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殿村誠士

「乃木坂さん」は謙虚なんです――初期メンバー生田絵梨花が語る乃木坂46の変遷、そして第2幕

2019/02/09(土) 08:30 配信

オリジナル

ミリオンセラー連発、紅白、レコード大賞と活躍をあげればきりがないほどの乃木坂46。メンバーの一人・生田絵梨花もグループ同様、勢いに乗っている。先月リリースしたセカンド写真集(初版20万部)は、発売初週でほぼ完売。すでに2度の重版で累計発行部数は27万部を突破した。
「AKB48の公式ライバル」としてデビューしてから8年、生田は1期生として、辛酸をなめながらも上へ上へと登り続けるグループを見てきた。当初は「48」と間違えられるほど「足元にも及んでいなかった」という。グループを背負ってきた生駒里奈への思いは、そしてなぜ乃木坂46は人気を得たのか。乃木坂46の“深窓の令嬢”、生田が笑顔で語った。(取材・文:田口俊輔/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース 特集編集部)

乃木坂46はなぜこれほど人気なのか? 生田の「超個人的見解」

「乃木坂“さん”、いつもスゴイなぁと思いながら見ています」

そう他人事のように笑う、乃木坂46の生田絵梨花(22)。2011年に乃木坂46が結成されて以来、1期生として、その歴史のすべてを見てきた。

「個々に光り輝いているメンバーがたくさんいるので、尊敬を込めての乃木坂“さん”なんです」

近年の乃木坂46の躍進には目をみはる。昨年だけでも、発売されたシングル3枚の全てがミリオンセラー、夏に発売された写真集『乃木撮 VOL.01』(講談社)は写真集累積売り上げ歴代1位を獲得。年末には『シンクロニシティ』で2年連続の日本レコード大賞を受賞し、大みそかには4年連続となる「NHK紅白歌合戦」出場……トピックを並べてみただけで、とてつもない勢いが一目でわかる。テレビ、雑誌で彼女たちの姿を見かけない日はない。

なぜここまで乃木坂46は多くの人に支持されるのか。多くのシングルでフロントメンバーを務めてきた生田が、またしてもいたずらっぽい笑顔で言う。

「みんなメチャクチャ可愛い(笑)。CMでもメンバーが出てきた途端、集中してじっくり見ちゃいます。しかも録画したものだと『このときの顔、可愛い! もう一回見よう!』と、巻き戻して何度も見なおします」

だが、果たしてそれだけで今の人気は築けるものなのか。生田は少し考えてから、「超個人的見解ですけど」と前置きして続ける。

「全員が、一つひとつ起こるできごとを、ひたすら夢中になり頑張っていたら、こんなに大きくなっていました。みんな、どれだけ光り輝いていても、謙虚なんですよ。ずっと謙虚さを持ったまま、どの現場でも活動しているからこそ愛していただけているんだと思います」

永遠に上へと登り続けるのは難しい

2011年8月、「AKB48の公式ライバル」として乃木坂46は産声を上げた。それは上品にして透明感のある新グループの登場だった。“46”という数字には「AKB48より人数が少なくても負けない」という意気込みが込められている。しかし、そう簡単にはいかなかった。今の活躍からは想像できない、辛酸をなめる日々が続いた。

「初期は握手会を開いても、後半になるとほとんどファンの方がいらっしゃらず、ひたすらじっと座りながら待っていることが多かったですね」

2012年に発売された1枚目のシングル『ぐるぐるカーテン』で、女性アーティストのデビュー作として歴代3位の初週売り上げを記録。だが、片や“ライバル”AKB48はミリオンを連発していく。AKB48が活躍するたび、乃木坂46に差す影は色濃くなっていった。

「乃木坂“48”と言い間違えられることもありました。むしろ『公式ライバル』と言っていただくたびに、『足元にも及んでいない私たちがそんな……めっそうもございません』とすら思っていました(笑)」

そんななか、生田が「転機」として振り返るのは、2014年4月に「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)に初出演したことだ。

「だって、超メジャーなアーティストさんでなければ出演できない番組じゃないですか。私たち、『Mステ』に至るまで約3年間かかっているんです」

Mステ出演を足がかりとして、2015年にNHK紅白歌合戦に初出場を果たす。2017年にリリースした『インフルエンサー』では初のミリオンセールスを達成した。

「数字の話で恐縮ですが、『AKB48さんと同じ場所に登れた……と思っていいのかな?』というきっかけをもらいました」

今年2月には、5万人収容の京セラドーム大阪で4日間にわたる「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」を開催する。しかし、加速度的に巨大になっていく現状を、不安に思う面も生田にはある。

「今までは勢いでいけたものが、これからは勢いだけでは難しくなってくると思います。となると、『これからどうやって今の人気を持続させていくのか?』みたいなことは、常に考えています。永遠に上へと登り続けるって、難しいですから」

生駒ちゃんは背負うものが大きかった

黄金期を迎えた乃木坂46だが、昨年、彼女たちは岐路に立たされた。生駒里奈、西野七瀬、若月佑美というグループを牽引してきた“エース格”の1期生を中心に、8人ものメンバーがグループから旅立ったのだ。危機的と捉えられかねない状況。生田は「いろいろと考えてしまう」と前置きしながら語る。

「みんながそれぞれの夢を持って飛び出していくので、『前向きな別れ』として捉えられるようになってきました。むしろ、これから違う場所で輝く姿を見られるのは嬉しいんです。特に生駒ちゃんは、初期のころからフロントに立ち続けてきたので、背負うものが大きかった。だから、逆に旅立つときは安心したんです。一人の生駒ちゃんとしての人生を楽しんでほしいな、と」

2015年には、妹分グループである欅坂46も誕生した。追う立場から追われる立場となったことにプレッシャーはないだろうか。

「プレッシャー……よりは、むしろそういう目で見てもらえたら『もっと頑張んなきゃ!』と。逆に背中を押してくれますよ。いやぁ、嬉しい」

一方で、2016年に加入した3期生は個々の花を咲かせ、昨年秋に加入したばかりの4期生も徐々に頭角を現してきた。乃木坂46は、新たな変革の時を迎えつつある。

「私たち1期生はゼロから乃木坂を“縦”に伸ばすためのことを考えて実践してきました。これからは、縦に伸ばす役目は若い子たちがどんどん担っていってもらいたいです。私たち1期生は、乃木坂の未来を担う子たちをサポートしつつ、“横”へと広げていく役目を担うべきなんじゃないかな」

「楽しい」だけでは続けていけない

数多くの女性誌の表紙を飾る白石麻衣、昨年公開の映画『あの頃、君を追いかけた』で主演を飾った齋藤飛鳥、『トラペジウム』(KADOKAWA)で小説家デビューを果たした高山一実……。まさに生田の言葉の通り、多くの乃木坂メンバーが個人活動を通してグループを“横”へ広げ続けている。生田もまたその一人だ。彼女は「ミュージカル」という世界を通じて、乃木坂46を“横”へと広げ続けている。

小学2年生のときに観劇した『アニー』に感動し、いつしかミュージカルの舞台へのあこがれを抱くようになったことが、生田が芸能界への扉をたたくきっかけとなった。そして、“舞台に立つ”という“共通項”から乃木坂46の門戸を叩いた。

生田に吉報がもたらされたのは2014年。舞台『虹のプレリュード』で、念願かなっての初ミュージカル挑戦が決まった。以降、数多くのミュージカル作品に出演。2017年には『レ・ミゼラブル』のコゼット役をオーディションで勝ち取り、帝国劇場という夢の大舞台に立った。同年6月には音楽界・演劇界の明日を担う人材、向上・発展に功労のあった人物に贈られる「岩谷時子賞」の奨励賞を受賞。名実ともに新進気鋭のミュージカル女優として成長を遂げた。しかし数を重ねるごとに、舞台に立つ恐怖を感じるという。

「モンスター級に歌のうまい方々に囲まれる日々なんです。やればやるほど足りない部分が見えてくるので、『できるようになった!』と成長を感じる以上に、『もっとこうしたいのにできない!』と葛藤を感じるほうが強いんですよ。『ミュージカルが好き、楽しい!』の気持ちだけでは続けられない、と実感するばかりです。だから、最近はスポーツ選手の名言を調べて、気持ちを高めているんですよ(笑)。本田圭佑選手やイチロー選手、錦織圭選手の言葉を。たぶん、何十年携わったとしても、ずっと納得できる表現にたどり着くことはないんだろうなぁと思います」

憧れの場所だからこそ、妥協を許さない。ストイックな姿勢で臨む。先日まで東京芸術劇場で上演されていた『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』のヒロイン・ナターシャ役を務め、井上芳雄、元宝塚のトップスター・霧矢大夢ら、技術、表現ともにハイレベルな役者陣とがっぷり四つに組み、「しょせんアイドル」という斜めからの目を覆す演技を見せた。さらに『ロミオ&ジュリエット』『レ・ミゼラブル』の再演に出演決定。既に9月まで舞台予定でスケジュールがぎっしりと詰まっていることが、彼女の演技が認められている証左だ。

「いつも必死です。しかも、うまくいったときのことはあまり記憶になく、うまくいかなかったときのことが頭の中にこびりついてしまうんです(笑)。ただ、失敗がわかること自体、成長している証拠だと思っているので、ネガティブにならず気持ちだけは図太く、前だけを向いていきたいんです」

一生懸命やったことが、いま想像できないことを起こしてくれる

今年1月22日に22歳の誕生日を迎え、その日に2冊目の写真集『インターミッション』が発売された。初版は実に20万部。講談社の女性ソロ写真集史上、最大部数だ。

「写真集の担当者さんから『20万部です』と言われて信じられなかったのに、ニュースを見たら重版で27万部って言われていて、『さらに増えてる!?』って。最近は、たくさんの方に『写真集見たよ』と声をかけていただけて、とても嬉しいです」

「インターミッション」からのオフショット(提供:講談社)

生田はドイツ・デュッセルドルフ出身。3歳から始めたピアノは、小室哲哉も認めるほどの腕前だ。バレエダンス歴10年という経歴やバラエティー番組で見せる凛とした姿から、清楚なイメージの強い乃木坂46の中でも“深窓の令嬢”の立ち位置にいた。

「オーディションのころから『話しかけにくい』と言われていたほどの“お堅い”キャラでした。そもそも人と壁をつくりやすい性格で、笑顔を作るのも苦手で」

まるで「機械人間のようだった」という彼女を変えたのは、2016年に発売された最初の写真集『転調』だった。

「写真に撮られるたびに、どうしても表情が硬くなってしまっていたのですが、『転調』の撮影中は、常に自然体でいられたし、心から笑っているところを撮っていただけました」

『転調』から3年、『インターミッション』での生田は笑顔だけではない。「舞台の幕あいの休憩時間」を意味するタイトルの通り、少女と大人の間の瞬間が収められた作品となった。ランジェリーショットなど、艶を感じさせるショットも含めて、今までにない表情を見せる。

「最初にまいやん(白石)に見てもらったんですけど、『すごくドキドキした!』『新しい一面を見た』と言ってもらえました。メンバーに言われて『そうなんだ!』と気づくんですよ(笑)。露出があるノースリーブ系の衣装でさえも、ほとんど私は着てこなかったんです。なので、『インターミッション』をご覧になった方は、『ええっ!?』と思われるかもしれませんね。確かに“大人”と謳っていることがあるんですけど、ムリに背伸びしたつもりは全然なくて、全てありのままの私なんです。食べているときの写真なんか本当に何も昔と変わっていませんから(笑)」

「インターミッション」の未公開オフショット(提供:講談社)

『インターミッション』発売とともに、生田絵梨花の第2幕が開く。これからの彼女はどんな物語を紡いでいくのだろうか。

「自分のイメージや限界を決めてしまわず、一生懸命やったことが、今想像できないことを起こしてくれるはずなんです。だから第2幕の私はまだ白紙。これから待ち受けることを楽しみながら乗り越えていきたいんです。そうすればきっと、面白い第2幕になると思います」

生田絵梨花(いくた・えりか)
1997年1月22日生まれ。A型。ドイツ・デュッセルドルフ出身。2011年、乃木坂46の1期生として活動開始。10thシングル『何度目の青空か?』でセンターを務めるなど、常にグループの中心的メンバーとして活躍。アイドルとしての活動以外に、『レ・ミゼラブル』や『ロミオ&ジュリエット』など多数のミュージカル作品にも出演。ピアノの腕前も抜群で、乃木坂46イチの才色兼備であり、天真爛漫な魅力で多くの人々を魅了している。

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