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稲垣謙一

欅坂46の活動はいつも何が起こるか想像できない――副キャプテン・守屋茜が見た3年間

2019/07/07(日) 08:28 配信

オリジナル

「欅坂46って、良い風が吹けばものすごく勢いよく行けるのですが、逆にうまくいかないときにはそっちに引っ張られてしまうこともあるんです」。欅坂46の副キャプテン・守屋茜(21)はそう苦笑する。デビュー曲『サイレントマジョリティー』から『黒い羊』まで8作すべてがオリコン1位を獲得、3年連続紅白出場、デビュー3周年記念コンサートでは武道館3日間公演を敢行――順風満帆に見える欅坂46だが、守屋から見るグループの実態はかなり異なる。平手友梨奈不在時もグループを牽引した守屋にこれまでの歩みを聞いた。(取材・文:田口俊輔/撮影:稲垣謙一/Yahoo!ニュース 特集編集部)

私って、欅坂46に必要なの?

「私がこの世界に飛び込んだのは高校3年生。進路を決める大切な時に、ずっとこの世界への憧れがあって、第一期メンバーのオーディションを受けて。合格して、進学という選択肢は捨て、この世界で生きていくんだと心に決めました」

そう振り返るのは、欅坂46で副キャプテンを務める守屋茜だ。欅坂46は、2015年にオーディションを開始。2万人以上の応募者のなかから残ったのは、わずか22人。そのひとりが守屋だった。10月には冠バラエティ番組『欅って、書けない?』(テレビ東京)などを皮切りに、彼女たちは本格始動することになる。

「デビュー当初はグループとしての活動が、『欅って、書けない?』以外は限られていて、その中でキャラも目立ったものがない私は結果を残せず『どうしたらいいの?』と、いつも思っていました」

翌年4月、デビューシングル『サイレントマジョリティー』のリリースをきっかけに、欅坂46の名は瞬く間に全国区となる。26万以上のセールスは、女性アーティストのデビューシングル初週推定売上として歴代1位の記録だった。メディアがニューヒロインたちの誕生に湧き、眩いばかりの光が欅坂46に注がれた。しかし、守屋の心に差し込む影は色濃くなっていったという。

「単独でどんどんメディアに出ていくメンバーが少しずつ増えていくなか、私は“グループの中にいる一人”以上のことはありませんでした。『このグループに必要なの? どうしたら私はこの先に進めるんだろう?』と、悩みは深くなるばかりでした」

副キャプテンは「中間管理職」

2016年には「NHK紅白歌合戦」に初出場。年が明けた2017年1月21日、そんな守屋にとって大きな出来事が起こる。幕張メッセで開催された握手会で、副キャプテンに任命されたのだ。「学生時代の頃は、まとめ役はなるべく避けてきた」という守屋だったが……。

「あまりにも唐突すぎたので、『何? 何が起こったの!?』と、驚きが勝っていました。ただすぐに、キャプテンに選ばれたゆっかー(菅井友香)こそ不安だろうなと思い、この時はとにかく彼女を支えなくちゃという気持ちでした」

しかし、キャプテンとして存在感を増していく菅井とは対照的に、守屋は副キャプテンの立場に悩みを抱くばかりだった。

「副キャプテンは、乃木坂46さんにもなかった初の役職。『誰も経験したことがない役職の答えを、どうやって導きだすの?』とずっと考えていました。特に就任当初はまだ自分のことで精いっぱいで。たとえ自分の考えとズレていても副キャプテンとしての考えや行動を優先しなければいけなかった。なかなか受け入れられませんでした」

守屋の心が晴れたのは、副キャプテン就任から1年経ってからだ。

「ありがたいことに、欅坂46は起こる出来事の全てが大きなことばかりで。活動をしていくうちに、『弱音を吐く暇はない! もっと私がシッカリしなくちゃ!!』と、自然に前向きに考え、行動できるようになりました。副キャプテンって、ゆっかーとメンバーとの間に立つ中間管理職だと思ってるんです。ゆっかーが忙しいときは、私がみんなの想いに早く気づいてあげたいな、と思って行動しようと心がけています」

副キャプテンとして、活動にストイックに打ち込む「鬼軍曹」として、現在の守屋が欅坂46を見る目は冷静だ。

「欅坂46って、良い風が吹けばものすごく勢いよく行けるのですが、逆にうまくいかないときにはそっちに引っ張られてしまうこともあるんです(苦笑)。なので、気持ちをしっかりと持ってポジティブな風を吹かせ続けられる日々を送りたいと思っています」

ポジティブな風を吹かせたい。たとえば、2018年に入ると、欅坂46の絶対的センター・平手友梨奈が怪我などでコンスタントには活動できなくなった。そのときMCやパフォーマンスでグループを力強く牽引するようになったのはキャプテンの菅井であり、彼女を奮い立たてたのは、横に立つ副キャプテンの守屋の存在だった。

中間管理職の菅井とともに目指すのは、全国区の存在だ。まだまだ自分たちは知られていないという危機感があるという。

「関東圏での活動が多く、ライブもまだ限られた場所でしか開催できていないので、全国の方に私たちを知ってもらえているとは思っていません。『どうやったら、もっと知ってもらえるかな?』と、ゆっかーとはよく話していますね」

初期は意見をぶつけ合うこともほとんどなかった

2018年11月末より加わった2期生の9人を交え、今春で欅坂46はデビュー3周年を迎えた。4月と5月には「3rd YEAR ANNIVERSALY LIVE」を開催している。

守屋の気配りは、メンバーの心にしっかりと寄り添っているようだ。たとえば、昨年の『輝く!日本レコード大賞』(TBS)で守屋は、初のパフォーマンスを前に不安と緊張で硬直していた2期生の松田里奈の手を握り気持ちを落ち着かせていた。平手も過去にラジオで「(守屋の支えに)安心する」と語っている。

一方、欅坂46を象徴する一人、長濱ねるが7月末で卒業予定など、昨秋からメンバーは増減が続く。かつてメンバーは「21人全員で欅坂46」と語っていたものの、大きな転換期に差し掛かった。

「欅坂46の活動はいつも何が起こるか想像できません。特にこの一年は今まで以上に、全く想像できないことが続いています。一つ言えることは、今という時間を今いるこのメンバーと共に一歩ずつ進んでいく。それが一番大切なことだと思っています」

欅坂46の楽曲のシリアスな歌詞のイメージとは裏腹に、メンバーのぶつかりあいはなかったという。

「むしろ歌詞を読むたびに、もっと考えなくちゃなぁ、もっと思ったことは口に出していかないといけないなぁと思います(笑)。最近はようやく、この先のことについていろいろと意見をぶつけ合ったり、悩み事があると相談を聞きあうなどしています。こうしたこと、最初の頃にはほぼなかったんです。それが最近は増えました。やはり4年目に入り、私たちの周りの変化も増えてきたので、今のままではいけない、とみんなが意識するようになってきたからなのかなと思います」

下着、水着のカットに「潜在意識」が現れていた

副キャプテンの経験を通じて、欅坂46と共に自らも成長を遂げた守屋。デビュー当初、個人の仕事がないことに悩んでいたのは遠い過去になった。持ち前の女子力を活かし『anan』(マガジンハウス)で「美容の坂道のぼり隊」を連載するなど、女性誌への登場機会も増えた。この6月にはソロ写真集『潜在意識』(小学館)を発売。このタイトルは、彼女の持つ「潜在意識」を、写真を通して見つけてもらいたいとの想いを込めて自ら選んだという。

「欅坂46の活動のうえで私は、楽しさ、嬉しさ、悲しさという表情は思い切り出すタイプですが、この写真集では初めてと言っていいほど“素”が現れています。特に下着や水着のカットに『潜在意識』が現れていたかも。ここまで肌を見せることって一度もなかったから、意識せず、出たときの気持ちで撮っていただいて。そのときの表情に恥ずかしさであったり、大人びたりと自分でも気づかなかった面が出ていました。ただ恥ずかしくて読み返すのが……大変でした(笑)」

『潜在意識』未公開カット(提供:小学館)

リラックスできた瞬間は一度もない

欅坂46での活動は4年目を迎える。「『この道しかない、ここで生きていく』という気持ちがいっそう固まってきました」と守屋は言う。だが、ストイックすぎる故に、なかなか達成感を得られないとも語る。

「『この道しかない!』イコール『常に不安』で。リラックスできた瞬間は一度もありません。ちょっとでも時間ができると『この先、私は、欅坂46はどうなってしまうんだろう?』とか、仕事終わりの帰り道に『今日の仕事、どう思われたかな?』という心配が、頭の中をグルグル駆け回ってしまうんです」

これからも欅坂46は現状に満足せず、ストイックな意識で走り続けるという。

「私たちは“欅坂46だからこそ”表現できる歌やダンスをいただけました。この“欅坂46だからこそ”を広げていき、私たちでしか成しえない、新しい何かを確立したいと思っています。それが一番の大きな目標ですね」

守屋茜(もりや・あかね)
1997年11月12日生まれ。宮城県仙台市出身。2015年8月に欅坂46の1期生としてデビュー。2017年1月には副キャプテンに就任。ストイックな姿勢と熱い想いを持って欅坂46を支える。メンバーも一目置く美容知識は、『anan』連載「美容の坂道のぼり隊」をはじめとした女性誌でも大きく取り上げられている。2019年6月26日にファースト写真集『潜在意識』(小学館)を発売。

ヘアメイク:陶山恵実(ROI)
スタイリング:奥富思誉里
ワンピース(ECLIN)
靴(CECIL McBEE)


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