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時事通信社

W杯優勝うかがうラグビー強国、南アフリカの素顔

2019/10/20(日) 11:00 配信

オリジナル

世界屈指のラグビー強国、南アフリカ。「スプリングボクス」の愛称で知られる代表チームはフィジカルの強さで相手を圧倒するのが持ち味で、ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会で優勝候補の一角と目されている。だが、過去2回W杯を制した強豪も、2015年のイングランド大会では日本に大金星を供給。「世紀の番狂わせ」は、今でも世界のラグビーファンの語り草だ。自らもラガーマンだったルラマ・スマッツ・ンゴニャマ駐日大使に、楕円球への思いや、日本と南アの関係を聞いた。(時事通信社/Yahoo!ニュース 特集編集部)

【65秒でわかる南アフリカ】

――W杯開幕前の9月に埼玉・熊谷で行われたテストマッチでは、南アが日本に41-7で完勝しました。

日本代表は非常に良いチームで、とても速い。イングランド大会では大柄な選手が多いスプリングボクスに対し、素早くボールを動かし、その戦術が機能しました。今回のスプリングボクスは若いチームで十分機敏なため、日本に対抗できました。

ルラマ・スマッツ・ンゴニャマ駐日大使(時事)

しかしながら、日本代表は非常に強い。世界ランキングで10位以内に入っていますが、これが多くを物語っています。

――南アの駐日大使として、日本でのW杯を迎えました。

高校時代からラグビーをやっていた私にとっては、完璧なタイミングです。ポジションはフォワードで、フランカーかナンバーエイトでした。コーチをしていたこともあります。W杯にあわせて南アから多くの人が訪日していますが、元プレーヤーとしてのコメントを求められたりもします。そんな状況を本当に楽しんでいます。

――ラグビーの魅力は何でしょうか。

ラグビーは規律を教えてくれます。規律には、どのように自分の身体をケアするか、どのような物を食べるかといった、プレーだけではなく生活のことも含まれます。

W杯日本大会で、ニュージーランド代表と対戦した南ア代表(時事)

またリーダーシップや、精神的な強さの保ち方なども教えてくれます。試合では、自分よりも強く、非常に大きい相手と向き合わなければなりません。日本代表が、15年にスプリングボクスと対戦したときのようなものです。

2015年ラグビーW杯、1次リーグ・南アフリカ-日本。後半、タックルする日本代表の五郎丸歩(中央)ら(時事)

――南アの人々にとって、ラグビーとは何ですか。アパルトヘイト(人種隔離)政策撤廃以前は白人のスポーツだったと聞いたこともあります。

ラグビーは南アの文化の一部です。確かに少し前は、白人のスポーツという傾向がありました。しかし、南部では昔から黒人もラグビーをプレーしていました。今のスプリングボクスの主将、シヤ・コリシ選手は黒人で、私の故郷でもある南部ネルソンマンデラベイ出身です。

――南アは1994年に民主化を達成しました。しかしそれ以降も社会的な格差が大きく、近年は経済成長も停滞しています。

94年以降、当初は非常に良かったのですが、その後停滞しています。世界的な経済危機の影響を受けた側面もあります。しかしアジア、特に日本や中国からの大規模投資により、経済は加速しつつあります。日産自動車は今年4月、プレトリア工場に30億ランド(約210億円)投資する計画を発表しました。トヨタ自動車も東部ダーバンに工場を構え、雇用を増やしています。今後、様々な国と企業からの投資が増えることを望んでいます。

ヨハネスブルクのビル群(AFP=時事)

ヨハネスブルク郊外、南アフリカの旧黒人居住区ソウェトに立ち並ぶ住宅(時事)

――8月末に第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が横浜市で開催されました。

TICAD7は非常に大きな成功でした。アフリカ開発における民間投資の重要性が打ち出されたことが成果です。

南アが日本企業にとって、アフリカ市場へのゲートウエー(玄関)になると考えています。アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)構想が実際に始動すれば、アフリカ内でより迅速に行動できるようになり、日本企業にとってチャンスです。

第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の開幕に合わせ、記念写真に納まる安倍晋三首相(前列右から3人目)とアフリカ各国首脳ら(時事)

――南アはダイヤモンドや金、白金といった鉱物資源に富むだけではなく、ワインや果物にも恵まれています。

鉱物資源は日本にとって大きなチャンスとなるでしょう。鉱物資源の日本への輸出のみならず、日本の技術を南アに輸出してもらい、南アで鉱物資源を加工できるようになればと考えています。

また南アのワインは、世界で最も良質なものの一つです。しかし日本市場は競争面で難しい。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)により、南ア産ワインの参入余地が非常に狭くなっています。

南アフリカ産のワイン(時事)

――日本でやりたいことは。

旅行です。日本各地を訪れ、文化を理解したいと思います。日本人は勤勉で、技術革新の能力を有していますが、どうしてそうなのかを知りたい。

また、行く先々で出会った人々に、南アの料理やワイン、果物といった特産品を紹介したいし、文化も知ってもらいたい。南ア部族の伝統的なダンサーを連れて来て、日本の伝統的な踊りとコラボするのも面白いかもしれません。

南アフリカ・ダーバンの空港で踊るズールー族のダンサーたち(AFP時事)

ルラマ・スマッツ・ンゴニャマ氏略歴:

1952年、南アフリカ・オイテンハーヘ(現ネルソンマンデラベイ)生まれ。ネルソンマンデラ・メトロポリタン大で政治経済学修士。南ア大統領府および与党アフリカ民族会議(ANC)主席報道官、南ア国会議員、駐スペイン大使などを歴任。2019年6月から駐日大使。日本の食べ物では「すしが好き」という。

ラグビーボールを持つルラマ・スマッツ・ンゴニャマ駐日大使(時事)

南アフリカとは:

アフリカ大陸最南端に位置する共和国。1652年、オランダ東インド会社が喜望峰に近いケープタウンに交易基地を建設、オランダ領ケープ植民地が成立した。1795年、英国がケープ地域をアジア航路の戦略的拠点として占拠。ズールー戦争などを通じて先住民を圧迫し、植民地支配を確立した。1961年に英連邦から脱退し、共和国樹立を宣言したが、人口10%程度の白人が大多数を占める黒人をあらゆる面で差別するアパルトヘイト(人種隔離)政策を実施し、世界から強い非難を浴びた。国内の反対運動が高まり、91年にアパルトヘイトを撤廃。全人種参加の民主選挙が行われた94年以降は、黒人主体のアフリカ民族会議(ANC)が一貫して政権を握る。金やダイヤモンドなど鉱物資源が豊富で、金融業も盛ん。アフリカ大陸で最も先進的な経済を持ち、アフリカ唯一の20カ国・地域(G20)メンバー。

南アフリカの料理

先住民に加え、英国やオランダの植民者、インド、東南アジアからの人々が豊かな食文化を形づくった。オランダ系が持ち込んだ粗挽きソーセージの「ブルボス」のほか、南部ケープタウンでは、マレー系のケープマレー料理が有名。インド系が多く住む東部ダーバンでは、本格的なカレーが楽しめる。食パンをくり貫き、その中にカレーをたっぷり注ぎ込んだ「バニーチャウ」という豪快なソウルフードもある。柔らかなパンとマトンカレーが、絶妙のコンビネーションだ。

南アフリカ料理のバニーチャウ(時事)