伊藤圭

アニソン人気のFLOW、南米でつかんだ手応え

8/25(土) 9:33 配信

2003年に海援隊の名曲「贈る言葉」のカバーをヒットさせた5人組ロックバンド「FLOW」はいま、海外でも活躍の場を広げている。歌詞はほとんど日本語の彼らが海外で人気となった最大の理由は「アニメソング(アニソン)」だ。

2004年に「NARUTO-ナルト-」のオープニングテーマ「GO!!!」をリリースし、その後も多くのアニメ主題歌を手がけてきた。この7月にはアルゼンチン、チリ、ペルー、メキシコ、ブラジルの5カ国をめぐる中南米ツアーを敢行。海外ファンの心をがっちりつかんでいる。(取材・文 藤堂真衣/写真・伊藤圭/Yahoo!ニュース 特集編集部)

南米のファンが熱狂

FLOWのTwitterやinstagramには南米各国を忙しく回る様子がスペイン語とともにつぶやかれている。2018年7月のアルゼンチン・ブエノスアイレスを皮切りにチリ、ペルー、メキシコ、ブラジルの中南米5カ国を周るワンマンツアーを開催した。ツアータイトルは「Anime-Shibari(アニメ縛り)」。歴代のFLOWが手がけてきた数々のアニメ主題歌を惜しげもなく披露する結成20年の集大成だ。

近年、海外公演に精力的に取り組んでいるFLOW。南米ツアー前、メンバーに話を聞いた。

撮影:伊藤圭

「ブラジルではファン有志の方が最新情報をいち早くキャッチしてくれて、SNSを使ってそれぞれの国内に情報を発信してくれているんですよ。そういう子たちがライブで僕らへのサプライズを企画してくれて、ライブ中に『GO!!!』と書かれたプラカードをみんなが掲げてくれたりするんです。嬉しいですよね。海外、それも地球の裏側の南米で自分たちの演奏を待っていてくれるなんて、バンドを始めた時はそりゃ考えられなかったですよ」

ブラジルでのライブの様子

ボーカルのKOHSHIは感慨深そうに話す。FLOWの代表曲とも言える「GO!!!」や「COLORS」(『コードギアス 反逆のルルーシュ』オープニングテーマ)を演奏するたびにオーディエンスは大いに沸くのだという。

今回の「アニメ縛り」ツアーでひときわ大きな盛り上がりを見せるのが演奏とともに流れる様々なアニメキャラクターたちのセリフだ。ライブ演出のために新たに録りおろされた声優の声が会場を盛り上げる。「いろんなアニメ作品のキャラクターが一堂に会するのはFLOWのライブならではの魅力。たくさんの声優さんが作品の垣根を越えて力を貸してくれました」とギターのTAKEは語る。

「南米でのライブのコツは酸素ボンベを用意しておくこと(笑)。街自体の標高が高いところもあるから、ライブ中に酸欠にならないようにしないといけないのが一番の違いかな…」とボーカルのKEIGOは笑う。

チリで行われたライブの様子

売れないバンド、贈る言葉、アニソンとの出会い

FLOWが誕生したのは1998年。ボーカルのKOHSHI(兄)と、ギターのTAKE(弟)の兄弟によって始まった。KOHSHIが振り返る。

「最初はX (現X JAPAN)のコピーバンドをやっていて、オリジナル曲をやりたくなって、『FLOW』をつくったんです。TAKEが曲を書いて、俺が作詞を担当して、20曲くらい作ったころに、『曲あるんだからライブしよう』って今のメンバーを集めました。ツインボーカルになったのは、歌詞に言葉を詰め込んだせいで俺がブレスをできなかったから(笑)。それで、以前から見に来てくれていた友人のKEIGOに、『俺の歌えないところ、歌ってくれない?』って声をかけたんです」

そこに弁当屋のバイトをしていたIWASAKI(ドラム)と他のバンドを掛け持ちしていたGOT’S(ベース)がFLOWに合流、現在の5人体制になった。精力的にライブ活動を続け、事務所にも所属した。だが、最初に待っていたのはチケットを手売りする日々だった。

撮影:伊藤圭

「事務所から求められていたのはワンマンでライブハウスをいっぱいにすることでした。道行く人に声をかけてチケットを買ってもらうこともありました。友達にも買ってもらおうと電話しすぎて、『またチケットの話?』と言われ、だんだん電話にも出てもらえなくなって……正直、友達は減りました(笑)」(TAKE)

辛い日々はある一曲との出合いで終わりを迎える。2003年にリリースした海援隊の名曲「贈る言葉」だ。このカバーソングが大ヒットし、メジャーデビューへの階段を駆け上ることになる。

「『贈る言葉』以降はチケットがすぐに完売するようになって。そのときは『もう友達を失わなくていいぞ!』って喜びでいっぱいでしたね(笑)」(TAKE)

さらに1年後の2004年、4thシングルの「GO!!!」が、当時放映されていたテレビアニメ「NARUTO-ナルト-」のオープニングテーマに起用された。初のアニメタイアップ曲だ。

「『GO!!!』のタイアップが決まって、SHIBUYA-AXでこの曲を初披露したときのことは今でも覚えています。初めてやる曲なのに、お客さんも自分たちもすごく盛り上がっていて、『これは自分たちにとってすごく大事な曲ができたんじゃないのか』って感じました」(TAKE)

“「贈る言葉」のバンド”というイメージを拭いきれなかった彼らが、拠って立つ自分たちの曲を手にした瞬間でもあった。同曲はオリコンランキングで3週連続のTOP10入りを果たした。

「誰が自分たちを知ってるんだ」

「GO!!!」の発売以降は作品の主人公・ナルトが属する「木ノ葉の里」の額当てをつけたファンがライブに訪れるようにもなり、アニメの影響力を実感した。

2005年の7thシングル「DAYS」はアニメ「交響詩篇エウレカセブン」の象徴的なオープニング曲となった。国内ツアーやフェスにも精力的に出演し、活動を続けていたFLOWに突然、「海外でライブをしてくれ」という依頼が舞い込む。2006年9月、アメリカ・テキサス州のダラスで開催されたアニメのコンベンションに招聘されたのだ。

撮影:伊藤圭

「当時は海外で活動しようとはまったく考えてなくて。英語は話せないし、日本のアニメが海外で人気だという認識もなくて、ずっと『いったい誰が自分たちのことを知っているんだろう』と思っていて……でも、行ってみたら大盛況。会場はホテルの広間のような場所に3,000人以上も集まっていたんです。そこでパフォーマンスをしたのは俺らだけだったから、自分たちのためだけにそれだけの人が集まってくれていたということ。だから本当に驚きました」(KEIGO)

コンベンションでは「GO!!!」「DAYS」と、同年11月に発売を控えていた「COLORS」を披露。自分たちが想像していた以上の観客を沸かせた。

そして2010年には、5枚目のアルバム「MICROCOSM」が欧米44カ国でリリースされ、FLOWは本格的に世界の舞台へ進出していく。

海外と日本で異なる、ファンとライブの関わり方

それまでのアニメタイアップ曲を収録したベストアルバム「FLOW ANIME BEST」もリリースし、フランスや韓国、シンガポールなど欧米・アジアのアニメイベントにも積極的に出演。2015年には日本を含めアメリカや台湾、南米をまわるツアー「FLOW WORLD TOUR 2015 極」も行なった。

撮影:伊藤圭

「コンベンションに出演させていただくのは本当にありがたいことですが、それはあくまできっかけの一つ。いろんな国の人たちが俺らのことを待っていてくれた、楽しみにしていてくれていたのを目の当たりにすると、『一回きりにしたくない。つなげていかないとダメだな』って。ファンとつながっていくために、ツアーとして形にして、海外でのライブを継続していきたいとメンバー全員が思ったんです。日本と環境が違うリスクはあるし、費用面の問題もあるし、決して簡単な道のりではなかったけど、海外で戦っていく基盤のようなものができたと感じました」(TAKE)

海外でのライブは演奏する環境も日本と異なり、機材トラブルなどの影響を受けて万全の状態でライブに臨めないこともある。2018年のツアーでもブラジルでは機材トラブルで、フルバンドで演奏できないトラブルにも直面した。だが海外でライブをして知るのは、困難な環境への対処法だけではない。

たとえばギターソロ。「日本のファンは食い入るように見て、比較的静かになるけど、海外だとみんなが声をあげて盛りあがるターンになる」とKEIGOは振り返る。

メキシコでのライブの様子

「パチスロ機で初めて曲を聴いた人だっている」

2018年の上半期にかけて行われた全国ツアー「アニメ縛り」のファイナルでは、15周年イヤーのラストを飾る日本武道館単独公演が発表された。南米ツアーを終え、次を見据える。アニソンで世界を飛び回るFLOW。自分たちの音楽をどう捉えるのか。

「俺らのライブって、音楽好きやアニメ作品のファンはもちろん、その作品のパチスロ機で初めて曲を聴いて好きになって来てくれたって人もいるんです。俺らのデビュー当時に学生だった人が、自分の子供と一緒に来てくれることもある。これだけ幅広い客層の人たちが一つの音楽を介して、同じ空間で楽しめているってすごいことだと思います。武道館でもきっとその風景が見られるはずで、これは唯一無二の、俺らにしかできないものだと思っています」(TAKE)

FLOWのライブには性別、年齢、さらに国境も越えて様々な人々が訪れる。次はどんな楽曲で世界を沸かせるのか。

撮影:伊藤圭

FLOW

KOHSHI(Vo)、KEIGO(Vo)、TAKE(Gt)、GOT’S(Ba)、IWASAKI(Dr)の5人組ミクスチャーロックバンド。兄弟であるKOHSHI(兄、Vo)、TAKE(弟、G)が1993年から音楽活動を始め、1998年にFLOW を結成。

2008年に日本武道館単独公演を開催、世界中に活動を広げている。アジア、北米、南米、ヨーロッパなど、18ヶ国以上もの国でライブを行っている。

8月29日には34枚目となるダブルA面シングル「音色/Break it down」をリリース。2019年1月30日(水)には10 年ぶりの日本武道館単独公演、15th Anniversary Final「FLOW LIVE BEST 2019 in 日本武道館 〜神祭り〜」の開催が決定している。


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