緊急避難施設との合築駅舎に建て替えへ 築43年の簡易駅舎 伯備線 備中広瀬駅(岡山県高梁市)
岡山県の倉敷駅と鳥取県の伯耆大山駅を結び、岡山と伯耆・出雲を結ぶ主要路線として特急「やくも」も走る伯備線。昔ながらの木造駅舎も多く残る一方で、昭和50年代に改築された簡易駅舎も多くみられる。そんな簡易駅舎の中からこの度、一駅が建て替えられることになった。備中高梁駅の一つ手前にある備中広瀬(びっちゅうひろせ)駅だ。
備中広瀬駅は大正15(1926)年6月20日、伯備南線が美袋(みなぎ)から木野山まで延伸した際に開業した。当時の所在地は上房郡松山村で、昭和4(1929)年5月10日の合併で高梁町となり、昭和29(1954)年5月1日の合併で高梁市となっている。駅名の由来は駅がある地区の地名で、宮崎県北那珂郡広瀬村(現:宮崎市)の日豊本線広瀬駅(現:佐土原駅)と区別するために国名の「備中」が冠された。
備中広瀬駅は昭和46(1971)年10月1日に無人化、駅舎は昭和56(1981)年10月に簡易駅舎に改築された。周辺では豪渓駅、木野山駅、備中川面駅も同時期に簡易駅舎に改築されているが、他の3駅は屋根が山型なのに対し、備中広瀬駅のみ屋根が平たい。駅舎の隣には駅舎と似た形の便所があったが、平成30(2018)年7月豪雨の影響で排水設備が故障して閉鎖された。
ホームは相対式2面2線で、駅舎側の1番のりばが倉敷・岡山方面、反対側の2番のりばが備中高梁・新見・米子方面となっている。駅裏には国道180号線が通っているが、そちら側に出口はない。国道の向こうには高梁川が流れており、度々氾濫しては広瀬地区に大きな被害をもたらしてきた。
備中広瀬駅の駅舎建て替えは、高梁市が行う「広瀬地区緊急避難施設整備事業」によるものだ。平成30(2018)年7月5日から7日にかけて西日本を襲った豪雨により高梁市は大きな被害を受けたが、特に被害が大きかったのが広瀬地区で、23世帯中17世帯が家屋半壊以上の被害を受けた。また、地区の集会所が土砂災害警戒区域にあるため、地区内に安全な避難設備がなく、災害時は5キロ離れた高梁市街の避難施設を使わなければならない。
平成30年豪雨の際は避難経路として使われるべき国道180号の冠水により17人が取り残され、自衛隊及び消防署による救出が行われた。避難施設の建設はこれらの事情を踏まえたもので、2階建ての施設の1階を駅舎とし、2階を避難施設とする予定だ。平常時は集会所などとして使われる想定だという。現在、駅舎の東隣に仮駅舎を整備中で、仮駅舎への移行後に駅舎を解体して避難施設を建設することになるのだろう。今年で築43年の簡易駅舎もまもなく見納めだ。
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