男は皆似たような服を着ていた、5~6世紀の服装の歴史
人類の歴史は服装の歴史といっても過言ではありません。
果たして5~6世紀のイギリスの人々はどのような服装をしていたのでしょうか?
この記事では5~6世紀のイギリスの男性の服装について紹介していきます。
5~6世紀の男性の服装
アングロサクソンの埋葬地の土を掘り返しても、そこに眠る男性たちがどのような衣服を纏っていたかはまるで謎に包まれているのです。
武器は彼らの傍らに鎮座しているものの、衣服を飾るブローチやベルトといった物はほとんど見つかっていません。
織物の痕跡もわずかで、まるで幽霊のように消え去っています。
考古学者たちは失われた謎を探るべく、北西ヨーロッパやスカンジナビアの文字、芸術、古代の発掘品に目を凝らします。
ゲルマン族は2世紀ごろ、毛皮や皮の衣装を纏い、武骨でありながらも厳格な美意識を持っていたとか。
そして、4世紀になると織機が導入され、ようやく羊毛の衣服が一般に普及したのです。
やがて毛皮は影を潜め、質素な布地が時代の表舞台に立ったのでした。
5世紀から6世紀のアングロサクソンの男性たちは身分の差を問わず、マント、チュニック、ズボン、レギンスという構成で装っていたと考えられています。
布で作られた短いマントは肩の片方にかけられ、必要なときには丸いブローチで留められることもあったそうです。
このスタイルは、後にアングロサクソンの図画や絵画にも描かれ、大陸のゲルマン部族の流儀が海を越えて伝わった痕跡として残っています。
さて、彼らの衣服にはどうやらブローチが少なかったようで、代わりに腐りやすい素材の留め具を用いたり、革紐や布のレースでマントを固定したり、あるいはポンチョのようにマントを肩に引っ掛けるなど、実に自由な発想で装っていたようです。
まるで草の上に軽く座るかのような気まぐれな衣装でした。
ズボンに関しても少しお話ししましょう。ローマの詩人オウィディウスはゲルマンの野蛮人がズボンを穿いていたと記録しており、アングロサクソンの男性たちも彼らを真似たか、あるいは自然の流れで独自に発展させたのでしょう。
ズボンは緩やかに腰に結ばれ、足元にはガーターやレギンスがしっかりと固定され、余分な布地は腰回りでゆったりと束ねられていました。
日々の労働には適し、自由に歩き回れる合理的な服装だったのです。
さらに、足元には通常レギンスが着用され、暖かさと保護の役割を果たしていたようです。彼らは革のストッキングや、布のバインディングストリップを脚に巻きつけ、寒さや風から守り、自然の厳しさに立ち向かっていたのでした。
靴はどうだったでしょう?
意外にもアングロサクソンの男性は裸足で活動することが多かったのか、墓地にはあまり靴の痕跡がありません。
ただし言語学的な証拠からは、生皮のスリッパや簡素なパンプーティが存在していたことがわかります。
そして農作業の合間には足元を守るための足覆いが用意されていたのかもしれません。
実用性に優れた素朴な装いに、彼らの慎ましさが垣間見える気がしませんか?
最後に、アクセサリーについても一言。
墓地から発見される唯一の男性用アクセサリーは、何といってもベルトのバックルです。
この時代の男性は、実利を重視して腰にナイフや道具をぶら下げ、お守りを隠し持っていたとも考えられます。
そして、ビーズも稀に見つかることがあり、ベルトや武器に装飾として付けられたのではないかと推測されるのです。
このようにアングロサクソンの男性たちの衣装は、素材や形において厳しい自然と対話するような機能性に富んでいました。
参考文献
丹野郁編(2003)『西洋服飾史 増訂版』東京堂出版
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