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「天王山」の一局を制すのは藤井叡王か伊藤七段か――第9期叡王戦五番勝負第3局展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
藤井叡王は防衛戦でカド番を経験したことがないが今回はどうか(筆者撮影)

 藤井聡太叡王(21)=八冠に伊藤匠七段(21)が挑戦する第9期叡王戦(不二家主催)五番勝負は第2局までを終え1勝1敗のタイスコア。第3局は5月2日、愛知県名古屋市「名古屋東急ホテル」で行われる。

 伊藤七段は第2局で勝利し、藤井叡王のタイトル戦連勝記録を16でストップさせるとともに、対藤井叡王戦の初白星で上昇気流に乗っている。

 五番勝負における「天王山の戦い」ともいえる第3局の勝敗と展開を、データを基に予想してみた。

<第9期叡王戦五番勝負 これまでの結果と日程>

第1局 4月7日 愛知県名古屋市「か茂免」

藤井叡王(先手)勝ち

第2局 4月20日 石川県加賀市「アパリゾート佳水郷」

伊藤七段(先手)勝ち

第3局 5月2日 愛知県名古屋市「名古屋東急ホテル」

第4局 5月31日 千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」

第5局 6月20日 山梨県甲府市「常磐ホテル」

第2局が転機となるか

<藤井叡王の最近10局>

2月10日 朝日杯将棋オープン戦準決勝

対糸谷哲郎八段 ○

2月10日 朝日杯将棋オープン戦決勝

対永瀬拓矢九段 ●

2月12日 NHK杯本戦決勝

対佐々木勇気八段 ●

2月24日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局

対伊藤七段 ○

3月3日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局

対伊藤七段 ○

3月17日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第4局

対伊藤七段 ○

4月7日 叡王戦五番勝負第1局

対伊藤七段 ○

4月10、11日 名人戦七番勝負第1局

対豊島将之九段 ○

4月20日 叡王戦五番勝負第2局

対伊藤七段 ●

4月23、24日 名人戦七番勝負第2局

対豊島九段 ○

<伊藤七段の最近10局>(相手の肩書きは対局当時、未放映のテレビ対局を除く)

3月1日 ALSOK杯王将戦1次予選

対増田康宏七段 ○

3月3日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局

対藤井棋王 ●

3月5日 順位戦C級1組

対宮田敦史七段 ○

3月11日 叡王戦本戦準決勝

対青嶋未来六段 ○

3月17日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第4局

対藤井棋王 ●

3月19日 叡王戦本戦挑戦者決定戦

対永瀬拓矢九段 ○

4月7日 叡王戦五番勝負第1局

対藤井叡王 ●

4月10日 竜王戦1組準決勝

対佐藤康光九段 ●

4月20日 叡王戦五番勝負第2局

対藤井叡王 ○

4月23日 ALSOK杯王将戦1次予選

対八代弥七段 ○

 藤井叡王の直近10局は7勝3敗と順調だが、デビュー以来の通算勝率が前人未到の8割を超えているだけに、7割だとかえって不安材料に感じるくらいである。

 対する伊藤七段の直近10局は強敵ばかりを相手に6勝4敗とまずまず。今年に入ってからは藤井叡王以外にはほとんど負けておらず、第2局での勝利に手応えを感じているだろう。

 データ的には無論藤井叡王優位だが、勝負の流れを考えると第2局が転機になった可能性があり、第3局の後手番を伊藤七段が制すれば八冠の一角を崩す可能性が開けてくる。

伊藤七段の後手番戦略に注目

 直接対決は過去13戦して藤井叡王の11勝1敗1持将棋。これまでの将棋界でも圧倒的に勝ち星が偏った状態から負け越していた側が盛り返し、その後タイトルを奪った例はいくつか見られる。

 第3局は藤井叡王先手なので最近の戦型選択傾向から第1局同様に角換わりを志向するだろうが、後手の伊藤七段が第1局で見せたような右玉や、棋王戦五番勝負で披露した持将棋戦略のような新趣向を披露することは間違いなく、濃密な研究合戦が予想される。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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