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BCリーグ・北陸選抜チーム、阪神タイガース・ファームとの一戦で大きな収穫

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
阪神タイガース・ファーム戦で好投した西村憲投手(撮影:城 裕一郎)

■BCリーグ4チームで「北陸選抜」を結成

阪神鳴尾浜球場
阪神鳴尾浜球場

 独立リーグにとって、NPBのチームとの対戦は貴重な機会だ。ルートインBCリーグが公式戦として読売ジャイアンツ3軍との試合を組んでいることは以前紹介したが(参照記事⇒)、リーグ主導とは別にそれぞれの球団が独自にNPBのチームと練習試合をすることがある。

 7月19日はBCリーグ・ADVANCE-West(西地区)に所属する4チーム(富山GRNサンダーバーズ石川ミリオンスターズ福井ミラクルエレファンツ滋賀ユナイテッドBC)から選ばれた選手が「北陸選抜」としてチームを結成し、鳴尾浜球場に乗り込んで阪神タイガースのファームと試合を行った。

阪神タイガースの先発・島本浩也投手(撮影:城 裕一郎)
阪神タイガースの先発・島本浩也投手(撮影:城 裕一郎)

 前半戦と後半戦の狭間でオールスターブレイクを含めて8日間、ウエスタンリーグの公式戦がなかったタイガース。練習試合をしようと持ちかけたのはタイガース側だったと、ファームディレクターの宮脇則昭氏は明かす。

 「同じ練習試合をするなら選抜にしませんか、と。選りすぐりの高いレベルとしたいからね」。単独チームでなく各球団の精鋭を集めたチームを要望したという。

右から滋賀ユナイテッド・上園啓史監督、泉祐介選手、鈴木志廣投手
右から滋賀ユナイテッド・上園啓史監督、泉祐介選手、鈴木志廣投手

 また、「選抜だとBCの子も気合いが入るでしょ。みんな自分を見てほしいというのがあるだろうし。こちらもリーグトップクラスのいい素材を生で見ることができる」とも付け加えた。

 BCリーグの選手にとっては、目指しているNPBのレベルを肌で感じることができるし、タイガースや他球団のスカウトなどNPB関係者の前でアピールできることは願ってもないチャンスだ。

 もちろん、タイガースのファームにとっても試合勘を維持することができる。お互いにメリットのある練習試合である。

■掛布雅之監督vs上園啓史監督

掛布雅之ファーム監督と西村憲投手
掛布雅之ファーム監督と西村憲投手

 BC北陸選抜を率いるのは滋賀ユナイテッドの上園啓史監督阪神タイガース東北楽天ゴールデンイーグルス)だ。9人の投手がそれぞれ1イニングずつ投げ、野手もトップクラスの11選手が顔を揃えた。

 結果は3-3の引き分けだった。試合を終えたタイガースの掛布雅之ファーム監督は「今のプロと違って、独立リーグはハングリーな部分がある。どこかボクらの時代の匂いを感じるね。厳しいと思うけど、プロにいけるチャンスがあるわけだから、野球ができる環境に感謝して頑張ってほしいね」とエールを送った。

 どの選手も大きな収穫を手にし、球場をあとにした。それでは目立った選手をピックアップしよう。

■西村憲投手(滋賀ユナイテッドBC)

西村憲投手(撮影:城 裕一郎)
西村憲投手(撮影:城 裕一郎)

 まず、もと阪神タイガースの西村憲投手(滋賀)だ。開幕前の4月5日、同じく鳴尾浜球場での阪神戦に登板したが、そのときは右膝の具合がおもわしくなく、8失点した。

 開幕後、紆余曲折あったが、ここへきて状態が上がってきた。この日も西村投手本来のストレートに近い球が何球も見られ、板山キャンベル陽川の3選手をストレートで仕留めた。最速は144キロを計時した。

 三者凡退に斬ってマウンドから降りる姿に自信がみなぎっていた。いいときの西村投手だ。

 「ここ最近よくなっている。まっすぐで勝負できている」と西村投手も手応えを感じているようだ。そのわけは「フォームが自分の中でまとまりつつある」からだという。毎試合後、投球の連続写真を見てはチェックしてきた。その都度、反省点を見つけ、次の登板に生かしてきた。

 ストレートだけでなく、「どの球もいいイメージになってきている。配球の間違いさえなければ抑えられる」というところまできた。

西村憲投手(撮影:城 裕一郎)
西村憲投手(撮影:城 裕一郎)

 受けた山本祐大捕手(滋賀)も「ストレートが走っていました!いつも以上に球がきていて、陽川選手を(空振り)三振に取ったストレートは特によかったです!」と、ミットを響かせた力強い球に頷いた。

 「自分のやりたいことがいい方にきている。もっと理想のフォームにもっていきたい」。さらなる進化を予感させる西村投手の投球だった。

■山本祐大捕手(滋賀ユナイテッドBC)

山本祐大捕手(撮影:城 裕一郎)
山本祐大捕手(撮影:城 裕一郎)

 女房役・山本捕手にはタイガースも大いに注目していた。自慢の鬼肩を披露したいところだったが「盗塁阻止してこそのアピールだと思うので、それができなかったのは悔しいです」と、盗塁を許したことを悔やむ。投手との共同作業とはいえ、結果として見せられなかったのは心残りだ。

山本祐大捕手(撮影:城 裕一郎)
山本祐大捕手(撮影:城 裕一郎)

 しかし「選抜チームに入れて、同じキャッチャーの片山雄哉・福井)さんや中島健介・福井)さんのプレーを見て学ぶところもいっぱいありましたし、なにより普段は受けられない他のチームの投手の球を捕れたのは一番嬉しかったです」と収穫をたくさん手にした。

 また、自身が目指すNPBの選手たちとの圧倒的な違いも見せつけられた。体の大きさだ。「ボクは細すぎるので、もっとデカくしないと」。改めて指標が明確になった。

■ロレンゾ・アキメデス投手(滋賀ユナイテッドBC)

ロレンゾ・アキメデス投手(撮影:城 裕一郎)
ロレンゾ・アキメデス投手(撮影:城 裕一郎)

 同じく滋賀からは新助っ人のロレンゾ・アキメデス投手も登板した。来日してからの最速は153キロだったが、この日は中継ぎの1イニングということで、めいっぱい飛ばした。日本の柔らかいマウンドに苦慮しながらも155キロを叩き出した。

 「1イニングだったので、ほとんどまっすぐを投げた。振り遅れていたよね」と、まずまずの感触に頬が緩む。「10球で終われたしね。力強いまっすぐで押していくことができてよかった。いい印象を残せたと思う。こういうところでアピールしなきゃね!」とニヤリ。

 ジャパニーズドリームを掴むために、やるべきことはわかっている。

■保田拓見投手(滋賀ユナイテッドBC)

 さらに滋賀からはもうひとり、左の保田拓見投手が登板した。開幕前から「島本タイプ」と上園監督が期待してきたピッチャーだ。この日もタイガースの先発が島本浩也投手と聞き、上園監督からはお手本にするべくしっかり見ておくよう命じられていた。

保田拓見投手(撮影:城 裕一郎)
保田拓見投手(撮影:城 裕一郎)

 先頭にヒットは許したものの落ち着いて後続を断ち、得点を与えなかった。

 「こんな機会を与えてもらって、むちゃくちゃいい経験になった。選抜のレベル高い選手ともやれて刺激にもなったし、同じ左の竹林和範・富山)さんや藤原静也・福井)さんを見て勉強になった」と興奮気味だ。

 実際に生で見た島本投手の投球はどう映ったのか。「身長はあまり変わらないのに、体つきが全然違う。変化球のキレも体の使い方も違った。参考になることがたくさんあって、めちゃくちゃいい時間でした」。想像以上の実りがあったようだ。

保田拓見投手(撮影:城 裕一郎)
保田拓見投手(撮影:城 裕一郎)

 「とにかく体が大きくならないと話にならない。もっともっとトレーニングを頑張りたい」と話し、今後のピッチングについては「変化球で空振りやカウント取れたら、まっすぐが生きると思うんで」と変化球のキレや精度を上げるよう、これまで以上に努力するつもりだ。

■寺田光輝投手(石川ミリオンスターズ)

 石川からは寺田光輝投手寺岡寛治投手の「寺寺コンビ」も参戦した。昨年のドラフト前には数球団から注目を集めていた寺田投手だったが、まさかの指名漏れとなった。今年こそはと、より燃えている。

寺田光輝投手(撮影:城 裕一郎)
寺田光輝投手(撮影:城 裕一郎)

 「力まずに投げられたのがよかった。なにより気持ちを前面に出せたのがよかったですね」と充実感を漂わせる。

 持ち味を存分に発揮した。右のサイドから144キロのキレのいい球を繰り出す。時折、投球のタイミングを変えるなど、クレバーさも覗かせた。

 「バッターがタイミングをとりづらいようにというのは意識しています」。対戦した今成選手も面食らっていた。

寺田光輝投手(撮影:城 裕一郎)
寺田光輝投手(撮影:城 裕一郎)

 今年は北海道日本ハムファイターズで活躍した武田 勝氏が総合コーチとしてチームに帯同してくれていることが大きいという。武田コーチのアドバイスによって、球速も上がった。

 「股関節を大きく使って、脱力して最後にペッと投げられるように」。

 この「脱力」と「ペッ」というのがポイントだ。「力感のないフォームで、投げる瞬間だけペッと…。『オリャ〜ッ』っていうより、『ペッ』って“しっぺ”みたな感じ」と説明してくれる。なるほど、イメージしやすい。

 「自分がどれだけ通用するかっていうのが試せるし、負けたくないというのが湧いてくる。自分が目指しているレベルの選手と戦えて、いい刺激になった」と、タイガースとの対戦を振り返った。これを糧に、ドラフトまで研鑽を積む。

■寺岡寛治投手(石川ミリオンスターズ)

寺岡寛治投手(撮影:城 裕一郎)
寺岡寛治投手(撮影:城 裕一郎)

 寺岡投手も「スピード系の球種はアピールできました」と150キロを超える速球で魅せた。

 「普段は変化球との割合は5対5くらいですけど、今日はあえて9割くらい、まっすぐで勝負にいきました。どれだけプロに通用するかと思って」。この試合が持つ意味は十分にわかっている。腕試しだ。

寺岡寛治投手(撮影:城 裕一郎)
寺岡寛治投手(撮影:城 裕一郎)

 先頭の陽川選手には152キロのストレートを完璧にとらえられ、レフト奥のネットを揺らされた。「さすがプロだなと思いました」と敬服はしたが、「しっかり変化球を織り交ぜて緩急を使えばやれると思う」と自信は揺るがない。

 「こういう機会は本当に嬉しい。はるかにレベルが高い選手と対戦できて交流を深められるし、経験を積める」。この経験を必ず生かしていくことを誓っていた。

■森 亮太選手(福井ミラクルエレファンツ)

森 亮太選手(撮影:城 裕一郎)
森 亮太選手(撮影:城 裕一郎)

 野手では福井の森 亮太選手がアピールしまくった。いつもは不動の1番打者だが、この日は2番に入った。これが森選手にとって奏功したようだ。

 「意外と2番、いいなぁ。なんなら打ちやすいかも」。というのも、「2番だとネクストで相手の球種を見たりタイミングを合わせやすいから」だそうだ。

森 亮太選手(撮影:城 裕一郎)
森 亮太選手(撮影:城 裕一郎)

 この日もBC盗塁王(37コ・7月23日現在)である足も活かして、3安打と魅せた。

 「いつもこういう機会だと打てないんだけど。『緊張してもいいものは出せない』って逆に開き直った」のだという。そんな中で発見があった。

 「ピッチャーの球に早めにタイミングをとるようにしたんです。今までは足を上げたときにグラついてたんですけど、今日は早めに足を上げて、長くボールが見れたんです」。プロの球に対応しようと、自然にタイミングを早くとることができた。

 「明日以降もやってみよ!」と、大きな“お土産”に笑顔が弾けた。

 「すべてにおいて積極的にやっていきたい。盗塁もバッティングも。それで結果がついてくれば」。残りわずかとなった公式戦に全力で挑む。

■運命のドラフト会議は10月26日

 選ばれしメンバーそれぞれが、タイガース・ファームに真っ向からぶつかり、各球団のスカウト陣の前でアピールを繰り広げた。

 「いい選手が集まった。この中から一人でも二人でもドラフトにかかる選手が出てくれたら」。指揮を執った上園監督も祈る思いだ。

 果たしてどのような評価が下されるのか。答えは10月26日のドラフト会議で出る。

フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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