SDGs世界ランキング1位のデンマーク 企業と行政は何にどう取り組んでいるか?

デンマークのFoodPeople(フードピープル)オフィスで(筆者撮影)

国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が毎年発表している、世界のSDGs達成度ランキング。2019年6月に発表された結果では、デンマークが1位となった。

デンマークでは、企業や行政はどのような取り組みを行っているのだろうか。筆者が2019年に取材した6つの事例のうち、1つをご紹介したい。

デンマークのジェンダー・ギャップは年々縮まってきている

OECDの報告(2019)によれば、デンマークのジェンダー・ギャップは年々縮まってきている(2019年1月報告、「OECD Economic Surveys Denmark」p50-51より)。

デンマークでは、グラフの赤線で示すジェンダーギャップは年々縮まってきている(2019年1月報告「OECD Economic Surveys Denmark」p50-51より)
デンマークでは、グラフの赤線で示すジェンダーギャップは年々縮まってきている(2019年1月報告「OECD Economic Surveys Denmark」p50-51より)

2019年以前のOECDの報告でも、家事などの無償労働への参加時間は、デンマークの男性が最多で、一週間に3時間6分という結果が出ている(最も少ないのが日本の男性で一週間に40分)。

実際、一週間のデンマーク滞在期間中、「成人男性と子ども」という組み合わせを、平日・休日に限らず、多く目にした。下記の動画は、平日の公園で遊ぶ父親と子どもたちの姿だ。ボールで遊んでいる父子の他にも、通りすがる人たちに「父と子」が複数見られる。

デンマークでも、出産により昇給や昇進への壁が生じるのは女性

とはいえ、デンマークの女性はすべて万々歳、というわけではない。前述のOECDレポートによれば、より高いポジションへの昇進や、より高い給与を得る昇給などのチャンスは、男性では子どもの有無に左右されない一方、女性は子どもがいることで昇進・昇給に壁ができることが示されている(2019年1月報告、「OECD Economic Surveys Denmark」p52-53より)。

男性(グラフ右)の場合、子どもがいても(緑)いなくても(青)稼ぐ金額に差はないが、女性(グラフ左)の場合、子どもがいる(緑)ことで高収入を得る上で壁になっている(2019年1月報告、「OECD Economic Surveys Denmark」p52-53より)
男性(グラフ右)の場合、子どもがいても(緑)いなくても(青)稼ぐ金額に差はないが、女性(グラフ左)の場合、子どもがいる(緑)ことで高収入を得る上で壁になっている(2019年1月報告、「OECD Economic Surveys Denmark」p52-53より)

デンマークでは、管理職のうち女性が占める割合は4分の1強

デンマークでは、管理職のうち、女性の占める割合は、全体の4分の1強に過ぎず、決して高くはない(2019年1月報告、「OECD Economic Surveys Denmark」p52より)。

とはいえ、日本の場合、デンマークの数値の、さらに半分程度と、よりいっそう低いのだが…。

管理職に占める女性の割合。赤がデンマーク。日本は左から2番目(2019年1月報告、「OECD Economic Surveys Denmark」p52-53より)
管理職に占める女性の割合。赤がデンマーク。日本は左から2番目(2019年1月報告、「OECD Economic Surveys Denmark」p52-53より)

デンマーク政府や王室をも動かす女性も登場

日本と共通する格差も見られるようなデンマークだが、デンマーク政府や王室をも動かすパワフルな女性も登場している。

食品ロスを減らす活動を2008年から続けてきたセリーナ・ユール(Selina Juul)は、ここ5年間で、デンマーク全体の食品ロスを25%も削減した。

写真中央、受賞するセリーナ・ユール(Selina Juul)(本人提供)
写真中央、受賞するセリーナ・ユール(Selina Juul)(本人提供)

政府や食品企業に掛け合い、賞味期限表示の改善に取り組んだNPOの女性たち

そして、セリーナと共に、賞味期限表示による食品ロスを減らすため、動いたのが、Too Good To Go(トゥー・グッド・トゥー・ゴー)という、余剰食品をスマートフォンのアプリを介して低価格で提供するサービスを提供する女性たちだ。

デンマーク・コペンハーゲンにあるToo Good To Goのオフィス兼店舗(写真左、筆者撮影)
デンマーク・コペンハーゲンにあるToo Good To Goのオフィス兼店舗(写真左、筆者撮影)

「賞味期限」は、品質が切れる日付ではなく、美味しさの目安に過ぎない。だが、日本と同様、デンマークでも、誤解する消費者が多いという。

そこでToo Good To Goのマーケティング責任者、ニコライン(Nicoline Koch Rasmussen)とターニャ(Tanja Andersen)は、2019年2月、「賞味期限と消費期限の書き方キャンペーン」を実施した。賞味期限が過ぎて、すぐ捨ててしまう消費者が多いので、その状況を改善しようと試みたのだ。

ニコライン(Nicoline Koch Rasmussen)(右)とターニャ(Tanja Andersen)(左)(筆者撮影)
ニコライン(Nicoline Koch Rasmussen)(右)とターニャ(Tanja Andersen)(左)(筆者撮影)

最初にデンマーク政府(食糧庁)に連絡し、賞味期限表示の横に「多くの場合、賞味期限が過ぎてもおいしく食べることができます」と併記してよいかの確認をとった。

政府に表現のお墨付きをとってから、ユニリーバやカールスバーグ、オーガニックブランドや酪農協会のアーラという団体など、15企業と議論した。

食品のパッケージが新しく切り替わるタイミングで、賞味期限の横に「賞味期限が過ぎても多くの場合おいしく食べられます」という表示を入れることに成功したのだ。

2019年6月、小規模農場のオーガニック牛乳「ティーセ」が、四面ある牛乳パックのうちの一面を使い、15企業の先陣を切って表記を始めた。

「ティーセ」が始めた賞味期限表示の説明。「目で見て、鼻でにおいを嗅いで、舌で確認して、つまり五感で確認して大丈夫だったらOK」といった旨が書かれている(Too Good To Go提供)
「ティーセ」が始めた賞味期限表示の説明。「目で見て、鼻でにおいを嗅いで、舌で確認して、つまり五感で確認して大丈夫だったらOK」といった旨が書かれている(Too Good To Go提供)

デンマークの成功にみならい、スウェーデンも賞味期限表示を改善

デンマークは、このような賞味期限の意味を消費者が理解し、食品ロスが減るように、行政と企業、NPOが協力して消費者啓発に取り組み始めた。

日本と同様、賞味期限表示は、デンマークでも表記が決められている。法律の内容を変える、あるいは新たに作るのには年数がかかる。が、たとえ法律を変えなくても、今、ここからできることはある。彼女らは、政府や企業に必要性を訴え、彼らの理解を得てそれを実行したのだ。

これは一つの事例に過ぎないが、このことからも、「できるところからできることをやる」姿勢や、デンマークで「ヒュッゲ」と呼ばれる、居心地の良さや満足感のある暮らし方が感じられる。

今回の「賞味期限と消費期限の書き方キャンペーン」をする以前にも、デンマークでは、賞味期限を、ピンポイント表示ではなく、アバウトな時期を示す表示に変えることで、食品ロス削減に貢献したとのことだった。2016年秋にスウェーデンの大学から来日した女性研究者に話を聞いた。デンマークの成功事例を受け、スウェーデンでもそのような表示を始めたとのこと。

実際に、2019年、スウェーデンへ取材に行き、話を聞いてきた。

日本企業がSDGs先進国から学べることはとても多い

このような、SDGsの先進国の事例は、SDGsへの取り組みを始めたばかりの日本企業にとって、非常に関心が高いようだ。

「海外の先進事例を教えて欲しい」ということで、食品関連企業始め、食品企業と取引している商社や、食品関連の研究機関、食品ロス削減のためのIoTやIcT技術を持つ企業、あるいは行政から委託を受けているシンクタンクなどから、面会でのコンサルティングのご依頼を頂いてきた。筆者のオフィスまでいらして頂いた企業もあれば、筆者が先方へ出向き、複数の社員の方にお話したケースもある。企業トップである経営陣への面会や、部署を横断的にまたいでの社内研修を請けた場合もある。

だが、依頼してくださる企業にとって、面会や研修は、日程や参加者の調整などに手間を要するし、コストや時間もかかる。海外出張するにしても、予算や日数の関係で、かなわない場合もあるし、しょっちゅう行くわけにもいかない。海外の食品ロス削減事例はメディアから発信されており、インターネット上で入手することはできるが、Google翻訳などの機能を使ったとしても、それなりの労力が必要だ。

そこで今回、『食品ロス問題ジャーナリスト・井出留美のSDGs世界最新レポート』で、このような海外事例や国内の取材を通して得た情報や学び、日本企業が参考にできることを、記事としてお届けすることにした。これであれば、いつでもどこでも情報にアクセスして頂くことが可能になる。

筆者は、農林水産省の日・ASEAN食産業人材育成官民共同プロジェクト寄付講座の講師として、東南アジア10か国の大学にも定期的に出向いている。今回は北欧の事例だったが、機会があれば、アジアの事例についてもお伝えしたい。

SDGsにこれから取り組む企業・行政や、海外出張などは予算などの関係でできないが、世界各国の先進事例を入手したい企業や行政の方などに、少しでもお役立てできるよう、食品ロスの観点から、SDGsの取り組みについてお伝えしていきたい。

どうぞよろしくお願いいたします。

今後配信予定の記事

(若干変更の可能性もあり)

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