石川駿人

舞台の新ジャンル「2.5次元」の風雲児、鈴木拡樹の本懐

2016/10/7(金) 12:09 配信

ここ数年、“2.5次元”という言葉を耳にする機会がある人は多いのではないだろうか。

ミュージカル『テニスの王子様』で人気に火が付き、その後は舞台『弱虫ペダル』やハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』、『ダイヤのA』TheLIVEといった、漫画やゲームなどのいわゆる“2次元”作品を原作としたミュージカルや舞台作品が続々と製作されてきた。それらの総称が、「2.5次元ミュージカル/舞台」だ。

現在、年間約132万人(2015年ぴあ調べ)もの来場者がいると言われており、作品数、規模ともに拡大し続けている注目の市場なのである。

たとえば斎藤工や城田優、瀬戸康史といった人気俳優たちも、2.5次元ミュージカルの『テニスの王子様』に出演してきた。今ではテレビドラマなど映像の世界でも活躍していることは、ご存じの方が多いだろう。

ほかにも、帝国劇場のミュージカルや小劇場の演劇作品にも出演するなど、2.5次元出身の俳優たちが業界全体の活性化にも貢献し始めているのが現状だ。

こうした2.5次元の躍進は、あらゆるランキングやコンテンツからも見えてくる。

人気ゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』を原作とする舞台『刀剣乱舞』のBlu-ray「舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺」は、9月19日付オリコン週間Blu-rayランキングで総合1位を獲得したほか、2.5次元舞台でいま最もチケットが取れないと言われる『弱虫ペダル』は、舞台のキャストを続投し、スカパー! でオリジナルドラマ化されている。

(C)舞台『刀剣乱舞』製作委員会

この舞台『刀剣乱舞』で座長を務め、舞台『弱虫ペダル』に荒北靖友役で出演し、いま特に注目の俳優といっても過言ではないのが、鈴木拡樹だ。

“2.5次元”という新たな分野で、彼はなぜここまで注目される存在になったのか、その姿勢や背景、仕事論に迫る。(取材・文 西森路代/Yahoo!ニュース編集部)

撮影:石川駿人

(C)舞台『刀剣乱舞』製作委員会

「観においでよ、面白いから」恩師の一言で飛び込んだ世界

2014年は年間10本。2015年は年間9本の舞台に出演し、2016年は年間10本の舞台に出演予定となっている鈴木拡樹が舞台の魅力を知ったのは、専門学校に通っていたとき。芸能関係の学校に通いながらも、自らが進む道に迷い、そもそも演技をするということにも特別な興味は持っていなかった。

「その頃の僕といえば、芝居に対する漠然とした興味はありましたが、“演じたい”という気持ちはそれほど強くありませんでした。そんな僕にある先生が『観においでよ、面白いから』と、とある舞台を勧められて、何気なく足を運んだんです。そこで初めてドラマとは違う生の迫力に引き込まれ、本気で役者になろうと思い始めました」

専門学校を卒業するとすぐに芸能界入り。初仕事は、漫画を原作する実写ドラマ『風魔の小次郎』と同名の舞台だった。つまり、彼はデビューからすでに2.5次元の世界にいたのだ。

「ドラマを先に撮影して、その後に同じキャストで舞台に立つということを経験しました。僕と同じような新人俳優もいれば、ベテランの先輩方もいて、いろいろことが学べたし、俳優としての自身の課題も見つかりました。僕のテーマは『日々前進』。一歩一歩、着実に前へ進むことをモットーとしています。決して、二歩じゃダメ。一歩をきちんと確認しないと、吸収しきれないんです。そういう考え方をしてきたのは良かったと思っています」

一見マイペースに進んでいるように見える鈴木。だが、演劇やミュージカルの世界は流行の変遷が非常に早い。「つぶやくようなセリフを魅力とする芝居が流行ったり、物腰の柔らかいテイストが流行ったりする」と鈴木は分析する。目まぐるしく変わるトレンドを、実際のところ彼はどう捉えてきたのだろうか。

「その流行が必ずしも常に自分に合うものとは限りません。自分にオファーがくる役柄もそうです。悪役のオファーが続くときもあれば、良い人役が固まったときもありました。自分に合うか合わないかは置いておいて、その流れを把握していくことは大事にしてきました」

撮影:石川駿人

このところ鈴木にくる出演オファーは、舞台『刀剣乱舞』や『あずみ〜戦国編』など、殺陣が見どころの作品が多い。彼は現在31歳。彼自身も「30代を過ぎて、なぜか激しい動きをする舞台が増えた」と笑いながら語る。それは肉体的にも厳しいことでもあるだろう。

「殺陣があるということは、“命のやりとり”をするということ。殺陣のような激しい演技をすることは増えてきていますが、大事な演技を自分の体力ひとつの問題できちんと描けなくなるということはないよう、日々トレーニングは欠かさないようにしています。もちろん僕が今後役者としてどうしていきたいかなど考えることはありますが、オファーをいただいている間は、自分で年齢のことを考えないようにしています。そういったことは、周りに決めていただくことなので」

「2.5次元の世界はいずれ、日本の宝になる」

「舞台での立ち位置が変わっても、ずっと関わっていきたい」と鈴木は語る。そもそも2.5次元舞台には40代、50代の俳優も出演しており、決して若手俳優だけで構成できる内容の物語ばかりではない。だからこそ既に俳優として活躍する人々にも、この分野に興味を持ってもらい、現場にいる若手たちを牽引してほしいとも語る。

「2.5次元ミュージカル/舞台」というのは、まだまだこれから開拓していく魅力があるものだと感じています。僕がこれまで吸収してきたものを次の世代にバトンとしてきっちりと渡して、この世界には発展し続けていってほしい。アニメは海外でも人気ですし、それらが原作の舞台ということで注目してもらいやすいでしょうから、今後発展し続けていけば、きっと日本の宝になる分野だと考えています。だからこそ、多くの役者の方々に興味を持っていただき、この世界を共に盛り上げていけたらと思うんです」

撮影:石川駿人

2.5次元ミュージカル/舞台は、まず原作に興味をもち、観劇する来場者が多い。しかしそこからひとりひとりの俳優に注目するようになり、足繁く通うようになる人も多い。だからこそ俳優たちは、まず“見てもらえる”大きなチャンスの場なのだ。

「最近は2.5次元ミュージカル/舞台で演じることに憧れて入ってきてくれる新人俳優も増えてきているんです。それは、ひとつのジャンルとして認められ始めたということ。もちろん、まだまだ開拓の余地もあると思います。新しいジャンルをどう誇らしいものにしていくかというのは大事だし、それは僕一人ではできないことだと思うからこそ、先輩や後輩たちと同じ舞台に立ち、考え、進んでいけたらと思うんです」

最後に、鈴木が“2.5次元”の世界で活躍する立場になった理由を聞いてみた。

「先輩が出演されるときも、後輩が出演するときも、『勉強しよう』と思って観ることはしないようにしています。僕が演じることの魅力を知った舞台は、先生から『面白いから』の一言で観に行きました。その初心を忘れないようにしたいのです。どんな舞台を観るときも、楽しんで観たい。『勉強しよう』という姿勢で観劇しないだけであって、観たあとは学び、しっかりと考えます。ここまでやってこられたのは、もちろん皆様のおかげですが、自分自身でも常に考え続けた結果でもあると思っているんです」

撮影:石川駿人

鈴木拡樹

(すずき・ひろき)
1985年6月4日生まれ。大阪府出身。オウサム所属。
2007年、ドラマ「風魔の小次郎」(TOKYO MXほか)でデビュー。2008年には「最遊記歌劇伝」で主演の玄奘三蔵を務める。以降、「仮面ライダーディケイド」(EX)、「戦国鍋TV」(TVK 他)、舞台「弱虫ペダル」、舞台「刀剣乱舞」燃ゆる本能寺、舞台「幻の城~戦国の美しき狂気~」、舞台「ノラガミ-神と願い-」、舞台「Sin of Sleeping Snow」などに出演。

編集協力:プレスラボ

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