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【光る君へ】糖尿病で死んだ藤原伊尹、道隆、道長の3人

渡邊大門株式会社歴史と文化の研究所代表取締役
(写真:イメージマート)

 今回の大河ドラマ「光る君へ」では、藤原道隆がついに亡くなった。一説によると、死因は糖尿病であるといわれている。藤原家の家系は糖尿病の家系だったようで、3人が糖尿病で命を落としたので取り上げることにしよう。

 平安時代、糖尿病は「飲水病」、「口渇病」といわれていた。喉が渇き、大量に水を飲むのは、糖尿病特有の症状だった。鎌倉幕府の初代将軍・源頼朝も糖尿病だったといわれている。

 以下、糖尿病で命を落とした、藤原伊尹、道隆、道長の3人を取り上げておこう。

◎藤原伊尹(924~972)

 伊尹は、段田安則さんが演じた兼家の兄である。太政大臣、摂政を歴任した。天禄3年(972)10月、伊尹は病に罹っていたことが判明する(『親信卿記』など)。『尊卑分脈』は、「悪瘡」(たちの悪い腫物)を患っていたと記す。

 その後、伊尹は病気を理由にして、摂政の職を退いた。亡くなったのは、同年11月1日のことだった。歴史物語『栄花物語』によると、死因は飲水病であるという(先述した悪瘡の可能性もある)。

◎藤原道隆(953~995)

 井浦新さんが演じる道隆は、兼家の子である。父の死後、摂政、関白を歴任した。『大鏡』などによると、道隆は部類の大酒飲みで、藤原済時、藤原朝光は酒を愛好する仲間だった。長徳元年(995)4月10日に亡くなった。

 晩年の道隆は、盛んに水を飲んでおり、その症状から飲水病であると考えられている。当時、天然痘も流行っていたので、そうしたことも影響したように推測される。

◎藤原道長(966~1028)

 柄本佑さんが演じる道長は、道隆の弟である。太政大臣、摂政を歴任した。道長は栄耀栄華を極めたが、50歳を過ぎた頃から健康を害した。道長は急速に体がやせ細り、盛んに水を飲むようになった。

 また、目が徐々に見えなくなり、ついにはほとんど視力を失ったようで、人の顔すら判別できないようになったという(『小右記』)。いずれも糖尿病特有の症状であり、当時でいう飲水病が死因だったと考えられる。道長が亡くなったのは、万寿4年(1028)12月4日のことである。

◎まとめ

 現代でも糖尿病は怖い病気の一つだが、医者で適切な治療を受け、生活習慣を改めれば、改善することもある。しかし、当時はそうした考えがなかっただろうから、ほとんど回復の余地はなかったのだろう。

株式会社歴史と文化の研究所代表取締役

1967年神奈川県生まれ。千葉県市川市在住。関西学院大学文学部史学科卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。大河ドラマ評論家。日本中近世史の研究を行いながら、執筆や講演に従事する。主要著書に『蔦屋重三郎と江戸メディア史』星海社新書『播磨・但馬・丹波・摂津・淡路の戦国史』法律文化社、『戦国大名の家中抗争』星海社新書、『戦国大名は経歴詐称する』柏書房、『嘉吉の乱 室町幕府を変えた将軍暗殺』ちくま新書、『誤解だらけの徳川家康』幻冬舎新書、 『豊臣五奉行と家康 関ヶ原合戦をめぐる権力闘争』柏書房など多数。

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