ドラマ『人にやさしく』(2002年、フジテレビ系)で香取慎吾、松岡充、加藤浩次らと共演し、子役として注目を集めた須賀健太は、いま22歳になった。1999年に4歳でデビューしてから18年。映画やドラマ出演のほか、漫画を原作にした「2.5次元」の舞台で座長を務めるなど、活躍の幅は広がりをみせる。
子役は高校生になると仕事が少なくなるという。須賀も実際、高校時代には仕事が減った。その時期を乗り越えるきっかけになったのは、舞台の仕事だったという。(取材・文=西森路代/Yahoo!ニュース 特集編集部)
「須賀くん、まったくすれてないよね」
特撮に出演する同じ年頃の子役を見て、「自分も出てみたい」と飛び込んだ芸能界。「大人がみんなでひとつのものをつくっていく様子に、ワクワクした」と当時を振り返る。
「いじめられはしなかったけど、やっぱり芸能界にいることで周りから多少いじられることはありました。でも、気にしていませんでしたね。自分に自信があったので」
そう語る須賀は実際、役者として素直に、まっすぐに成長してきた。
須賀がこの夏主演する映画『獣道』は、地方社会のリアルを描いたギラギラした青春映画だ。宗教、ネグレクト、少年犯罪、性産業など大人に翻弄される地方都市の若者たちを、実話をベースにリアルに描いた。この映画の監督で『下衆の愛』などでも知られる内田英治は、パンフレットの中で「子役出身には偏見があった」が「須賀くんまったくすれてないよね」と語っている。
「けっこう言われますね。子役のときに加藤浩次さんとご一緒したことがあって、この前『スッキリ!!』(日本テレビ系)に出たときにも『すれなくてよかったね』と言われて(笑)。やっぱり親がしっかり育ててくれたというのは感じています。仕事で忙しくても、できるだけ欠席にならないように、少しの時間でも学校に行けるようスケジュールを組んでくれていました。そういうことに今になって感謝していますし、小さい頃から積み重ねたことが武器になるのかなと思いながら、探り探りやっているところです」
しかし、人には反抗したい時期もあるはず。須賀がそんな時期を迎えなかったのは、子役ならではの“ある経験”と関係しているようだ。
子役がぶち当たる壁、救った舞台の仕事
「子役にはよくある話なんですけど、高校に入ると仕事が少なくなるんですよ。役者としての使われ方が変わる、難しい時期なんでしょうね。僕も実際に経験して、高校時代は仕事が減ってしまったんです」
その時期に彼を救ったのは舞台の仕事だったという。
「舞台の魅力を知ったきっかけは、以前、共演したご縁で森田剛さんが主演の舞台、劇団☆新感線の『IZO』を観に行ったことです。その舞台を観て、役者というものが色濃く見えているなと思ったら、すごくやりたくなったんです」
その後、須賀は“いのうえシェイクスピア”『鉈切り丸』という舞台で、森田と再共演を果たしている。また、2015年から現在まで、漫画原作の舞台、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』で主演も務めている。同作は漫画を舞台化した“2.5次元ミュージカル”というジャンルで、原作も舞台も高い人気を誇る。
「漫画は漫画の世界で楽しむものというイメージしかなくて、2.5次元という世界があることは知らなかったんです。でも2.5次元の舞台に立って演じてみると、もはやカテゴライズやジャンル分けも必要ないのかなと思うようになりましたし、いい意味で、2.5次元に出るイメージがなかった僕が出たら、ちょっとジャンル全体のイメージも変わるんじゃないかと思っています」
『ハイキュー!!』で須賀と共演している若い俳優たちに座長としての須賀について話を聞くと、「経験豊かなで大きな背中」という評判を聞く。しかし、当の須賀はいたって冷静だ。
「『ハイキュー!!』が座長としては初めてだったんですけど、周りが座長にしてくれた部分はあったのかなと思います。必要とされるからこそ、座長として立つという部分がありました。舞台をやっていると、みんな職人気質みたいなところが芽生えてくるんです。だから、幕が開いた瞬間に、自然とみんなが同じ方向を向いていたなと思います」
高校時代に仕事が減ったことで、向き合った舞台の仕事。それがいまの活躍の広がりにつながっている。
「この時期があったからこそ自分を見直すことができて、僕は本当にこの仕事が好きなんだなと実感できたんです。そこからはがむしゃらになって、どんな役でもやりたいという貪欲さが出てきたと思いますね」
舞台も映像も、どちらもできる役者に
現在では、舞台と映像の仕事が重なることもある。そんなとき、俳優としての切り替えはどうしているのだろうか。
「まず、生活のサイクルが違いますね。映画は朝から晩まで撮影だけど、舞台は本番を迎えると公演の2時間に照準をあてて一日が決まるんです。稽古中に映像の仕事が重なると、僕だけ舞台の稽古の復習をしないといけなかったり、共演者の方々にも迷惑をかけてしまったりするので大変ですけど、最終的にはどちらもできる人になっていきたいと思っています」
いま必要なのは“芝居に見えない芝居”
舞台と映画の両方を行き来する中で、今回、映画『獣道』に出演してみて、あらためて須賀が思ったのは、演技において「リアルとは何か」ということだったという。
「撮り方もドキュメンタリーに近いし、地方に住んでいるエキストラの方の演技が全然芝居っぽくないんです。たたずまいや雰囲気が違うんですよね。それはすごく勉強になりました。僕もここまでいかないといけないんだという悔しさも感じて。普段の僕は、伝えようとする芝居をしてしまいがちなんですけど、“芝居に見えない芝居”というものができるようになりたいと思いました」
子役のころから演技をしてきた須賀が、今、自分に必要だと思っていることは何なのだろうか。
「技術ですかね。同世代の役者の幅が広がってきて、いろんな役ができる人が増えてきていると思います。どんな役にもハマれるような人間になりたいと思いますが、そのためには誰が見ても伝わる芝居ができて、同時に、芝居に見えないような芝居もできないといけない。その両方の引き出しが必要だと思います。芝居に見えない芝居については、これからも成長させないといけない部分だと思いますね。この仕事を始めてからもう18年ですけど、そんなふうに芝居について考えられるというのは、まだまだ芝居を好きな証拠だなと。その気持ちを大事にしていきたいです」
編集協力:プレスラボ