【3月16日廃止】地元出資で貨車駅舎から改築された駅 宗谷本線 恩根内駅(北海道中川郡美深町)
今月12日、宗谷本線の恩根内駅が廃止になることが報じられた。JR北海道は一日平均乗車人員が3人以下の各駅を廃止または自治体移管する方針を示しており、その一環として他の4駅と共に廃止となる。恩根内駅については6月にも地元自治会がJRからの廃止提案を受け入れたことが名寄新聞と北海道新聞で報じられていた。
恩根内駅は明治44(1911)年11月3日開業。昭和61(1986)年11月1日の無人化の際に棒線化され、駅舎もほどなくヨ3500形車掌車を転用した貨車駅舎に改築された。宗谷本線では同時期に智東、智恵文、紋穂内、筬島、歌内、問寒別、安牛、上幌延、下沼、芦川、勇知の11駅が貨車駅舎に改築されている。しかし、恩根内駅の場合は「地域の玄関口が簡素な貨車駅舎ではあんまりだ」との地域住民の声を受け、地元負担で平成5(1993)年に現在の駅舎に改築された。小さいながらも洗面台完備の便所付きのしっかりとした駅舎で、特急も停まらない小駅の駅舎としては破格の設備である。
宗谷本線では令和3(2021)年3月13日のダイヤ改正で11駅が廃止となった。この時、恩根内駅の両隣の紋穂内駅と豊清水駅も廃止となっている。恩根内駅もこの時、廃止が検討されていたが、地元から存続を求める声が上がり、美深町の維持費用負担と地元の除雪引き受けを条件に存続することになった。
こうして一度は廃止を免れた恩根内駅だったが、一日平均乗車人員が一人以下という状況が続き、駅構内の広さゆえに除雪作業の負担も大きいことから、地元自治会は「廃止もやむを得ない」との意向を美深町に伝えていた。
恩根内駅に停車する列車は上り名寄方面が5本、下り音威子府方面が4本。一方、恩根内駅前と名寄を結ぶ名士バス恩根内線は朝7時から夕方18時30分まで一日7本がある。列車よりもバスの方が本数が多く、こまめに需要を拾えて便利だという現状も地元が廃止に合意した理由の一つだろう。
美深町内を走る宗谷本線には近年まで南美深、美深、初野、恩根内、紋穂内、豊清水の6駅があった。このうち南美深、紋穂内、豊清水の3駅は令和3(2021)年3月13日廃止。初野と恩根内も令和6(2024)年3月16日に廃止になることで、残る駅は美深駅ただ一つのみになる。美深町の玄関口で、町の中心にある美深駅は特急も停まる比較的大きな駅だ。わずか3年のうちに町内の駅数が6駅から1駅にという状況が、宗谷本線を取り巻く厳しい状況を改めて感じさせてくれる。
112年5カ月の長きに渡って地域の玄関口であり続けた恩根内駅。駅としての歴史は3月16日で途絶えてしまうことになるが、美深町の所有である駅舎については今後もバス待合室として残るかもしれない。無人駅とは思えないほど美しく保たれた駅舎から地元住民の愛が伝わってくる駅だっただけにその廃止が惜しまれる。
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