泣き叫ぶ少女の残酷場面…北朝鮮「14歳の許されざる罪」
韓国の朝鮮日報系のTV朝鮮は今年7月、韓国政府関係者の話として、北朝鮮が中学生30人を、韓国ドラマを見たとの理由で公開処刑したと報じた。6月にも、17歳前後の30人の青少年が死刑、無期懲役判決を下された。
いずれも、韓国の脱北者団体が風船やペットボトルに入れて北朝鮮に送り込んだ、韓国ドラマが保存されたSDカードを拾って、ドラマを見たという。
TV朝鮮の報道は続報がなく、十分に検証されているとは言えない。しかしこれ以外にも、北朝鮮で十代の少年少女たちが厳罰を受けているとの情報が相次ぎ伝えられている。何しろ北朝鮮当局が、公開裁判で泣き叫ぶ十代少女の映像(写真)を公開し、さらしものにしているのだ。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
反韓流法とも呼ばれる反動思想文化排撃法は、29条で、韓国ドラマ、映画などを「見たり保管したりした者は、5年以上15年以下の教化刑に処す。これらを流入させ、流布した者には無期労働教化刑、罪状の重い場合には死刑に処す」と定めている。
法律制定後、逮捕される青少年が相次いだ。朝鮮労働党法務部は2022年4月、「反動思想文化排撃法違反少年に対する意見対策案」を提出し、金正恩総書記の承認を受けた。デイリーNKの内部情報筋によると、これは青少年の9割が外部文化韓国ドラマなどの外部文化に接しているとの調査結果に基いた措置だ。これに基づく通達は以下のようなものだ。
○過去2年間に反動思想文化排撃法に違反した14歳以下の少年の法的処理事項を個人文件(個人の経歴、思想などをまとめた文書)から削除し、現在捜査、拘禁対象となっている者はすべて釈放すること
○14歳以上17歳未満の青少年のうち、反動思想文化排撃法に違反しすでに裁判を受けて法的処理を受けた場合を除き、2022年4月8日以降、捜査、拘禁中の者に対しては拘禁解除し、社会的教養処分を下すこと
○14歳以下の少年期に反動思想文化排撃法に違反し、教養処分を受けた者が、17歳以上の青年期に再犯した場合には加重処罰すること
韓流で捕まる青少年があまりにも多すぎて、社会的な影響が大きすぎるとの判断からこのような通達が下されたようだが、施行からわずか2年で撤廃されたと思われる。
慈江道(チャガンド)の前川(チョンチョン)では今年、16歳の高校2年生2人が、政治犯収容所送りになる事件が起きた。
(参考記事:「見てはいけない」ボロボロにされた女子大生に北朝鮮国民も衝撃)
現地のデイリーNK内部情報筋によると、同じクラスに属する2人は、学業や対人関係には問題がなかったものの、MP3プレイヤーにK-POPのファイルを保存し、他の複数のクラスメートにも聞かせていた。2人を逮捕した保衛部は、彼らが自分たちでK-POPを聞くだけではなく、クラスメートにも聞かせていたことを問題視したという。
こうした十代の少年少女に対する無慈悲な処罰は、以前から行われていたものだ。2021年11月には両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市で韓流映画を見ていた14歳の少年が逮捕され、労働教化刑(懲役)14年という重い判決が下された。
その後、前述の通達が出されたことで状況の改善が期待されたが、現実はそのようには動かなかったようだ。