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風見鶏のある赤い屋根の木造駅舎 富士山麓電気鉄道 富士急行線 三つ峠駅(山梨県南都留郡西桂町)

清水要鉄道・旅行ライター
三つ峠駅

 奈良時代より修験道の聖地であり、富士山を望む絶景で知られる山梨県の三つ峠山。その登山口にある駅は、その名もずばり「三つ峠」駅だ。南都留郡西桂町の玄関口でもあり、町内にある唯一の駅である。

駅舎
駅舎

 三つ峠駅は昭和4(1929)年6月19日、「小沼(おぬま)」駅として開業。昭和18(1943)年9月20日に「三つ峠」に改称された。旧称の「小沼」は、明治8(1875)年1月の都留郡桂村成立まで当地にあった都留郡小沼村に由来する。都留郡桂村は、郡の再編で南都留郡桂村となったのち、明治26(1893)年6月3日に分割されて、西桂村と東桂村になった。片割れの東桂村は昭和29(1954)年4月29日の合併で都留市となっているが、今も富士急行線の駅名にその名を留めている。

富士山が見える駅前
富士山が見える駅前

 三つ峠駅の駅舎は開業時のもので、築95年。風見鶏が載った赤屋根・白壁の洋風駅舎は、まるで絵本の中から飛び出してきたかのようにかわいらしい意匠で、CMやドラマのロケに使われることも多い。昨年10月からは駅舎の向かって右側部分(委託駅員の住居だった)を解体して休憩施設が建設されるリニューアル工事が行われ、今年5月1日に完成した。塗り直された駅舎はその齢を感じさせない新築同然の美しい姿を取り戻しており、増改築された部分も屋根の高さや色合いを合わせているため違和感なく仕上がっている。

改札口
改札口

 駅舎の内部も往時の姿を色濃く残している。無人化により使われなくなった改札窓口もそのままで、「観賞用に開放」という珍しい注意書きがある。富士急行線はほとんどの駅が無人駅である一方で列車には車掌が乗務しているため、無人駅から乗車の場合、きっぷは車内で買うのが一般的だ。ワンマンカーが当たり前のローカル私鉄では今時珍しい光景である。

改札ラッチ
改札ラッチ

 改札口にはかつて使われていたラッチも残る。自動改札機の普及以前、駅員が中に立って改札を行っていたラッチも、今では無人化や駅の建替えなどによりあまり目にしなくなった。三つ峠駅に残っているのは石造りの重厚なもので、かつてはIC簡易改札機の位置にもう一台あったが、Suica導入に際して撤去されたようだ。

ホーム
ホーム

 構内踏切の先にあるホームは島式1面2線。晴れていればホームからは雄大な富士山を望むことができる。ホーム上のモニュメントは三つ峠の登山口にある「達磨石」のレプリカだ。ホームの隣にはかつて貨物ホームだった側線があり、現在は替えの枕木や砂利などが置かれ、保線用に使われている様子。

南都留郡西桂町役場
南都留郡西桂町役場

 西桂町の役場は駅から百数十メートルのところにある。今年5月7日に開庁したばかりの新庁舎は町産のスギやアカマツを使用したもので、そのデザインから想像できるように世界的建築家・隈研吾氏も設計に携わっている。隣には昭和45(1970)年に建てられた旧庁舎が残っているが、こちらはいずれ解体されるのであろう。

駅舎と休憩施設(右)
駅舎と休憩施設(右)

 リニューアルによって美しく生まれ変わった三つ峠駅の木造駅舎。首都圏からも比較的近く行きやすいところなので、冬のお出かけ先として富士急行線で訪れてみるのはいかがだろうか。

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鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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