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「死ぬほど暑い」12万年ぶりの猛暑 なぜメディアは表層的な現象しか報じないのか

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
東京で猛暑日(写真:西村尚己/アフロ)

昨日、通りすがりの男性が「暑い!」「死ぬ!」と叫んでいた。

その次に現れた若い女性は、冷房の効いた建物から出た瞬間、「暑っ(アツッ)!」と眉間に皺を寄せた。

その次に現れた、3〜4歳ぐらいの小さな男の子は、両親に左右の手をひかれながら、「アチアチアチ...」とつぶやいていた。

子どもは大人に比べて外気温の影響を受けやすい。小さな子にとって、炎天下のアスファルトの道路は、焼けるように暑いことだろう。

有楽町駅前、暑さ対策でミストが撒かれている
有楽町駅前、暑さ対策でミストが撒かれている写真:イメージマート

2023年7月4日は「地球上で12万年ぶりの暑さ」だと専門家は指摘した(1)。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、2023年7月、「地球は沸騰化(boiling)の時代」に入ったと述べた(2)。

国連、グテーレス事務総長
国連、グテーレス事務総長写真:ロイター/アフロ

Forbes JAPAN(フォーブス・ジャパン)は

人為的な気候変動により、世界の気温は長年にわたり上昇傾向にある

と報じている(3)。

自然要因だけでなく、人間の行為によって、気候変動が起きているということだ。

だが、日本のマスメディアの報道を見ていると、この猛暑と気候変動を関連づけて報じているものは少ない。

「気候変動」と「酷暑」を関連づけた報道はたった0.7%

日本最大のビジネスデータベースサービス、G-Search(ジーサーチ)(4)で、2023年8月1日から20日までに「酷暑」を報じたメディアを検索すると、502件がヒットする。だが、そのキーワードに「気候変動」を掛け合わせると、15件と少なくなる。さらにこの15件を精査すると、そのうち4件しか関連づけて報道していない。つまり、「酷暑」を報じたうちの0.7%に過ぎない。

また、「猛暑」のキーワードを使って同様の期間で検索すると、2,606件がヒットする。さらに「気候変動」を掛け合わせると、両方を報じているのは117件と、全体の4%だ。

ジャーナリストの鈴木哲夫氏が、8月6日付の『サンデー毎日』で、災害級の暑さに対する政府の無策を論じ、

人の命を奪う暑さも、もはや有事だ。そういう認識が政府にはあるのか。岸田政権に改めて問う。

と記事を締めくくっている(5)。

食品ロスを減らすことは気候変動への重要な対策

気候変動は、ある面では手のつけようがないが、フォーブス・ジャパンが「人為的な気候変動」と報じている通り、地球上の全員にできることがある。

たとえば世界の200人近くの専門家や研究者が参加した『ドローダウン』プロジェクト(6)では、進行している地球温暖化の動きを逆転(ドローダウン)させる100の方法を明らかにした。二酸化炭素の削減量や、コストパフォーマンス、実現可能性などから数値を割り出し、1位から100位までランクづけした。

100位中、3位になっているのが「食品ロス削減」だ。電気自動車(26位)や飛行機の燃費向上(43位)よりもずっと順位が高い。それくらい、気候変動に対して、食品ロス削減は、有効な策である。

書籍『ドローダウン』(山と渓谷社)を基に筆者パワーポイント作成
書籍『ドローダウン』(山と渓谷社)を基に筆者パワーポイント作成

世界中の食品ロス(Food loss and waste)が排出する温室効果ガスは、全体の8〜10%に匹敵する。国にたとえると、最も温室効果ガスを排出している中国、2位の米国に次いで、3位となる。

温室効果ガス排出の国別ランキング(世界資源研究所)
温室効果ガス排出の国別ランキング(世界資源研究所)

航空機の温室効果ガス排出量と比べても、世界の食品ロスによる温室効果ガスの排出量の方が高い(下記グラフのオレンジ部分が食品ロスによるもの、世界資源研究所による)。

温室効果ガスの排出量比較(世界資源研究所)
温室効果ガスの排出量比較(世界資源研究所)

日本の自然観と教育が根幹にあるのか・・・?

「暑い」「酷暑」「猛暑」といった表層的な現象しか報じない日本のマスメディアを見ていると、「暑いなら暑いでその暑さを受け入れるしかない」という考え方を感じる。日本人の自然観というのだろうか、

「自然には抗えない」

「自然災害は仕方ない」

という、よくいえば「諦観」。

これは論理が飛び過ぎかもしれないが、日本の教育も関係してはいないだろうか。教えられたことを黙って覚えるという、一方通行で受け身の教育方式だ(7)。

気候変動に対して個人でできる10の対策

国連広報センターは、気候変動に対して、個人でできる10の対策を公式サイトで示している(8)(8')。「廃棄食品を減らす」を含めて、以下の行動が挙げられている。

1、家庭で節電する

2、徒歩や自転車で移動する、または公共交通機関を利用する

3、野菜をもっと多く食べる

4、長距離の移動手段を考える

5、廃棄食品を減らす

6、リデュース、リユース、リペア、リサイクル

7、家庭のエネルギー源を変える

8、電気自動車に乗り換える

9、環境に配慮した商品を選ぶ

10、声を上げる

筆者自身、1の「節電」と4の「長距離移動手段を考える」については、自信を持ってできているとは言い難い。自動車を持たないので8もしていないが、それ以外の項目は、できるだけ実行している。2020年から家庭のエネルギー源も再生可能エネルギーに切り替えた。

気候変動は大きな問題だが、何もできないわけではない。むしろ、個人ひとり一人が対策をとらねばならない。「酷暑」や「猛暑」を報じるメディアには、表層的な現象だけを報じるのではなく、気候変動の一因が人為的であること、それに対して個人でできることも併せて報じてほしい。

参考情報

1)7月の猛暑、観測史上最高に ほぼ確実に「12万年ぶりの暑さ」(CNN, 2023/7/28)

2) 7月は史上最も暑い月に 国連総長は「沸騰化の時代」と警告(BBC News JAPAN, 2023/7/28)

3)7月4日の世界気温、過去12万年で最高に 2日連続で記録更新(Forbes JAPAN, 2023/7/6

4)G-Search(ジーサーチ)

5)猛暑 「気候変動適応法」成立も 岸田政権よ、酷暑対策がなってない!もう"災害級"なのに避難所は...(鈴木哲夫、サンデー毎日 第102巻、第33号、2023/8/6)

6)ドローダウン・ジャパン・コンソーシアム

7)日本教育の“弱点” グローバルな人材が育たない3つの理由『レッジョ・アプローチ 世界で最も注目される幼児教育』が画期的な理由(アレッサンドラ・ミラーニ、文春オンライン、2017/12/1)

8)個人でできる10の行動(国際連合広報センター)

8')気候変動に対して個人でできる10の行動 小冊子版(国際連合広報センター)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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