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地元自治会が廃止受け入れ 一度は廃止が撤回されたものの… 宗谷本線 恩根内駅(北海道中川郡美深町)

清水要鉄道・旅行ライター

中川郡美深町にある恩根内駅について、地元自治会が廃止を受け入れたことが名寄新聞と北海道新聞で報じられた。JR北海道は一日平均乗車人員が3人以下の無人駅について廃止の方針を示しており、美深町内では初野駅と恩根内駅がその対象となっていた。

駅名標と駅舎
駅名標と駅舎

宗谷本線では令和3(2021)年3月13日のダイヤ改正で11駅が廃止となった。この「大量廃止」に際しては恩根内駅も対象に上がっていたものの、地元から存続を求める声が上がったことから、美深町の維持費用負担と地元の除雪引き受けを条件に存続することになっていた。町が今年度、初野駅の維持のために計上した予算は173万3千円で、その内訳は恩根内自治会への管理業務委託料34万8千円、JRへの維持管理負担金124万1千円、光熱水費12万9千円、し尿汲み取り料1万5千円となっている。

ホーム
ホーム

恩根内駅の一日平均乗車人員は、平成30(2018)年に1.6人、令和元(2019)年に0.8人、令和2(2020)年に0.2人、令和3(2021)年に0人であった。駅構内の広さゆえに除雪作業の負担も大きく、地元自治会は「廃止もやむを得ない」と町に伝えていた。廃止が確定したわけではないが、町は駅の存廃について7月末までにJRと協議する方針を示している。

駅舎(ホーム側)
駅舎(ホーム側)

恩根内駅は明治44(1911)年11月3日に名寄から伸びてきた天塩線の終点として開業。大正元(1912)年11月5日の音威子府延伸で途中駅となった。駅前には恩根内の集落が形成されており、郵便局や公民館もある。駅前には名寄とを結ぶ名士バス恩根内線の終点のバス停があり、朝7時から夕方18時30分まで一日7本のバスが発着している。また、美深町中心部との間ではスクールバスも運行されている。

旧貨車駅舎(移設)
旧貨車駅舎(移設)

駅は昭和61(1986)年11月1日の無人化の際に棒線化され、駅舎もまもなくヨ3500形車掌車を転用した貨車駅舎に改築されている。しかし、「地域の玄関口が簡素な貨車駅舎ではあんまりだ」と地域住民が自治会に掛け合った結果、美深町の負担で平成5(1993)年に現在の駅舎に改築されることになった。お役御免になった貨車駅舎の方は駅近くの工場に移設されて物置として使われていたが、工場の閉鎖により放置状態だ。

駅舎内
駅舎内

地元の手によって建てられた駅舎は無人駅としてはちゃんとした設備を備えたもので、内部は地域住民の手によって綺麗に保たれている。トイレは洗面台完備で、手を洗えないボットン便所がデフォルトの他の無人駅とは比ぶべくもない。

恩根内に停車する音威子府行き(※写真のキハ40は引退済み)
恩根内に停車する音威子府行き(※写真のキハ40は引退済み)

恩根内駅に停車する列車は上り名寄・旭川方面が7:00、8:05、13:33、18:16、21:08の5本、下り音威子府・稚内方面が8:38、15:44、17:22、20:27の4本だ。列車の方が遅くまで走っているものの、美深・名寄方面へはバスの方が本数も多く便利である。集落がありながら恩根内駅の利用者が少ないのは、車社会に加えてバスの方が便利だということも影響しているだろう。

駅遠景
駅遠景

恩根内駅の廃止についてはまだ確定していないが、仮に来春ダイヤ改正で廃止となれば、112年5カ月の歴史に幕を下ろすことになる。廃止危機を一度は乗り越えた恩根内駅だが、今回の危機を乗り越えることは難しいだろう。

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鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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