員電車のつらさも知っている。そういうところも含めて、見たこと、聞いたこと、感じたことを大切にしていきたいです」

三田を変えた中居の一言

三田の姿勢に称賛の声は少なくないが、一方でアナウンサーが意見を述べることに批判もある。

「正直、今も葛藤があります。あくまでも情報そのものが主役で、私たちに求められるのはいかに円滑に番組を進行し、視聴者の皆さんに大切な情報を伝えるかです。その上で、ただ伝えるのではなく誰かの心に響く言葉を届けられたら嬉しいです。もちろん自分がすべて正しいと思っているわけではありません。お叱りの声もしっかり受け止め、反省を重ねながら、自分自身成長できたらと思っています」

そんな思考が生まれたキッカケは、ある人物の一言だった。入社2年目、芸能人のゴシップネタを紹介するバラエティー番組で、ゲスト出演した中居正広からこう諭された。

「三田さん、それ自分で調べたの? 見たの? 今の言い方、当事者が見たらすごく傷つくかもしれないよ。アナウンサーは影響力のある仕事なんだから、自分の言葉に責任を持たなきゃ」

芸能界の最前線で30年以上活躍してきた中居の助言には、重みがあった。

「浅はかさを身に染みて感じました。当時は自分のことでいっぱいいっぱいで、相手の気持ちを何も考えていなかったんですね。それ以来、中居さんの言葉を大切に心に留めてきました」

行動の契機になることを届けられたら

東京五輪で希望に満ちあふれるはずだった2020年は、新型コロナウイルスで雰囲気が一変。未曽有の危機に、報道キャスターとして何を考えているのか。

「SNSの誤った情報をきっかけにトイレットペーパーが町から消えましたよね。たった一人の言動でも、集まったらどれだけ影響力を持つのか改めて実感しました。ですが逆に言えば、みんなが同じ目標に向かって、少しでも行動を変えたら事態は好転させられる。テレビに出る仕事に就いているからこそ、小さな気づきでも何か行動の契機になることを届けられたらいいなと思っています」

女性アナウンサーは清廉潔白なイメージを抱かれ、無味無臭を求められがちだ。その中で、意見を表明することは勇気がいるのではないか。そう聞くと、三田は毅然と言い切った。

「男性アナウンサー、女性アナウンサーと区別して考えることがあまり好きではなくて。それぞれ持っている信念も違うと思います」

彼女の信念とは。

「情報が錯綜し、憶測だけのようなニュースもたくさんある中で、少なくとも自分の言葉には嘘がないようにしたい。物事の本質を捉え、自分の言葉に責任をもって、視聴者の皆さんの気持ちに寄り添いながら伝えたい。この信念をずっと貫いていきたいです」

汗をかいて準備にいそしみ、感性を磨く。声高に叫ぶ人よりも、遠慮して埋もれがちな人の心を汲み取る。己に嘘をつかず、本音で語る――。これからも、アナウンサー・三田友梨佳は自分にしか出せない熱量で画面から問いかけていく。

三田友梨佳(みた・ゆりか)
1987年、東京都出身。青山学院大学卒業後、2011年にフジテレビジョン入社。2020年5月現在の担当番組は『Live News α』『Mr.サンデー』など。

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