女性は筒形のワンピースを着ていた、古代エジプトの服装の歴史
人類の歴史は服装の歴史といっても過言ではありません。
果たして古代エジプトの人々はどのような服装をしていたのでしょうか?
この記事では古代エジプトの女性の服装について紹介していきます。
古代エジプトの女性の服装
かつて古代エジプトに生きた女性たちは、現代にすら通じるファッション感覚を持っていたとのことです。
彼女たちの身にまとったものは、筒型のワンピース、いわゆる「シースドレス」でした。
庶民の女性もこれを愛用し、胸元にかけた二本の紐で吊るシンプルなデザインが多く、肩から足首にかけて白く長い布地が揺れる姿は実にしとやかで、砂漠の乾いた風に似合いもしたでしょう。
加えて、エジプト女性はささやかな装飾や化粧にも余念がなかったとのことです。
実のところ、エジプトの女性は他の文明圏に先駆けて財産を持つ権利を得ており、妻が自由に扱える財産を所有できたというから、実にのびのびとおしゃれを楽しんでいたのです。
とりわけ祝祭の日には、貴婦人たちがビーズを贅沢にあしらった飾り紐を腰に巻いたり、庶民たちもビーズや組紐を模したものを巻いてささやかな煌びやかさを演出したりしていました。
女性の姿といえば、宴席に付き添う踊り子たちはまた異なり、極端に露出度の高い衣装で身を包んでいたのです。
とはいえ、現代の感覚からすれば奇抜な衣装でも、当時の人々にとってそれは実に自然で、むしろ動きやすさや機能美の表れでした。
裸の像や絵画がしばしば描かれたのも、エジプトの人々が恥部や衣装の露出に対して、おおらかな感覚を持っていたことを示しています。
そして、新王国時代にはエジプトに風を呼び込んだように、小アジアから「カラシリス」と呼ばれる薄い衣服が到来します。
土地の裕福な女性たちはこのエキゾチックな衣装をまとうことで、さらに洗練された美しさを纏うようになりました。
また、踊り子たちは自由な長髪を小さな飾りでアレンジし、舞いにふさわしい軽やかなヘアスタイルを作り出していたといいます。
上流階級に目を向けると、彼女たちのファッションもまた華やかさを極めていました。
羽のようなビーズの装飾が施された衣装や、幾何学模様が施された特別な布地、裾を折り返して染色された羽模様など、きらびやかな工夫が凝らされていたのです。
王妃たちはさらに優雅なガウンを重ね着し、時に大きく肩をあらわにして涼やかな風情を見せていました。
新しい支配地域から伝わった宝石色のガラスやリボンなども華麗に加えられ、上質な素材のドレスやチュニックが、エジプト上流女性たちの身を包み、その姿はまさに王国の優美な象徴だったのです。
そして、貴婦人たちは上質な化粧品に対する熱意もひとしおでした。
特に黒く太いアイラインを引いた目元の化粧は、エジプト独特の美の象徴といっても過言ではないでしょう。
目元を濃く彩る技術には酸化鉄や硫化鉛、さらには孔雀石など、自然の色彩がふんだんに使われ、妖艶でありながらもどこか気高い印象を与えました。
女王クレオパトラもまた、上瞼を青、下瞼を緑と、二色のアイシャドウで彩り、まさに「エジプトの女王」たる姿を完成させたのです。
王妃の被り物といえば、金でできた神聖なハゲワシをかたどった冠が象徴的でした。
この威厳あふれる冠は、彼女たちの髪に落ち着き払った貴婦人の象徴で、ナイルの女神を彷彿とさせたといわれます。
髪には上質な鬘を被ることが流行し、ボブヘアや三編みが、時代ごとの流行を取り入れた女性たちを一層美しく飾りました。
時代を超えてエジプト女性たちが纏ったファッションとその生き生きとした姿は、エジプトの美の歴史そのものといえるでしょう。
参考
丹野郁編(2003)『西洋服飾史 増訂版』東京堂出版