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BCリーグ初!野手として支配下でDeNAから指名を受けた滋賀ユナイテッド・山本祐大捕手

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
念願のドラフト指名に、ガッツポーズも力強い(撮影:筆者)

■2017年 プロ野球ドラフト会議

指名後はずっと笑顔(撮影:筆者)
指名後はずっと笑顔(撮影:筆者)

 その瞬間、あどけない顔いっぱいに笑みを弾けさせた。滋賀ユナイテッドBC山本祐大捕手が、10月26日のNPB(日本プロ野球機構)ドラフト会議において、横浜DeNAベイスターズから9位指名を受けた。

 午後5時から始まったドラフト会議を、山本選手はファンも含め関係者と一緒に大津市内のホテルにて、ネット中継で見ていた。「昨日は眠れなかったです…」と緊張の面持ちだ。

しょんぼり、そわそわから一転…(撮影:筆者)
しょんぼり、そわそわから一転…(撮影:筆者)

 1位から順番に指名されていく。上位指名でないことは、本人も予想はついていた。しかし、5位、6位…と下位にさしかかっても、なかなか名前が呼ばれない。

 NPBからの調査書は4球団から届いていたが、当該球団が徐々に指名を終了していく。だんだんとうつむき加減になり、その顔に不安がよぎりはじめた。

 「横浜がまだキャッチャーを指名していない。絶対にキャッチャーが必要だから、そろそろ指名くるよ」。そんな話をしていた矢先、その名が響き渡った。

 「横浜DeNA、山本祐大。滋賀ユナイテッドベースボールクラブ」。

 「ホッとしました…」。喜びとともに安堵感が広がった。支配下指名のしんがり、実に82番目のコールだった。

■“えんぴつ君”の将来性を見込んでくれた横浜DeNAベイスターズ

えんぴつから太マジックへ・・・?(撮影:筆者)
えんぴつから太マジックへ・・・?(撮影:筆者)

 横浜DeNAベイスターズ。滋賀に入団した当初からスカウトが何度も足を運び、もっとも熱心にみてくれていた球団だった。

 「日本シリーズ進出を決めて、泥臭く勝利に向けてチーム一丸となっている。そんなチームに入れることは光栄だし、早くその一員になりたい」。

 高揚した表情で、山本選手はこれから入団するであろうチームの印象を述べた。

肩の強さは一級品(撮影:筆者)
肩の強さは一級品(撮影:筆者)

 ベイスターズの小林晋哉スカウトによると、評価したポイントは「肩」だったという。「キャッチャーとしてはまだまだ未経験。でも肩の強さは一番の魅力だし、その素質がある。ウチも次の若いキャッチャーを考えとかないと」と次世代の捕手として期待している。

 ただし、「よっぽど本人が頑張らんとね。鍛えるのにどれだけついてこれるか」と厳しさを覚悟させる。

 なによりまず、体を大きくすることを課す。第一印象が「細いなぁ」で、その後、何度見にきても「相変わらず細いなぁ」で、とうとう小林スカウトがつけたアダ名が「えんぴつ君」だった。

 「新人合同自主トレまでにどれだけやってくるかな」。温かく厳しく見守っていく。

■使い続けてくれた上園監督

上園監督に感謝(撮影:筆者)
上園監督に感謝(撮影:筆者)

 会見で山本選手はまわりの幾人かの人のことを挙げた。まずは今季、指導してくれた前監督の上園啓史氏だ。

 「しっかり指導していただいた。褒められた記憶はないけど、スローイングにしても配球にしても、どのことに対しても細かく見て注意してくれた」と感謝の念は尽きない。

 実は上園氏とは自身が幼いころに出会っている。お父さんがコーチをしている野球チームに、阪神タイガースの投手だった上園氏が野球教室の指導に来てくれたのだ。そのときキャッチボールをしてもらい、「プロ野球選手とキャッチボールした!」という感動と興奮を胸に野球を続けてきた。

常に全力(撮影:筆者)
常に全力(撮影:筆者)

 上園氏も愛弟子のプロ指名に喜びを隠しきれない。「ボクは何もしてませんよ」と控えめだが、シーズン中はなんとかプロの目に留まるようにと一生懸命に売り込んでいた。

 「肩や守備、そういう要素で信頼を築けたらプロでもやっていける」と、スタメンで使い続けた。「ジャイアンツの小林のような、ああいうふうに成長してほしい」と願っている。

 また、体や技術だけでなく、「性格的に可愛がられる。気に入られようとするのではなく、自然に可愛がられてコミュニケーションがとれていた」と、その人柄も長所のひとつに挙げる。

駆けつけてくれた滋賀の先輩たち。山本選手が入るとわざとこんな顔(撮影:筆者)
駆けつけてくれた滋賀の先輩たち。山本選手が入るとわざとこんな顔(撮影:筆者)

 それを証明するかのように、会見場には滋賀の先輩たちが駆けつけた。自分のことのように指名を喜んでくれ、予定になかった胴上げまでしてくれた。会場には来なかったが、ツイッターなどで祝福の発信をしてくれた先輩も何人かいた。独立リーグの世界ではなかなか考えられないことだ。

 彼らにとってはまるで“末の弟”といった感じだ。「途中から入ったボクを温かく、チームに溶け込めるように話しかけてくれた」。この日もひさしぶりに“おにいちゃん”たちの強烈ないじりを受け、より一層、指名の喜びが増幅したようだ。

■東北楽天ゴールデンイーグルスの石原捕手は高校の同級生

楽天・石原選手。昨年のドラフト時(写真提供:山本祐大)
楽天・石原選手。昨年のドラフト時(写真提供:山本祐大)

 さらに山本選手が挙げた人物が、東北楽天ゴールデンイーグルス石原彪選手だ。京都翔英高時代、彼が主戦キャッチャーで山本選手はセンターにまわっていた。

 「ボクより肩も強いし、断然あっちのほうが上なんで」。かつてはそう話していた。昨年は石原選手が指名されたとき、隣にいて「うらやましいと思って見ていた」という立場だった。

石原選手とはよきライバル(撮影:筆者)
石原選手とはよきライバル(撮影:筆者)

 しかしここからは負けない。「プロに入って試合に出て結果出して、オレのほうが実力は上やと示したい」と、ライバル意識を隠さない。

 といっても変わらず仲はいい。指名直後も「おめでとう。これから2軍でも会うと思うから、頑張ろ」とのメッセージを送ってくれた。シーズン中もプロに入って学んだことなど、いろいろ伝えてくれていたのだ。まずはイースタン・リーグでしのぎを削ることになる。

■ふたりのお母さん

お母さんもひと安心だ(撮影:筆者)
お母さんもひと安心だ(撮影:筆者)

 最後に挙げたのが、ふたりのお母さんだ。自身のお母さんは、この日の昼ごはんにカツ丼を作ってくれたという。「『勝ってこいよ』という意味で。でも『勝つ』っておかしいなって思ったんですけど」と言って笑いを誘った。

 お母さんにはすぐ「選ばれたよ」とLINEを送ったところ、「おめでとう」の言葉に泣き顔の絵文字が添えられていた。

石原選手のお母さんが届けてくれた素盞嗚神社のお守り(撮影:筆者)
石原選手のお母さんが届けてくれた素盞嗚神社のお守り(撮影:筆者)

 さらにもうひとりのお母さん、石原選手のお母さんも「験担ぎに」と甲子園球場の隣にある素盞嗚神社まで出向いて、お守りを手に入れてきてくれたという。

 先日、そのお守りを受け取り、それを大切にポケットにしのばせて会見に臨んだ。

■多くの人の期待を背負って・・・

期待を受け止める!(撮影:筆者)
期待を受け止める!(撮影:筆者)

 指名直後から山本選手のスマホは休むヒマを与えてもらえなかった。「もうバグってました。LINEを開いたら数が多すぎて固まってしまって…」。しばらくして動きだしてから徐々に返事を返していった。

横浜DeNAベイスターズから9位指名(撮影:筆者)
横浜DeNAベイスターズから9位指名(撮影:筆者)

 多くの人を喜ばせたプロからの指名。しかしこれがゴールではないことは、自身が一番よくわかっている。「順位は関係ない。入ってからが勝負だから。1年目から出るぞという気持ちは忘れずにやりたい。すごい人たちばかりなので圧倒されず、逆に圧倒する気持ちで頑張りたい」と気合を入れ直している。

 さらには「全試合に出て3割残せるように。日本を代表するキャッチャーになりたい」と意気込む。

 キャッチャーとしては、NPBに入ってもこれまで大切にしてきた信念は変わらない。「ピッチャーとの信頼関係。そこは一番大事なので。これからも信頼関係を築いてやっていきたい」。

 19歳の“えんぴつ君”がどんな飛躍を見せてくれるのか。山本祐大選手のプロ野球人生の扉が今、開いた。

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西村憲投手が考案してくれたサイン(撮影:筆者)
西村憲投手が考案してくれたサイン(撮影:筆者)
フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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