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【速報】ごみ処理費また増え2兆1,519億円 全国自治体ごみ少ない(廃棄物削減)ランキング環境省発表

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
ごみ(写真:アフロ)

2024年3月28日、環境省が「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)」を発表した(1)。

ごみの総排出量は4,034万トンで、前年度(4,095万トン)と比べて1.5%減ってはいるものの、ごみ処理にかかった事業経費は2兆1,519億円で、前年度の2兆1,449億円から70億円増えている。この2兆円超のお金は我々が納めた税金の結集だ。

1人1日当たりのごみ排出量は880グラム。日本に住んでいる一人ひとりが毎日1kg近くのごみを出していることになる。

全国自治体ごみ少ないランキング

1人1日当たりのごみ排出量が少ない自治体について、人口3区分で発表された(10万人未満、10万人以上50万人未満、50万人以上)(2)。そこで人口区分別に紹介したい。

人口10万人未満では長野県川上村が1位

人口10万人未満の区分では、長野県川上村が1位だった。

環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より、リデュース(1人1日当たりのごみ排出量取組の上位10位市町村
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より、リデュース(1人1日当たりのごみ排出量取組の上位10位市町村

長野県川上村は、生ごみを自治体が回収しておらず、住民による処理にまかせているのが、ごみを少なくしている要因だ(3)。食品ロスを含む生ごみは、重量の80%以上が「水」なので、重くて燃えにくく、焼却するのに大量のエネルギーやコストがかかる。昨年度1位だった長野県南牧村も川上村と同様、乾かした生ごみであれば可燃ごみに入れてもいいが、生ごみ処理は住民にゆだねられている(3)。

人口10万人以上50万人未満の区分では東京都日野市が1位

人口10万人以上50万人未満の区分では、東京都日野市が1位だった。

環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より、リデュース(1人1日当たりのごみ排出量取組の上位10位市町村
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より、リデュース(1人1日当たりのごみ排出量取組の上位10位市町村

東京都日野市は公式サイトで次のように書いており、食品ロスを減らす、生ごみの水分を減らす重要性について市民に伝えている(4)。

可燃ごみ…その半分が「生ごみ」です。食べ残さない、生ごみの水分をひと絞りして排出する、たい肥化などを行うのがごみの減量には効果的です。

日野市はごみ袋有料化に取り組んできた。可燃ごみのうち、最も大きいサイズの40リットルは、10枚で800円。1枚80円だ(5)。必然的に、ごみを少なくしようという意思が働くと推察される。実際、食品ロスの講演で日野市民の方からごみ袋の価格が高いという意見を伺ったことがあった。だが、可燃ごみの40〜50%が生ごみである以上、ごみを減らすためには食品ロスを含めた生ごみを減らさなければならないのは必然で、生ごみの水分を絞る、あるいは乾かすだけでもごみ削減には効果的である(6)。

人口50万人以上の区分では東京都八王子市が1位

人口50万人以上の区分では、昨年度に続いて東京都八王子市が1位だった。八王子市は、1人1日当たりのごみ排出量が少ないランキングでトップの常連の自治体である(7)。昨年、3位だった愛媛県松山市は2位に順位を上げた。松山市はかつて9年連続で1位だった、ごみ削減に非常に熱心な自治体である(8)。今年度3位の京都市も同様だ(9)。

環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より、リデュース(1人1日当たりのごみ排出量取組の上位10位市町村
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より、リデュース(1人1日当たりのごみ排出量取組の上位10位市町村

全国自治体リサイクル率ランキング

次に、リサイクル率が高い自治体のランキングを見てみよう。


人口10万人未満では鹿児島県大崎町がリサイクル率1位

人口10万人未満では鹿児島県大崎町が84.0%で1位となった。生ごみを資源化しており(10)、これまで14回「リサイクル率日本一」になったことのある自治体で、全国的に注目されている(11)。今回で15回目となる。2位の徳島県上勝町も毎年上位にランクインしており、日本で初めて「ゼロウェイスト宣言」した自治体として、世界各国から視察を受け入れている(12)。

(日本でゼロウェイスト宣言した自治体は全部で5つしかない。上勝町のほか、福岡県大木町、奈良県斑鳩町、熊本県水俣市、福岡県みやま市)

環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より、リサイクル取組の上位10位市町村
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より、リサイクル取組の上位10位市町村

人口10万人未満50万人以上の区分では神奈川県鎌倉市がリサイクル率1位

人口10万人未満50万人以上の区分では神奈川県鎌倉市が昨年度に続いて1位となった。鎌倉市は常に全国トップレベルの水準で、2019年度は特に植木剪定材を全量資源化したことがリサイクル率のアップに大きく寄与した(13)。

環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より、リサイクル取組の上位10位市町村
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より、リサイクル取組の上位10位市町村

人口50万人以上の区分では千葉市がリサイクル率1位

人口50万人以上の区分では、昨年度に続いて千葉市が1位となった。2023年3月に策定された「千葉市一般廃棄物(ごみ)処理基本計画」では「減らそう 1人1日100g! 止めよう 地球温暖化!」をスローガンに掲げ、脱炭素への貢献を明確にしている(14)。長らく市長の座にあった、現千葉県知事の熊谷俊人氏の公式サイト(15)を見ると、リサイクル率のアップはもちろん、ごみ全体の削減に向けて尽力してきた経緯がわかる。

環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より、リサイクル取組の上位10位市町村
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」より、リサイクル取組の上位10位市町村

以上、今回、環境省が発表した「一般廃棄物の排出及び処理状況等)令和4年度)の結果の概要を見てみた。

ごみ処理費用に費やす税金は2兆1,519億円となった。この費用は施設の維持費や新たに建設される施設の建築費も含まれるが、一般的には自治体の廃棄物のうち、食品ロスを含む生ごみが40%近く含まれており、単純計算では8,000億円前後が食品ごみを燃やすために使われていると推察される。これを少なくすれば、他の用途(福祉や医療、教育、雇用など)に使う可能性が出てくる。

そのためにも、食品ロスそのものを減らすことはもちろん、生ごみを別回収して資源化すること、一緒に回収するなら生ごみの水分を切ること。乾かすだけでも劇的にごみは少なくなる。筆者は2017年6月から家庭用生ごみ処理機を1,600回使ってごみを70%以上削減できた(16)。ニューヨーク市のような大都会でも、生ごみを含めた有機廃棄物の埋め立てを止める方向で、リサイクル義務化に向けて動いている(17)。

「分ければ資源 混ぜればごみ」

という標語の意味を今いちど考え、行動に移したい。

参考資料

1)一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について(環境省、2024/3/28)

2)一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和4年度)について(詳細:環境省、2024/3/28)

3)5月30日は「ごみゼロの日」全国で最もごみの少ない自治体は?人口3区分のトップ10発表(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2023/5/30)

4)ごみの行方を知っていますか?(東京都日野市、2023/4/28)

5)可燃ごみと不燃ごみとプラスチック類ごみは指定収集袋に入れて出してください(東京都日野市、2021/10/27)

6)「水」を燃やすために1兆円  食品ロス・生ごみ処理に多額の税金が費やされる日本(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2023/4/18)

7)あなたの住む街はランキングに入ってる?環境省が最新(H29年)ごみ排出量発表、八王子市の優れた取組み(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2019/3/29)

8)なぜ松山はごみが少ないのか?家庭のごみを減らす全国トップレベルの秘密を探る(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2021/12/13)

9)16年でほぼ半減 京都市の530(ごみゼロ)対策は なぜすごいのか?(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2017/5/30)

10)なぜ日本のリサイクル率は世界ランキングで低いのか?全国トップ自治体の事例から探る(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2023/7/24)

11)鹿児島県大崎町が「リサイクル率日本一」になれたワケ ビジネスパーソンのためのSDGs講座【24】(横田浩一、朝日新聞SDGsACTION!、2023/10/20)

12)循環型農業でクラフトビール生産、ホテルでごみゼロを体験するまち(井出留美、朝日新聞SDGsACTION!、2022/11/10)

13)神奈川県鎌倉市 ごみ処理基本計画「資源化率(リサイクル率)の推移(神奈川県鎌倉市)

14)千葉市一般廃棄物(ごみ)処理基本計画(千葉市、2023年3月)

15)第2章 決断の積み重ねと職員の創意工夫 ~行財政改革③~(千葉県知事、熊谷俊人氏 公式サイト)

16)「生ごみを 臭くするのは 人間だ」1,600回生ごみ処理機を使って気づいたこと(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2024/3/22)

17)ニューヨーク市で進行中 日本が学ぶべき生ごみ・有機ごみの資源化政策(井出留美、朝日新聞SDGsACTION!、2023/11/9)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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