女は老いも若きもぺプロスを身に着けていた、5~6世紀の服装の歴史
人類の歴史は服装の歴史といっても過言ではありません。
果たして5~6世紀の人々はどのような服装をしていたのでしょうか?
この記事では5~6世紀のイギリスの女性の服装について紹介していきます。
5~6世紀のイギリスの女性の服装
古代の地より、アングロサクソンの女性たちは、気高くも工夫に満ちた装いを纏っておりました。
その衣装は、今日の私たちから見ればまるで異国の地の儀式衣装のように思えるものもありましたが、彼女たちにとっては日常の生活を支える頼もしき一部だったのでございます。
まず、5世紀から6世紀の女性が着用していたとされる「ペプロス風の長いガウン」。丈は足首まで届き、自由に歩みつつも優雅さを見せることができたとか。
肩にかけるブローチが二つ、これを身につける姿はまるで高貴なる風景を思わせます。
ペプロスというのは、特定の年齢層において特別な意味を持つもので、出産を迎えた女性が、子を授かり育てる際の機能性と美しさを兼ね備えておりました。
時にはこれが象徴ともなり、若い者から年老いた者に至るまで、それぞれの年齢にふさわしい形があったのです。
10代の若き娘たちは、二つのブローチの代わりに一つで留め、無垢なる時を示していたとも伝わります。
そしてケントの女性たちには、独自の趣向がありました。
4つのブローチで留めるジャケットと、少し異なる風合いの「フロント留め」の衣装です。
フランク族からの影響が見られるケントの地では、ファッションもまた多様なる文化の交流点でありました。
また、アングロサクソンの女性が身に纏うアイテムの数々は、その身の美しさを飾るだけではなく、日々の生活に役立つ小道具も一緒に下げられていたというから興味深い話です。
ペプロスの上に重ねるもの、ベルトで留めるガードルの下には織り道具、ナイフ、お守りといったアイテムがそっと吊るされ、まるで装飾と実用を一体にした小宇宙のような存在感を放っていたのです。
ビーズで作られた首飾りは琥珀や水晶が織りなす輝きをもち、肩にかけるブローチのあいだを華やかに飾っていました。
その一方で、アングロサクソンの女性たちは豪華な毛皮の衣装も所持していたとされます。
飼いならされた羊や牛の皮から作られたシンプルなポンチョのような外套は、気候が厳しい時にも身を温めたとされますが、これは貴重な素材であったため、主に特別な機会に限られていたのかもしれません。
考古学的な発見物からも、それが一種の地位を示すアイテムであったことがうかがえます。
こうしてアングロサクソンの女性たちは、ブローチやベルトを飾りつつ、長きガウンの裾を引き、彼女たちの時代を生き抜いたのでございました。
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参考文献
丹野郁編(2003)『西洋服飾史 増訂版』東京堂出版