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岡田武史「日本サッカー協会副会長としてなすべきこと」

2016/03/24(木) 19:33 配信

オリジナル

FC今治のオーナーとして一つのクラブの舵取りをしてきた岡田武史。3月、岡田に新たな肩書が加わろうとしている。それが「日本サッカー協会・副会長」だ。

岡田はこれから何をなそうとしているのか。岡田に話を聞いた。(聞き手:二宮寿朗/スポーツライター)

――3月10日の日本サッカー協会理事会で副会長職に選出されました。27日の評議員会を経て、正式決定となります

岡田武史(以下、岡田):僕としては一番大事な仕事が今治にある。ここまでいろんな人がついてきてくれたり、お金を出してくれたり、そういう人たちを裏切るわけにはいかない。ちょっと無理ですと、(協会に)話をしたんですけど、常勤じゃなくていいということで今治と両立してやっていけるんじゃないかと。月2日の常務理事会、理事会に出席する社外取締役のような感じですよね。

日本サッカー協会を改革していきたい

――協会からはどういった役割を求められるのでしょうか?

岡田:具体的には正式に決まってから、役割を話したいと言われています。簡単に言われているのは、協会を改革をしていきたい、変えていきたいと。そういうことを先頭に立ってやってくれないかと。僕はいつどこに行ってもそのような役割みたいで、いろんな人に嫌われる役になるのかなあって(笑)。具体的にはこの後、ディスカッションしようということになっています。月に2日で本当にどこまでできるんだろうっていうのは、いまだにありますけどね

――オーナーを務めるFC今治では夢やロマンを掲げています。そんな多忙な折に、副会長職を受けたのはやはり「使命感」からなのでしょうか?

岡田:今やっている今治(の仕事)は、自分自身がワクワクしているし、楽しいし、僕と一緒に夢やビジョンを追いかけてくれている。でも協会については最近どんな感じなのかをメディアを通じてしか知らない。よくわからないんです。

(副会長になって)自分から『よし、こうしてやろう』という感覚は今のところまだ持ってない。ただ、日本のサッカーがこれからどうあるべきかを思ったとき、力を一つにしなきゃいけないということだけは何となく間違いないだろう、と。どっちかと言ったら使命感かもしれないですね。

岡田が経営するFC今治。惜しくもJFLの昇格を逃した

――とはいえ、FC今治のファン、サポーター、スポンサーを含め、今治から離れていくんじゃないかと心配する声もあるとは思うのですが。

岡田:事前に関係者の方、今治市長、スポンサーさんたちには事前に説明して、理解してもらっています。『逆にいいこと。ぜひ頑張れ』と。ですが、サポーターの人たちには(どこかで)きちっと説明しなきゃいけないとは思っています。決して今治をないがしろにするつもりはない。すべて今治が僕のなかでは一番にきて、その間にと言ったら失礼ですけど、何とか「月に2日」を確保して協会のためにお手伝いできればと思っています。

59歳でようやく気づいた「当たり前のこと」

――FC今治を経営する立場になったことで、違った角度から日本サッカーについて何か見えてくるものがあったのではないでしょうか?

岡田:(昨年の)ホーム開幕戦では初めてお客さまにありがとうって思いましたよ。一人一人に御礼が言いたいと。監督時代は強くて面白いサッカーをしていたら文句ないだろくらいのことを、もちろんそこまで極端じゃないですけどね(笑)。でも違うんだ、と。俺は単にサッカーのプレーをやってただけで、フットボールというものはお客さんを含めてみんなでつくるものなんだと。それを59歳にして初めて気づいたっていう情けない男なんですけけど。そういう当たり前のことを教えられてサッカーの仕事をやるのではちょっと違うかもしれませんね。

――社外取締役という言葉もありました。その立場でやっていきたいこととは?

岡田:いくつかの会社で社外取締役をやっていますけど、役割は会社を監視する、経営を監視するっていう役割だと思うんですよね。そういう意味では同じ社外取締役的な立場だとすると、サッカー協会というのはサッカーをやる人が集まって初めて、協会というものができた。ところが何か『お前らにスポーツをやらせてやっている』ような、ちょっと逆のイメージが(僕のなかには)あるんですよ。そうじゃなくてサッカーをやる人が多くいるから協会ができたんだ、と。その多くの人たちのために協会の運営方針や方向性を、ある程度チェックして、思うことを伝えていかなきゃいけないんじゃないかなって、そういう立場かなと思いますね

JFL昇格を逃してからは、スポンサーの前で頭を下げて回った

――協会はこうあってほしい、こうあるべきというのは?

岡田:この前、倉本聰さんの舞台の『屋根』を見てきたんですが、もの凄く印象的だったのは聰さんはずっと現実に対する怒りがあったんです。「こんなのおかしいだろう」と。主人公にこう言わせているんですよね。

『誰が悪いわけでもないんだ。時代の流れなんだ。これはしょうがないんだ』と。サッカー協会も流れのなかでいろんな形態をとってきたとは思うんです。でも最終的に気づいてほしいのは、やっぱりサッカー好き同士、みんながサッカーを愛して、そして一つの力になってほしい。そういう組織になってもらいたい。

――いろんな経験を踏まえてこのタイミングで協会の要職を務めるというのは、何か運命めいたものを感じないでもありません。

岡田:協会からの話は運命とかというよりもそれこそ本当に時代の流れなのかなって気はします。正直言いますけど、もう僕らの出番じゃないですよ。企業経営者もそうですけど、60代になってから二期四年、取締役をやって、ともかく自分の代のときだけは何とかってそういうふうになる。

例えば、40代のうちに代表取締役を任せて10年やらせてみる。思い切ったことをどんどんやっていく。そうしないとこの変化についていけないと思うんです。協会もそう。僕は本来、若い人がトップに立ってどんどん引っ張っていく、そういう協会になるべきだと思っている。若い人たちがやる道筋をつけるための役割なのかなって思ってますけどね。

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