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伊藤圭

「普通の感覚を取り戻せる」“双子のイケメン俳優”が今、本気で副業をする理由

2017/11/03(金) 10:31 配信

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『キッズ・ウォー』や『タッチ』などで双子の役を演じてきた斉藤祥太、慶太の双子の兄弟。今年デビュー17年を迎える。実は今、2人の意外な取り組みが話題になっている。それは「副業」だ。その職種も多岐にわたる。配管工に解体業、バイクレースチームの助監督やジムのインストラクターまで。2人は副業について「ガチで取り組んでいる」と口をそろえる。なぜ2人は副業に精を出すのか。その背景には2人を襲った「役者としての転機」があった。(ライター・大矢幸世/Yahoo!ニュース 特集編集部)

(撮影:伊藤圭)

“双子のイケメン俳優”として注目を集め始めた10代

兄・斉藤祥太、弟・斉藤慶太。2人はこの11月で32歳になる。今でこそ、双子の男性俳優といえば名前が思い浮かぶが、その名を広く知られることとなった『キッズ・ウォー』(CBC制作・TBS系)シリーズで最初に登場したのは、兄・祥太のみだった。当時中学3年生。

素人ながら、小さな頃からテレビ番組などに出演していたという2人。中学進学を前に「ちゃんとテレビに出てみたい」と複数の事務所に履歴書を出し、「いちばん早く返事をくれたところ」へ所属が決まった。

(撮影:伊藤圭)

けれども最初の2年ほどは、「オーディションに落ちまくっていた」という。雑誌や広告のモデルなどを細々とこなしていたさなか、『キッズ・ウォー』はまず祥太が掴んだチャンスだった。

「僕はバドミントン部の部長だったんで、忙しかったんですよ。祥太は野球部に入ったんですけど、『坊主になるのイヤだ』って、結局こっちに入ってきて。で、僕は部長として大会に出なきゃいけなかったので、祥太だけ『キッズ・ウォー』のオーディション受けたんです」(慶太)

(撮影:伊藤圭)

井上真央演じるヒロイン・今井茜の相手役、紺野翼としてシリーズ第2作から出演し、翌年放送の第3作では茜と翼の物語がドラマの中心となった。

2人同じ高校に進学すると、慶太も『キッズ・ウォー』第4作から翼の弟、新田一也役を演じることに。その後は、『ホットマン1・2』(TBS系)、映画『タッチ』など2人そろって双子を演じる機会も増え、ともに『王様のブランチ』(TBS系)レポーターに抜擢。そして祥太は『3年B組金八先生 第6シリーズ』(TBS系)、慶太は『WATER BOYS2』(フジテレビ系)にそれぞれ出演するなど、多忙な日々を送ることとなる。

順風満帆な芸能生活を送ってきた彼らだったが、2009年前後を境に、潮目が変わりはじめる。役者としての仕事が減り始めたのだ。

「何クールも連続でドラマをやってましたから、やっぱりわかりますよね。仕事減ってきたな、って。でも、芸能界はこういうもんだからって、あまり焦らないようにしてました」(慶太)

「ヘコんでも仕方ないですからね。『じゃあここからどうするか』って考えるしかない」(祥太)

(撮影:伊藤圭)

2人が始めたのが「副業」だった。その仕事も多岐にわたる。家の解体や配管工、果てはバイクレースチームの助監督やジムのインストラクターまで精力的に取り組んだ。

きっかけは、地元・横浜の幼馴染みからの誘いだった。「実家が解体屋やってるやつがいて、やってみないかって声かけてもらったんです」(祥太)

(撮影:伊藤圭)

「見よう見まねで、ユンボ(パワーショベル)やトラックに乗って、解体資材を運んだり、バールで家を壊したり……。壁を叩いて、『ここに垂木(たるき)が入ってるから、その奥はボードだな』とかわかるようになって。家の壊し方は会得しましたね」(慶太)

(撮影:伊藤圭)

解体屋を辞めた後は、配管工事へシフト。ガス管や水道管を手がけるようになった祥太は、「スコップで穴掘るなら、芸能界でいちばん速い自信ありますよ」と笑う。報酬は日払い。役者仕事を優先させてもらえるのも、ありがたかったという。今でも祥太は、前後にドラマの仕事が入っていない時期には、配管工事の現場に入ることもあるそうだ。

(提供:44ぷろだくしょん)

「現場ではガチでやってますから。今は外国人の方も結構多くて、インド、ボリビア、ベトナム……。僕らが俳優なんて知らないだろうけど、日本語勉強して、成長してる姿を見ると、負けてられないな、って思います」(祥太)

一方、「ガテン系の仕事は、30歳でやめると決めていた」という慶太は、ジムインストラクターという新たな道を見つけていた。骨盤まわりの筋肉をほぐし、鍛えることで歪みを直す「ペルビックストレッチ」を習得。インストラクターの資格を取り、ジムで週に一度レッスンを行っている。

「右手首を骨折した影響で左右のバランスが崩れて、手が細くなってしまったんですよ。それで身体のことを学び始めたときに、運よく先生からいろいろと学べる機会があって。それでインストラクターの資格を取ったんです。人前に立って教えるって、ちょっと緊張するんですよ。自分が講師として、わかりやすく説明しながら、その人たちの身体をほぐさなきゃいけない。ちょっと舞台みたいなライブ感はあります」(慶太)

(提供:44ぷろだくしょん)

他にも、祥太はバイクの趣味が高じて、5年前から「Team HOOTERS with 斉藤祥太」の助監督として鈴鹿8時間耐久ロードレースに参加。慶太は愛玩動物飼養管理士の資格を取る一方、真剣にサーフィンに取り組むなど、それぞれの関心の赴くまま、俳優以外の活動を活発化させている。

(提供:44ぷろだくしょん)

「俳優と呼んでもらえるうちは続けたい」「やるからにはもう一旗揚げたい」2人の今後の仕事観

2人にとって、副業は「普通の感覚を取り戻せる場所だった」と祥太は語る。

「芸能界って、みんなスッとスイッチが入っているみたいで、夜でも『おはようございまーす』って挨拶して……なんか不自然だなって。僕らはあんまり、『芸能人』って意識がないんです。ガテン系の現場いくともうスイッチ入れずにこのまま。現場で警備のおっちゃんの動き観察して、鈴鹿でも助監督をやって、たまには配管工事の現場入ったり、地元の友達に会ったりすると、普通の感覚を取り戻せる。基本、『自分は役者だ』っていう意識は常に頭にあります。だから役者以外の仕事によって、役者としての幅を広げられたら、と思ってるんです」と祥太。

(撮影:伊藤圭)

一方、慶太は少し違う考えだ。「芸能界って波のある世界だから、一生忙しい人なんて、ほとんどいない。僕は自由に、気の向くまま生きたいな、と。俳優として呼んでいただけるうちはずっと続けていきたいし、なかったらなかったで、それ以外でがんばっていく。人生楽しみたいタイプだから、自分に無理はしたくない。現状維持で」と笑顔で語る。

(撮影:伊藤圭)

するとかぶせるように、祥太が口を挟む。 「いや、俺はもっとポジティブに役者やっていきたいから。やるからには、もう一旗揚げたい。気の向くままだと、そこまで行けないじゃん。そんな甘くないですよ、役者たるもの……」

方向性の不一致か?と思えば、「いやいや、全然!」と2人、声がそろう。

とはいえ、まだ先を案じるほどではない。この秋にはイギリスのブックメーカー「bwin」のキャンペーンに抜擢され、2人がカーチェイスを繰り広げるCMがUEFAチャンピオンズリーグの開幕戦をはじめ、ヨーロッパ全土で放映された。

生まれた日も、性別も、小学・中学・高校も、大学を中退するタイミングも同じ。ともに俳優という職業を選び、今でも横浜の実家に2人とも住んでいる。

(撮影:伊藤圭)

「そんな四六時中一緒にいるわけじゃないし、もう、空気みたいなもんです」(祥太)
「そうそう。でも、そろそろ家を出ようかなと思っていて。一人暮らし? どうでしょうね、やっぱり子どもが好きだし、そろそろ結婚しようと思っていて」(慶太)

物心ついた頃から一緒にいれば、「相手と別の道を行こう」と思うことすら、お互いを意識することの裏返しだ。これまでも、やりたいことに正直に従った結果、たまたま2人の道が重なったということに過ぎない。

「どんなことをやっても、無駄にならないんですよ、役者って」(慶太)。好奇心さえも貪欲に糧にして、2人はこれからも役者を、そして「副業」を続けていく。

(撮影:伊藤圭)


斉藤祥太(さいとう・しょうた)
1985年11月18日生まれ。一卵性双生児の兄。神奈川県横浜市緑区出身。テレビドラマ『キッズ・ウォー2』で俳優デビュー。その後、「3年B組金八先生」「ホットマン」などに出演。現在は「Team HOOTERS with 斉藤祥太」の助監督を務める。44ぷろだくしょん所属。「YOSHIとゆかいな仲間達」レギュラー出演中。

斉藤慶太(さいとう・けいた)
1985年11月18日生まれ。一卵性双生児の弟。神奈川県横浜市緑区出身。山形県金山町観光大使を務める。テレビドラマ『キッズ・ウォー4』で俳優デビュー。その後、「ホットマン」「WATER BOYS2」などに出演。ペルビックストレッチのインストラクター資格をもつ。44ぷろだくしょん所属。「YOSHIとゆかいな仲間達」レギュラー出演中。

編集協力:プレスラボ

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