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なぜスーパーでは精米して1ヶ月のコメを捨てるのか 米菓業界ではコメ不足で仕入れ値2倍になっているのに

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
お米(写真:イメージマート)

以前、地方のスーパーを取材した際、「精米して1ヶ月経ったコメは捨てる」と聞いた。理由は「古いから」。

筆者の身内は長野県でコメや野菜を作っているが、精米して1ヶ月のコメなど、古いとはいえない。基本的には玄米の状態で保管しておいて、食べる前に精米している。精米して日が経てば、また精米し直して食べることができる。

長野県の田んぼ(筆者撮影)
長野県の田んぼ(筆者撮影)

全国すべてのスーパーを取材できたわけではないが、複数のスーパーでは、やはり2024年の今でも、販売期限を精米日の30日から40日に設定し、それを過ぎたら処分しているようだ。

食品業界の商慣習「3分の1ルール」では、賞味期限や消費期限の手前に販売期限や納品期限があり、そこで食品を処分している(業界ルールを参考にYahoo!JAPAN制作)
食品業界の商慣習「3分の1ルール」では、賞味期限や消費期限の手前に販売期限や納品期限があり、そこで食品を処分している(業界ルールを参考にYahoo!JAPAN制作)

商品棚から撤去されたコメは、捨てている場合もあれば、職員など関係者に販売している場合もある。冒頭のスーパーは、近隣にフードバンクができてからは、フードバンクへ寄付していると話していた。

2024年4月21日、食品新聞の記事がYahoo!に転載されていた。2023年の猛暑によって国産米が高温障害で不作になり、米菓業界で主原料のコメが不足しているという(1)。農林水産省が2024年3月に発表した2023年産のコメに関する資料(2)によれば、主食用作付面積に10a当たり収量を乗じた主食用の収穫量は661万tで、前年の2022年産に比べて9万1,000tの減少となっている。

2023年国産米の取引価格は1割増しになり(3)、米菓業界ではコメの仕入れ値が約2倍に高騰しているところもあるそうだ。米菓業界では、対策として、外国産米の使用を増やすなどしている。

このように、ただでさえ国産米が不足している中で、スーパーで販売するコメの販売期限が「精米して30日から40日」となっているのは短すぎる。もっと延ばすことはできないのだろうか。

コメは、フードバンクや食料支援団体にとって必須の食材だ。日持ちするし、水と熱源があれば調理することができ、ご飯さえあれば、ある程度、満腹感が得られる。

筆者がボランティアで監事をつとめるおてらおやつクラブ、寄贈されたコメや菓子などをひとり親家庭のこどもたちに向けて匿名で発送する(写真:株式会社office 3.11撮影)
筆者がボランティアで監事をつとめるおてらおやつクラブ、寄贈されたコメや菓子などをひとり親家庭のこどもたちに向けて匿名で発送する(写真:株式会社office 3.11撮影)

フードバンクの広報を務めていた時、輸送途中にコメの袋が破けてしまい、テープで穴を補強したものがスーパーから寄贈されたことがあった。貴重な主食であり食資源であるコメ、短すぎる販売期限で捨てないでほしい。

参考資料

1)米菓、主原料のコメが不足・高騰 光明は高まる需要 持続的成長へ各社試行錯誤(食品新聞、2024/4/21)

2)米の基本方針(案)に関する主なデータ等(農林水産省、2024/3)

3)23年産米 需給に逼迫感 取引価格1割高に(日本農業新聞、2024/2/6)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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