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栗原洋平

AKB48という「安定」を捨て韓国へ――IZ*ONEの3人が挫折からはい上がったK-POPの世界

2018/12/23(日) 09:04 配信

オリジナル

「根性というか、甲子園の野球みたいな感じ。つらいところに立たされれば立たされるほど頑張る」――。世界の音楽シーンを席巻するK-POP。その中に、韓国のオーディション番組から生まれた日韓合同ガールズグループIZ*ONE(アイズワン)がある。日本から参加した「AKB48グループ」の39人から、IZ*ONE入りが叶ったのは宮脇咲良、矢吹奈子、本田仁美の3人。12人のうち3人が日本人メンバーというのは、より正確に表現すれば「3人しか」残らなかったとも言える。AKB48グループでの安定した活躍を捨て、言葉の壁、想像以上の力の差を感じながら、グループを成功に導こうとしている3人に、その「根性」を聞いた。(撮影:栗原洋平/Yahoo!ニュース 特集編集部)

(左から矢吹奈子、宮脇咲良、本田仁美)

韓国で直面した、足りない実力

韓国のオーディション番組「PRODUCE48」から生まれた、グローバルグループIZ*ONE(アイズワン)。10月29日にミニアルバム「COLOR*IZ」でデビューした12人組は、日本を含む世界12カ国のiTunesチャートで1位を獲得した。韓国では、ガールズグループのデビューアルバムとして初動販売最高記録を樹立。新人として驚異的な滑り出しだ。

IZ*ONEを構成する12人のうち、3人が日本からのメンバー。宮脇咲良、矢吹奈子、本田仁美だ。

宮脇はAKB48グループの「AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙」で3位に入り、矢吹もHKT48でセンターを張る実力者。特に宮脇は、今回の「PRODUCE 48」への参加を"チャンス"と捉えていた。

「48グループで、ドラマ出演やセンターもさせていただいていたけれど、今後アイドルとして何を目指していったらいいんだろうと模索していたタイミングで。そういう意味でも、世界で頑張ってみるのは、いいきっかけになるなと思いました」

だが、新天地・韓国で待っていたのは、シビアな現実だった。日本から参加したのは、「AKB48グループ」に所属するメンバー39人。日本では多くのファンを抱えるアイドルグループだが、韓国の練習生との圧倒的な実力の差を見せつけられたのだ。

「PRODUCE48」では、約3カ月間の番組放送中、課題曲や過酷なレッスンの結果をもとに、複数回の「投票」を経て徐々にメンバーが絞られていく。番組のラストに用意された最終投票で、12人のメンバーが決まる流れだ。

3人は初日の審査から、力の差を思い知らされることになる。日韓合わせ96人の候補者がAからFの6段階でクラス分けされたが、日本人メンバーの大部分は厳しい評価にさらされる。宮脇こそAランクだったものの、本田はCランク、矢吹に至ってはFランクという評価だった。

「センター」という重圧

宮脇は他の練習生に比べ「7年のキャリア」がある分、それが逆にプレッシャーとして重くのしかかることもあったという。

「私はアイドルデビューしてもう7年経つんです。私よりもはるかにスキルがある韓国の練習生の子たちを見て、『自分って7年何をやってたんだろうな』って思っちゃって、隠したいぐらいで」

宮脇は、当時の「力不足」を振り返り、言う。

「48グループは、少し未完成な部分があっても、その子が頑張っていく成長過程を応援してもらう文化があります。握手や総選挙、SNSとか、歌って踊ること以外で評価されることもある。でも韓国だとデビューするにあたって、発声やダンスの基礎ができているのは当たり前で、そこからが勝負なんです」

言葉の壁にも悩まされた。トレーナーの言葉は通訳が翻訳してくれるが、 練習生間の会話は自らで行わないといけない。韓国人の練習生とうまくコミュニケーションが取れないこともあった。

「言葉がわからないから、ステージで人と違う動きをしちゃうこともありました。韓国では一糸乱れぬダンスをしないといけないんです。私が『NEKKOYA』という曲で初めてセンターになったときが一番つらかったですかね」(宮脇)

アイドルとして「2回デビュー」できる経験

それでも韓国での挑戦を続けてこられたのはなぜか。宮脇は言う。

「48グループでの活動においては、『これから先、もっと上に行けることってあるのかな』っていう気持ちがあったんです。アイドルとして2回デビューできることって、普通では経験できないことなので、IZ*ONEに専念して、新人としてまた一からやってみよう、って。それを経験できるっていうのは、ホントに恵まれてることだなって思ったんです」

矢吹も、AKB48の世界選抜総選挙では9位になり、選抜メンバー入り。HKT48の「早送りカレンダー」ではセンターを務め、日本での安定した活躍が約束されている状況だった。

「自分がもし、(IZ*ONE選考で)低いクラスや順位になったらつらいだろうなって不安でいっぱいだったんです。だけど、それ以上にたくさん得られるものがあるんじゃないかなと思って」(矢吹)

「PRODUCE 48」を通して、もっとも成り上がったのは本田だと言ってもいい。AKB48グループの総選挙では82位で、宮脇・矢吹に比べ、知名度こそなかったものの、「PRODUCE 48」の最終投票では9位に躍進、「選ばれし12人」の座をつかんだ。

「急展開すぎて。私はAKB48は5年目なんですけど、『PRODUCE 48』の半年間で自分が注目されたのはすごく驚きで。自分のやる気を起こすきっかけにもなりました。」

「48グループ」の看板を背負い闘う

「PRODUCE 48」ではときに涙を見せることもあったが、それでも3人が逃げ出すことはなかった。むしろ、逆境が彼女たちの闘志に火をつける。

「私たちは48グループという看板を背負ってるので、自分たちの行動が全部、日本で頑張ってるメンバーたちにも反映されてしまうんです。私たちが頑張ったら日本の48グループはもっと注目されるし、逆に全然頑張らなかったら『日本のアイドルってこんなもんなんだ』って世界の人に発信されちゃう。自分のプライドも、48グループとしてのプライドも傷付けたくなかったんです」(宮脇)

「最初にFクラスになったとき、『ああ、もう来なければよかった』と思ったけど、逆にそこで『絶対に上のクラスに行ってやる』っていう気持ちになりました。HKT48でセンターにも立たせてもらってたのにFクラスだと、『日本では全然実力なくても前にいけちゃう』って思われるのが嫌だったんです」(矢吹)

8月31日にIZ*ONEのメンバーが決定し、10月29日に「COLOR*IZ」でデビュー。その大ヒットを受けて、IZ*ONEは一躍世界から注目される存在となった。日本でも、それまでAKB48グループに興味を示さなかったような人々からも熱狂的な支持を受けている。

そうした反響について、3人は「実感が湧かないです」と口をそろえる。韓国でのIZ*ONEはまだまだ新人扱い。韓国の町中では人に気づかれることもあるが、テレビ番組の楽屋は他の新人アイドルと一緒の大部屋だ。

日本から韓国という新天地へ渡り、新たに世界を目指す3人。共通しているのは「48グループのDNA」だ。一体「48グループらしさ」とはなんだろうか。

「根性というか。甲子園の野球みたいな感じです。つらいところに立たされれば立たされるほど頑張るんです。つらいときに周りを見ると、みんなも頑張っていて『ああ、自分は1人じゃないんだな』って思ってさらに頑張れるんです」(宮脇)

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