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金与正を激怒させた「女社長と20代兵士」の悲惨な末路

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金与正氏(平昌写真共同取材団)

今月中旬、中国と国境を接する北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)で、国境警備隊員1人と密輸業者1人が、中国キャリアの携帯電話で外部と連絡を取っていた疑いで、中央から派遣された緊急検閲チームによって逮捕された。そしてその裏には、金正恩総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長の意向があるという。

デイリーNKの両江道の情報筋は30日、「今月17日、金正淑(キムジョンスク)郡で20代前半の国境警備隊の兵士1人と50代前半の女性密輸業者1人が道保衛局に突然逮捕された」とし、「動いたのは中央から来た反社会主義・非社会主義連合指揮部の国境地区緊急検閲班にで、彼らは重刑を免れないと見られる」と伝えた。

(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面

消息筋によると、逮捕された2人はこれまで、中国の携帯電話で密かに外部と連絡を取り合って密輸をしてきた。新型コロナウイルス感染症対策の国境封鎖が緩和されたのを受けて、生計のために密輸活動に乗り出したのだ。

彼らは賄賂を使って保衛局を後ろ盾にしていたので安心して動いていたが、電波探知機器を装備した中央の緊急検閲班の任意取り締まりに引っかかってしまった。

消息筋は「新型コロナウイルス感染症の国境封鎖以後、中国の携帯電話の摘発を続けたにもかかわらず、この問題が絶えないことに怒った金与正同志が直接、国境の軍民癒着問題と密輸・違法越境を根絶するよう指示したと聞いている」とし、「特に。『今回は大目に見ない』と言ったとされ、捕まった2人は予審まで即決で進み、重刑を宣告されることになるだろう」と話した。

北朝鮮において、中国キャリアの携帯電話の使用問題は外部コンテンツ視聴・流入・流布行為などに対する厳罰を規定した「反動思想文化排撃法」(2020年12月制定)とも密接に関連しており、強力な法的処罰が予想されるというのが消息筋の話だ。北朝鮮当局は、中国の携帯電話使用が、外部コンテンツ流入の媒介になっていると認識している。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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