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【消えた駅舎2024】令和6(2024)年下半期(7月~12月)に解体・役目を終えた駅舎たち

清水要鉄道・旅行ライター
山陰本線 久手駅

 令和6(2024)年も残すところあと10日ということで、この記事では前回に引き続き、今年の下半期(7月~12月)に消えた駅舎を紹介していこう。上半期に消えた駅舎が少なかった分、下半期には全国で歴史ある駅舎の解体が相次いだ。

【消えた駅舎2024】令和6(2024)年上半期(1月~6月)に解体・役目を終えた駅舎たち

徳島線 阿波加茂駅(徳島県三好郡東みよし町)
徳島線 阿波加茂駅(徳島県三好郡東みよし町)

 7月10日には徳島県の阿波加茂駅が仮駅舎に移行した。大正3(1914)年3月25日開業時に建てられた木造駅舎で、分割民営化後に洋風に改装されていた。当初は費用面から簡素化される計画であったが、地元住民の要望を受け、町主体で新駅舎を建設する方針に変更された。新駅舎はトイレと交流スペースを備えたもので、工期は来年8月まで。

住民の声を受け簡素化の方針が変更された木造駅舎 徳島線 阿波加茂駅(徳島県三好郡東みよし町)

京成電鉄本線 京成中山駅(千葉県船橋市)
京成電鉄本線 京成中山駅(千葉県船橋市)

 7月6日には千葉県の京成中山駅が仮駅舎に移行した。耐震化に伴う駅舎の建替えで、仮駅舎は構内踏切を挟んだ下りホーム側に設置されている。工期は来年3月31日までで、新駅舎の詳細は明らかになっていない。

伯備線 備中広瀬駅(岡山県高梁市)
伯備線 備中広瀬駅(岡山県高梁市)

 7月23日には岡山県の備中広瀬駅が仮駅舎に移行した。昭和56(1981)年10月に改築された簡易駅舎だった。新駅舎は緊急避難設備を併設した2階建てのもので、来年度の完成を予定している。

緊急避難施設との合築駅舎に建て替えへ 築43年の簡易駅舎 伯備線 備中広瀬駅(岡山県高梁市)

小海線 岩村田駅(長野県佐久市)
小海線 岩村田駅(長野県佐久市)

 8月7日には長野県の岩村田駅が仮駅舎に移行した。昭和11(1936)年1月に建てられた寄棟屋根の木造駅舎で、主要駅らしく天井の高い風格ある駅舎だった。来年3月供用開始予定の新駅舎には、長野県産の木材を使用した膜屋根が設けられる予定だ。

6月から工事開始! まもなく消える築88年の木造駅舎 小海線 岩村田駅(長野県佐久市)

高徳線 引田駅(香川県東かがわ市)
高徳線 引田駅(香川県東かがわ市)

 8月23日には徳島県の引田(ひけた)駅が仮駅舎に移行し、9月5日より解体が始まった。昭和3(1928)年4月15日開業時以来の木造駅舎で、分割民営化後に改装されて内部には飲食店が入居していた。駅舎老朽化のため、喫茶店は昨年6月末で閉店している。新駅舎は当初の計画ではトイレなしとなるはずだったが、市がトイレ付きの新駅舎を建設し、待合室部分をJRが整備する方針に変更された。新駅舎は香川県産の木材を用いたもので、来年3月末完成予定。

名物喫茶店も撤退…老朽化で建替え検討の築95年の木造駅舎 高徳線 引田駅(香川県東かがわ市)

成田線我孫子支線 下総松崎駅(千葉県成田市)
成田線我孫子支線 下総松崎駅(千葉県成田市)

 8月24日には千葉県の下総松崎(しもうさまんざき)駅が仮駅舎に移行した。築年不詳の木造駅舎で、国鉄の標準設計駅舎と比べて入口の開口部が狭いのが印象的だった。駅舎建替え工事の工期は来年3月末まで。

8月から建て替え!古き良き駅の姿を留める木造駅舎 成田線我孫子支線 下総松崎駅(千葉県成田市)

北上線 ゆだ高原駅(岩手県和賀郡西和賀町)
北上線 ゆだ高原駅(岩手県和賀郡西和賀町)

 9月2日からは岩手県のゆだ高原駅の減築工事が始まった。平成2(1990)年3月6日に建てられた駅舎は公民館との合築で、五角形の個性的な形状をしていた。近年は使われていなかった公民館部分を解体し、左端の待合室部分のみを残すこととなったが、残る部分の改修や塗り直しは行われていない。工事は11月中旬に完了している。

併設の公民館を解体、減築される五角形の合築駅舎 北上線 ゆだ高原駅(岩手県和賀郡西和賀町)

高山本線 坂祝駅(岐阜県加茂郡坂祝町)
高山本線 坂祝駅(岐阜県加茂郡坂祝町)

 9月7日には岐阜県の坂祝(さかほぎ)駅の駅舎が建替え工事のため閉鎖された。仮駅舎の設置は行われず、岐阜寄りに屋根のない仮改札口が設けられている。駅舎自体はその後も残され、ホーム側に設けられたトイレのみが現役であったが、12月10日以降はそのトイレも使用停止となり、駅舎の解体工事が行われている。旧駅舎は大正10(1921)年11月12日開業時に建てられた木造駅舎であった。新駅舎は郵便局と一体となったもので、令和8(2026)年3月に新しい郵便局が業務開始となる予定だが、JR東日本の郵便局併設駅と違い、駅業務は取り扱わない。

一部解体で郵便局を移設?変化が予想される築103年の木造駅舎 高山本線 坂祝駅(岐阜県加茂郡坂祝町)

京成電鉄千葉線 新千葉駅(千葉県千葉市)
京成電鉄千葉線 新千葉駅(千葉県千葉市)

 9月21日には千葉県の新千葉駅が仮駅舎に移行した。バリアフリー化に伴う駅舎建替えのためで、踏切を挟んだ下りホーム側に仮駅舎が設置されている。来年秋頃には再び上りホーム側に駅舎が戻る予定で、工事完了は令和8(2026)年3月とされている。

山陰本線 久手駅(島根県大田市)
山陰本線 久手駅(島根県大田市)

 10月1日からは島根県の久手駅の解体工事が始まった。大正4(1915)年7月11日開業時に建てられた寄棟屋根の木造駅舎で、事務室部分が集会所となり、便所が増築されていたが、外観は昔ながらの姿を色濃く残していた。トイレは一足早く8月16日より使用停止となっていた。工期は9月上旬から12月下旬。

港町に残る築109年青い屋根の木造駅舎 まもなく解体へ 山陰本線 久手駅(島根県大田市)

土讃線 大田口駅(高知県長岡郡大豊町)
土讃線 大田口駅(高知県長岡郡大豊町)

 10月上旬には高知県の大田口駅の駅舎が解体された。昭和10(1935)年に建てられた木造駅舎で、分割民営化後に改装されたものだった。6月30日に駅舎のホーム側の庇の一部が崩落するという事故が発生、これを受けて庇部分は早急に撤去されている。老朽化が進んでいた駅舎もこの件を受けて解体が決定、10月上旬に実施された。跡地は更地となり、利用者が極めて少ないためか、代わりとなる駅舎や待合室は建設されていない。

庇の一部が崩落 改装された木造駅舎の残る四国山地の無人駅 土讃線 大田口駅(高知県長岡郡大豊町)

名松線 伊勢竹原駅(三重県津市)
名松線 伊勢竹原駅(三重県津市)

 10月16日には三重県の伊勢竹原駅の駅舎が閉鎖され、11月中旬まで解体工事が行われた。昭和10(1935)年12月5日開業時以来の木造駅舎で、昔ながらの姿を色濃く残す駅舎であった。地元広報誌によれば、駅名のプレートは何らかの形で保存するとのことだ。

古き良き姿を留める築88年の激渋木造駅舎 名松線 伊勢竹原駅(三重県津市美杉町)

旧:宗谷本線 恩根内駅(北海道中川郡美深町)
旧:宗谷本線 恩根内駅(北海道中川郡美深町)

 10月下旬には北海道の廃駅・恩根内駅の旧駅舎が解体された。それまでの貨車駅舎に替わり、平成5(1993)年に地元負担で建てられた駅舎で、小さいものながら水洗便所のあるしっかりとした駅舎だった。今年3月16日に廃止となり、駅舎は閉鎖された状態で放置されていたが、10月から11月にかけホームと共に解体され、姿を消している。

【3月16日廃止】地元出資で貨車駅舎から改築された駅 宗谷本線 恩根内駅(北海道中川郡美深町)

地元自治会が廃止受け入れ 一度は廃止が撤回されたものの… 宗谷本線 恩根内駅(北海道中川郡美深町)

町内の駅数が3年で6駅から1駅に! 5駅が廃止された美深町の宗谷本線

函館本線 中ノ沢駅(北海道山越郡長万部町)
函館本線 中ノ沢駅(北海道山越郡長万部町)

 恩根内駅と同日に廃止となった中ノ沢駅もまた、10月下旬に駅舎が撤去された。昭和62(1987)年1月改築の駅舎は、ヨ3500形車掌車を転用したもので、貨車時代の姿をよく残していた。

【3月16日廃止】国道沿いの集落に佇む貨車駅舎 函館本線 中ノ沢駅(北海道山越郡長万部町)

来春ダイヤ改正で廃止検討!? 道南の貨車駅舎 函館本線 中ノ沢駅(北海道山越郡長万部町)

宗谷本線 初野駅(北海道中川郡美深町)
宗谷本線 初野駅(北海道中川郡美深町)

 11月上旬には同日廃止の初野駅の待合室もまた撤去された。平成8(1996)年設置のプレハブ待合室は、ホームが撤去された後もしばらく残っていたが、町所有であったことから10月28日に公売にかけられている。公売の結果は不明だが、11月5日から10日の間に待合室は駅跡から姿を消している。どこかで第二の人生を歩んでいることを願うばかりだ。

【3月16日廃止】稲作北限地帯の板切れホーム 宗谷本線 初野駅(北海道中川郡美深町)

来春ダイヤ改正で廃止検討!? 板切れホームとプレハブ待合室 宗谷本線 初野駅(北海道中川郡美深町)

常磐線 広野駅(福島県双葉郡広野町)
常磐線 広野駅(福島県双葉郡広野町)

 11月9日には福島県の広野駅の新駅舎が供用開始となった。これに伴い役目を終えた旧駅舎は昭和12(1937)年12月に建てられたもので、解体されることなく、来年度に改修が行われて、防災機能を備えた交流施設に生まれ変わる予定だ。

日南線 伊比井駅(宮崎県日南市)
日南線 伊比井駅(宮崎県日南市)

 11月には宮崎県の伊比井(いびい)駅の駅舎が解体された。昭和38(1963)年5月8日開業時以来の鉄筋コンクリート造平屋建て駅舎で、国道から階段を上ったところに建てられていた。

八高線 高麗川駅(埼玉県日高市)
八高線 高麗川駅(埼玉県日高市)

 12月8日には埼玉県の高麗川(こまがわ)駅の新駅舎が一部供用開始された。これに伴い役目を終えた旧駅舎は昭和8(1933)年4月15日開業時のもので、二つの路線の乗換駅としてはこじんまりとした、赤い屋根の木造駅舎だった。新駅舎は東西自由通路を設けた橋上駅舎で、市の花である曼殊沙華(彼岸花)など高麗川の自然をイメージした駅舎となる予定だ。全体の完成は令和8(2026)年3月を見込んでいる。

 以上、今年消えた駅舎や役目を終えた駅舎を振り返ってみた。今年は有名な駅舎の建替えは少なかった一方で、峠下駅が雪の重みで倒壊するという衝撃的な事件もあったし、全国で地味ながらも歴史のある駅舎が多く消えた。予告なしに解体される駅舎もあるので、消えてから後悔しないためにも、見たい駅舎は見たい時に見ておくのが、なによりも大切だろう。

鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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