殿村誠士
相手の夢を叶えたら、自分の夢も叶う――EXILEファミリーの「中間管理職」、三代目 J SOUL BROTHERS的「限界の超え方」
2020/03/18(水) 08:30 配信
オリジナル三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEは、昨年のツアーでは125万人を動員するなど、その勢いはとどまるところを知らない。結成から10年、ソロ活動も輝きを増す彼らが、夢を叶えるためにしている「働き方改革」とは。(取材・文:西森路代/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース 特集編集部)
ターニングポイントは『R.Y.U.S.E.I.』
2010年9月27日、愛知・豊田スタジアム。約3万5000人の大観衆の中で、三代目 J SOUL BROTHERSは産声をあげた。リーダーの小林直己(35)は、当時をこう振り返る。
「結成したその日に、スタジアムでメンバーのお披露目。さらにドームツアーを成功させる目標まで既に立てていました。そんなグループってなかなかないですよね」(小林)
EXILEのリーダー・HIROが自らのDNAを授けることを認めた7人。それが三代目だった。結成から5年で、念願のドームツアーも成功させる。
小林と共にリーダーを務めるNAOTO(36)が、ターニングポイントとして挙げるのは『R.Y.U.S.E.I.』。オリコン週間シングルランキングで初登場1位を獲得し、「NHK紅白歌合戦」でも歌われた、2014年の大ヒット曲だ。
「あの曲でたくさんの人たちに知ってもらえたし、自分たちを新しいステージに連れていくことができた。こんな曲に出会えることって、狙ってもなかなかないこと。『R.Y.U.S.E.I.』は宝ですね」(NAOTO)
その後も勢いを増し続け、2019年のドームツアー『RAISE THE FLAG』では、125万人の動員数を記録。グループ結成から10周年の節目を前に、集大成のような一年になった。
「ライブが一番の居場所ですし、武器でもある。去年から『Rat-tat-tat』というみんなでダンスをして楽しむ曲もやっていて。お客さんの反応を見て、『もう一段階盛り上がれるものはないか』を考えて生まれたんです」(今市隆二)
現在、所属事務所LDHが通年で開催するイベントシリーズ『LDH PERFECT YEAR 2020』も開催されている。
「PERFECT YEARも10周年も大事なんですけど、それまでの一年一年もとても大切だなと思うことはありますね。もう毎年PERFECT YEARくらいの気分でやっていますね(笑)」(登坂広臣)
肉体の限界を、俳優なら超えられるかもしれない
グループとしての成功を足がかりに、メンバーのソロ活動の機会も増えてきた。特に象徴的なのは俳優活動だ。まずお茶の間に浸透したのは、岩田剛典(31)。2014年には、ドラマ『ディア・シスター』(フジテレビ系)などに出演した。
「最初は、自分の目の前のタスクに必死すぎて、いろんな人の思いや努力があって自分の存在意義があるということすらわからなくて。おサルさん状態でしたね」(岩田)
現在では、作品に関わる人たちのことも、自分の立ち位置も見えるようになった。演技の幅も広がり、今年1月公開の映画『AI崩壊』では、冷酷なエリート官僚役を演じた。
「『人気があるから主演をしてください』って言われるよりも、『この役だからやってほしい』と言われて演じる助演のほうが俳優として求められている気がするんですよ。コツコツとやってきたことで、役柄を問わず呼んでもらえるようになったのかなと思えてうれしいんですよね」(岩田)
今市(33)は昨年、短編映画『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』で初めて演技に挑戦し、山下健二郎(34)はドラマ『八王子ゾンビーズ』、登坂(33)は映画『雪の華』に主演。NAOTOはドラマ『ブスの瞳に恋してる2019』(フジテレビ系)に主演し、ELLY(32)も映画『HiGH&LOW』シリーズに出演した。
また小林は、2019年にNetflixで公開された『アースクエイクバード』で、オスカー女優のアリシア・ヴィキャンデルやライリー・キーオらを惑わす役どころで強い印象を残している。そこには、小林の「誰かの心に強く残りたい」という思いがあったという。
「ダンサーには、年齢によって超えられない肉体のピークがある。でも、俳優ならそれを超えられると思ったんです。様々なことに挑戦することで、『これが三代目でありEXILEであり、LDHのメンバーの姿なんですよ』ってことを示せると思ったんです。LDHのスタイルとして、何かを作り上げるためにゼロから1を生み出して、待っている人の手元に届くまでを個々で考えることがあると思うんです。メンバーそれぞれがその過程を経験したことが、今の三代目に還元されていると思うんですよね」(小林)
その小林の努力をメンバーは見てきた。
「(小林)直己さんは、時間が空いたら海外に行って英語の勉強をしていました。そうやってきたことが実を結び、活動の幅を広げていくメンバーが頼もしく見えるし心強い。こんなメンバーに囲まれて活動できるのは幸せだなっていつも思いますね」(山下)
失敗しても怖くないんだよ、って伝えたい
三代目のメンバーには、この10年で、「Jr.EXILE」と呼ばれるたくさんの後輩ができた。そんな後輩世代を先導する立場にもなっている。
「先輩たちに美学や信念や思いを学ばせてもらって、自分も本当の意味でのEXILE TRIBEの一員にしてもらいました。それは繋げていかなきゃいけないなって常々思っています。でも、ただ同じことを伝え続けるんじゃなくて、そのときにフィットしたメッセージを、自分たちの活動の中からみんなに感じ取ってもらえたらいい。そのためにも、後輩たちに恥じぬように活動していきたいと思います」(NAOTO)
パフォーマーでありながら、マイクを持ちラップをする挑戦を始めたのはELLYだ。
「ラップに関しては俺が突破口ですね。何か新しいことを始めることで、EXILEの文化を広げられている気がする。BALLISTIK BOYZが全員でマイクを持ってパフォーマンスをしたり、THE RAMPAGEにもマイクを持つメンバーがいたりするのは、俺がラップやソロツアーをやったおかげって言ってくれた人がいて。一歩目を踏み出すことを怖がる人は多いから、失敗しても怖くないんだよってことを伝えていきたいんですよね」(ELLY)
先述の『アースクエイクバード』で、ハリウッドでのオーディションやエージェント探しを自ら行った小林は、LDH内でクリエイティブキャリアアドバイザーとして、その経験からアドバイスしている。
「今年の僕のテーマは『働き方改革』なんですよ。セルフプロデュースをするとき、『こういう手順を踏むことで、みんなの夢が叶うんだよ』と伝える立場になりました。僕がLDHで学んだのは、『相手の夢を叶えたら、自分の夢も叶う』ということ。それを夢物語で終わらせないように、かみ砕いて後輩たちに伝えているところです」(小林)
気張らなくても、肩肘張らなくてもよくなった
一方で、「肩の力も抜けてきた」と語るメンバーも多い。象徴的なのは山下。YouTubeで「山下健二郎の釣りベース」という番組を配信し、朝の情報番組『ZIP!』(日本テレビ系)で曜日パーソナリティーを務める。
「ここ2、3年で、いい意味でやりたいことが明確になって、精査して100%の力を注げました。自分が納得した仕事に全力を注ぐほうが、やりたいことを実現する近道かなって思えたんです」(山下)
「10周年が近づくにつれて、いい意味で肩の荷も下りてきました。でも、2回目の点火っていう雰囲気もあるので、PERFECT YEARもすごくワクワクしているんですよね」(今市)
昨年末には、メンバー全員がリラックスした状態で、インスタライブに登場。ニューアルバム『RAISE THE FLAG』にも収録されている『冬空 / White Wings』のミュージックビデオを見ながら、ざっくばらんに語ったり、全員でゲームをしたりと、仲の良さを見せた。
「なんかみんなかっこよくなったと思う。要はかっこつけないでいられるぐらい、おじさんになったっていうか(笑)。気張らなくても、肩肘張らなくてもよくなった。大人っていうか人間の強さ。みんな、そういう自分の出し方ができるようになったのかな」(岩田)
「前は、何もかも正面からぶつかりながらやる感じでしたが、メンバー全員、一人の人間として大人になってきた。だからこそ、肩肘張らないところ、リラックスして力を抜いているところっていうのを、どんどん見せられるようになった。それが以前との違いですね」(登坂)
そんな肩の力の抜けた三代目が、10周年で目指すものはなんだろうか。
「今までの三代目って、自分たちの夢を追い求めることに重きを置いていたと思うんです。でも、これからは三代目を愛してくれる方たちの人生を少しでも良い方向に変えられるようなことを、もっと考えていきたいなって。もっと近い距離でコミュニケーションの取れる企画をしたいです」(今市)
「10年もやっていると、『この曲を聴くとあの頃のこと思い出すな』って人もいるでしょう。それぞれが好きだった三代目を思い出せるような、誰もが満足してくれるような場所を作りたいんですよね。ベスト盤みたいなライブを今年はお届けしたいと思います」(岩田)
三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE(さんだいめ じぇい そうる ぶらざーず ふろむ えぐざいる とらいぶ)
EXILEの想い、信念を受け継ぐダンス&ヴォーカルグループ。パフォーマーはリーダーを務めるEXILE NAOTOと小林直己、そしてELLY、山下健二郎、岩田剛典の5名。ヴォーカルは今市隆二、登坂広臣。2010年11月10日にシングル『Best Friend's Girl』にてメジャーデビュー。2012年の『花火』で「NHK紅白歌合戦」に初出場。2014年に「レコード大賞」を13枚目のシングル『R.Y.U.S.E.I.』で獲得。「NHK紅白歌合戦」に3年連続出場。2017年には、年間を通してドーム公演37公演、ライブ動員数148.2万人を動員し、年間動員数歴代最多記録を更新した。