先発2連勝の野口稔陽と3安打3盗塁の神谷塁が勝利に貢献(BC・石川ミリオンスターズ)
後期に入ってますます熱い戦いを繰り広げているBCリーグだが、中でも西地区(ADVANCE―West)の石川ミリオンスターズが絶好調だ。目下、6試合を5勝1分け、負けなしである。当然のことながら首位だ。
好調の要因は多々ある。6月25、26日の対福井ミラクルエレファンツ2連戦で活躍した長谷川潤投手、矢鋪翼投手、今村春輝選手を紹介したが、この2選手も“好調の要因”に該当する。
2戦目の26日に2勝目を挙げた野口稔陽投手と3安打3盗塁の神谷塁選手だ。
■野口稔陽投手が2勝目
立ち上がり、いきなり安打を許した。しかしサードに入った小林恵大選手の好守備、キャッチャー・喜多亮太選手の肩に助けられ、ノッていけた。
以降も再三にわたるバックの守りに感謝しながら、粘り強く投げ続けた。
五回までホームを踏むことは許さなかったが、六回だ。1つアウトを取ったあと4連打を浴びた。
しかしなんとか2失点で踏みとどまり、リードを保って後続にバトンを繋いだ。119球の熱投だった。
「体が重くて、あんまりスピードが出なかった。球数ももっと減らしたかった」。
勝ったものの、反省点が多かったようだ。湿度の高い夜で、汗の量も半端なかった。ただ、その中で自分のできることを懸命にやろうとしていた。
「ヒットが多かったし(10安打)、三振が取れなかった。打たれるのは覚悟して、取れないなりのピッチングで抑えていかないとと思って。早めに追い込もうとしたけど3-2、3-1のカウントが多くなってしまったので、なんとかストライクゾーンに集めることを考えた」。
五回まではなんとか無失点で踏ん張っただけに、六回の集中打を悔やむ。
「五回が終わって(グラウンド)整備が入ったとき、片田(敬太郎 フィジカルパフォーマンスコーチ)さんから『立ち上がりと思って、切り替えていけ』って言われたのに…」。
先頭をショートゴロに打ち取ったあとの4連打で2失点。
しかし「点を取られたあと、ギアチェンジができた」と、続く一死一、二塁のピンチで空振り三振、セカンドゴロに仕留められたことを前向きにとらえた。
■白星は最強の良薬
なによりゲームを作れたことは収穫だ。しかも勝ちもついた。
「前回(6月17日・対武蔵ヒートベアーズ戦)1つ勝ったことが、自信になっている」と、新境地を開いたことに武田勝監督も目を細める。
野口投手も「初勝利を挙げたことで、落ち着いて試合に臨めた。勝ててないときは、『勝たなきゃ、勝たなきゃ』と自分にプレッシャーをかけていた」と振り返る。
この日のように体が重く、調子がよくない中でもしっかりゲームメイクできたことで、さらに自信を深めた。
「いつも調子いいとは限らない。調子いいときはどんどんまっすぐで押していけばいいけど、そうじゃない日にどうするか」―。その答えが少し見えた。
今年、滋賀から石川に移籍してきてBC2年目だ。新天地での起用に充実感を漂わせる。
「去年は中継ぎしかやっていない。今年は先発をさせてもらって、2回負けても我慢して使ってもらっている。去年とは試合で使ってもらえる数が違う。登板数が多くなると、それだけ試合慣れもできる」。
昨年の5試合(5回)から、今年は先発6と中継ぎ2ですでに8試合(34・1/3回)に登板している。
■投げさせてもらえることに感謝
「ここはNPB(日本プロ野球機構)に行くためのリーグやと思っている。そのためにはもっともっとまっすぐの能力を上げていきたい」。
最速145キロの球速も、アベレージとともに上げていきたいという。
また、「追い込んでからのヒットが目立つ」と省みる。「決め球をしっかりボール球にして投げきれずに、まっすぐが内に入ったりスライダーが高めに浮いたり…。打たれるべくして打たれている」。
自己分析は完了しているのだ。
「ワインドアップもセットもクィックも、同じようにコントロールできるように」。さらに「体力作りも」と、課題は山積みである。
しかし活かしてもらえる場所を見つけた。なによりここで、思いきり腕を振ることを自身に課している。
感謝の気持ちを込めて―。
【野口稔陽*今季成績】
8試合 2勝2敗 34・1/3回 安打42 本塁打0 三振14 四球12 死球3 失点19 自責17 暴投1 ボーク0 失策1 防御率4.46
(数字は7月1日現在)
■盗塁はリーグダントツの神谷塁選手
神谷塁選手が自慢の足にスパートをかけ、盗塁の量産体制に入っている。
この試合でも1番に入り、初回から走った。ファーストストライクをセンター前に運ぶと、すかさず盗塁。
三回は無死一塁からセカンドゴロだったが、もちろん併殺にはならず残り、ここでも走った。
さらには六回も先頭で回ってきた。逆方向に安打を放ち、次打者の初球に二塁を陥れた。
これで盗塁数は31コ。もちろんリーグダントツだ。
全打席で転がし、3安打。打率も.361で、リーグ3位にランクインしている。とともに.440と高い出塁率も誇る。
常に意識しているのは「僕のパワーだったらフライを上げてもライナーは打てない。それならつまっても間に落とす、間を抜く」と低い弾道の、野手の間への強い打球だ。とにかく出塁することを第一に考える。
塁に出ればこっちのものだ。「バッターへの攻めが変わる。まっすぐや外が多くなるし、外もボールになりやすい。バッターへの意識が疎かになる」。打者も球種、コースが絞りやすくなる。
自身も「バッターとアイコンタクトで、なるべく早めに走りたい。走るまで待ってくれるんで、だからこそセーフにならないと」と打者に助けられている。お互いに「いい繋がりが生まれる」という。
盗塁は3S(スタート、スピード、スライディング)が必要といわれる。
その上で、神谷選手は「メンタルが重要」だと強調する。「勝負しよう!」「走っちゃえ!」という思いきりがないと盗塁はできないという。
毎試合、メンタルに鞭を入れてスタートを切っている。
「自分が守備にいるときに『嫌だな』と思うバッターになりたい」と言い、「信濃の安野(翔太)みたいな」と具体名を挙げる。
「背は160くらいでチョコチョコしてて、追い込まれたらノーステップでファウルで粘る。で、間をちょこんと抜かれる。すごく見習うところがある」と、うなずく。
■武田監督はバッティングのバリエーションを要望する
武田監督が求めるのも、「本人も言ってるように、ウリは足。だからやっぱり出塁。それがないと盗塁もできないので。足を見せるための、足を生かしたバッティングをしなきゃ。つまり内野安打とか、そういうのを増やしていかないと」ということだ。
「いろんなバッティングがあるというのを感じてもらいたい。セーフティでもいいし、まずは転がすってこと、あいつの課題は。フライを上げてちゃ、なんの意味もない。
きれいなヒットよりは汚いヒットがボディブローのように効く。四球もだし、そういう嫌がられるバッター、ランナーになってほしい。
足にスランプはないと言われる。それは盗塁での足ではなく、転がして一塁に駆け抜ける。そこはスランプなくできると思う」。
チームのためでもあるし、神谷選手のために武田監督はそううながす。
■暑い夏はおまかせあれ
これから気温がぐんぐん上昇する。屋外スポーツにはつらい季節だが、沖縄出身の神谷選手は涼しい顔だ。
「暑いのは嫌いじゃない。みんなが疲れて落ちてくるときに、ひとりだけピンピンして成績を上げられたら」と目論む。
そして「みんながきついときに、落ち込まないよう引っ張っていきたい」と表情を引き締める。
打線だけではない。リードオフマンとして、チームをも牽引していきたいと強く誓っている。
「ほんとに自分を売り出す最後の年」と武田監督もお尻を叩く。
今年こそは夢を掴む、その足で。
【神谷塁*今季成績】
42試合 打率.361 打数169 安打61 二塁打3 三塁打1 本塁打0 打点13 三振18 四球24 死球0 犠打7 犠飛0 盗塁31 失策8 併殺2 出塁率.440 長打率.391
(数字は7月1日現在)
(表記のない写真の撮影は筆者)
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