伊藤圭

週休3日、残業禁止、「作画完全外注」――漫画家・三田紀房が「ドラゴン桜2」で挑む働き方改革

2017/12/5(火) 9:47 配信

ビジネス、投資、就活、受験など、社会的なテーマを扱った作品を世に送り出してきた人気漫画家の三田紀房。漫画家になる前に実家である衣料品店の経営にも携わっていた三田は、自身の経験を生かして、面白くてためになる「ビジネス漫画」の新たな地平を開拓し続けてきた。

彼が現在手がけている最新作は、『ドラゴン桜2』。型破りな弁護士が、経営難の高校を立て直すために落ちこぼれの高校生を東大受験に挑戦させる『ドラゴン桜』の続編である。

取材した日は『週刊ヤングマガジン』連載「アルキメデスの大戦」制作の真っ最中だった。

前作は、実践的な受験勉強のノウハウが詰め込まれた本格派の受験漫画として評判を呼び、関連書籍も多数出版された上にドラマ化され、社会現象になるほどの大ヒットを記録した。何かと批判されがちだった「詰め込み教育」をあえて肯定するなど、作品に込められた逆説的で力強いメッセージは、多くの読者の心を動かした。

前作の連載終了から10年の歳月を経て、続編に挑むにあたって、三田は漫画家としての働き方も根本的に変えようとしている。これからは「絵を描かない漫画家」を目指すというのだ。果たしてその真意とは。(ライター・ラリー遠田/写真・伊藤圭/Yahoo!ニュース 特集編集部)

アシスタントは週休3日、残業は禁止

現在、三田のアシスタントが働くのは9時30分から18時30分まで。休憩は自由にとることができるが、残業は禁止されている。彼らは原則週4日勤務で、長期休暇を含めて年間約160日の休みが与えられている。「ちなみに、甲子園のシーズンも休み」と三田は笑う。

勤務時間が定められていることで、アシスタントは集中して業務を進められる上に、休日にはじっくりと自分の創作活動に打ち込むこともできる。漫画家といえば徹夜続きでハードワークというイメージだが、三田はひとつひとつその中にある習わしに疑問を持ち、職場環境を整え、業務の効率化を推進してきた。

「漫画家になりたてのころ、先輩から『仕事場ではお菓子を絶やすな』と言われていたんです。そういうものなのかなと思ってお菓子を置いていたら、アシスタントがそれを食べながらムダ話はするし、タバコは吸いに行くし、ダラダラと仕事をしていたんです。これは効率が悪いなと思って、お菓子を置くのをやめました」

「アルキメデスの大戦」の制作風景。静かなオフィスではラジオがかかっている

お菓子を置かないだけではない。みんなで食事をとることもほとんどなく、そもそも決まった休憩時間も設けられていない。そのぶん休日は多く、残業もない。

「お菓子を食べたり、みんなで食事をとったり、それで数分や数時間が経つ。少しの時間のようですが、毎日一緒に食事を1時間とっているとして、それが平日だけでも続いたら5時間にもなるわけです。だったらそういう時間を削ることで、残業がなくなって、休日が増えるほうがいいでしょう。うちでの仕事をしているとき以外は自分の創作活動に集中して、独立したい人はどんどん独立していってもらえたらと思うんです」

「作画の完全外注」という前代未聞のシステム構築

三田は働き方改革をさらに推し進める。今回の『ドラゴン桜2』では、漫画の絵を描く作業をすべてデザイン会社に外注してしまうという。背景だけでなく、人物もすべてだ。これは漫画界でも「初めての試み」だという。

デザイン会社への外注システムを構築するために、半年以上も着々と準備が進められてきた。外注スタッフには自分の絵の描き方を徹底的に教え込み、それを忠実に再現できるレベルまで引き上げた。

「僕はもう絵は描きません。シナリオを作って、構成をして、終わり。作画は全部おまかせする。手っ取り早く言えば、漫画界のアップルみたいなものですよ。アップルは設計だけ自前でやっていて、製造は海外の工場に任せているじゃないですか。それと同じことです」

三田がこのやり方を選んだ理由は、業務の効率化のためだ。作画という仕事を他人に任せることができれば、作家は取材や物語づくりなどの必要な作業に自分の労力を集中させることができる。また、作画のためのアシスタントを雇うことで発生する労務管理なども必要がなくなる。

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