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2023年に私が書いた知財ニュース記事アクセス数トップ10

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:イメージマート)

あけましておめでとうございます。2023年にYahoo!ニュースエキスパートに投稿した私の記事のアクセス数トップ10をまとめてみました。

なお、私のコア分野(情報通信技術関連、商標関連)中心に取り上げていますし、本業が忙しくなると投稿も滞りがちになりますし、アクセス数も内容の一般的注目度と記事公開のタイミング(およびタイトルの「釣り度」)に大きく左右されますので、2023年の知財に関する重要ニュースが網羅的にカバーされているわけではありません。

1. 何故FENDIのはぎれを売ると書類送検されてしまうのか?(2023-03-05)

DAISOがFENDI(本物)の工場で不用になったマーク入りのハギレを販売したことで担当者が商標権侵害罪で書類送検されてしまったという事件です。いわゆるブランド品の改造品と同じパターンの商標権侵害事件でした(この手のケース、非専門家だと「元は本物なのだから大丈夫」とつい判断してしまいがちだと思います)。故意性は微妙なので、刑事事件化すべき案件だったのかという気はします。その後、不起訴になっています。

2. MetaそしてMicrosoftが既に米国でXを商標登録済(2023-07-25)

社名変更にあたり1年近く前からと着々と準備を重ねてきたと思われるMeta (Facebook) とは対照的に、行き当たりばったりで決めたとしか思えないツイッターのX(めちゃくちゃかぶりそうな名前)への社名(ブランド)変更がもたらした商標権関連問題の1つに関する記事です。ツイッター社知財部は頭を抱えたことでしょう。

3. トムブラウンとの訴訟に見るアディダスの3本線商標への強気な姿勢について(2023-01-21)

アディダスが(お笑いではない方の)トムブラウンによる4本線商標の使用に対して商標権侵害で訴え、敗訴したという話です。記事公開後、アディダスは控訴し、また別の訴訟も提起したようです(何か動きがあったら記事化します)。

記事中でも紹介していますが、一般に、欧米の著名ブランド企業による強気の知財権利行使は通常運転です。大目に見ていたりすると権利保護の意思なしとみなされ、肝心な時に権利行使しにくくなってしまうからです。

同様のケースで、「モンスター」を含む言葉が商標登録出願されると必ず異議申立してくるモンスターエナジー社について「"モンスター警察"モンスターエナジー社の日本での異議申立の履歴について」という記事を書いています(2023年04月06日)が、こちらはアクセス数11位です。なお、「モンスター警察」とちょっと茶化した書き方(釣りタイトル)をしていますが、モンスター社の姿勢を非難・揶揄する意図はまったくありません。

4. コナミが対サイゲームスの訴訟で使用した(と思われる)特許の分析(2023-05-18)

ウマ娘に関する特許権侵害訴訟の話です。特許番号が報道発表からはわからないので推測で書いていますがたぶん当たってると思います。なお、この記事の後に、訴状を閲覧しに知財高裁まで行ったのですが(裁判官による資料の持ち出しのため)空振りで終わっています。

5. 起業にも結び付いた小6女子の特許発明について(2023-05-08)

個人的にお気に入りの記事です。子供でも安心してイヤリングを付けられるようにしたいという課題を、具体的構成によって解決し、商品化までしたという特許のお手本のような流れだからです。

6. 「おじいちゃんのノート」対コクヨの特許問題について(2023-12-11)

大部前にカバーした水平に開くノートの特許に関する記事です。同様の製品がコクヨから販売されてしまったことに対して発明者の方(「おじいちゃん」)がしたツイートが話題を呼んでいるという話です。この「おじいちゃん」に対して「被害者ムーブ」と批判するネット世論があるようですが、私はそう思ってはおらず、記事中でも意識的にそのような書き方を避けている点にご注意下さい。「特許を取っても万全ではないのだなあ」とぼやいているような話だと思います。記事にも書きましたが文房具は個人的こだわりが強い商品なので、安いから、あるいは、機能的に優れているからと言って誰もがスイッチするわけではないので商機は十分にあるのではと思います。

7. 林家木久蔵ラーメンに関するゴタゴタについて(2023-09-10)

商標登録の更新を怠って商標権が消滅しているのにライセンス料を払う義務があるかという点についての争いの話です。代理人が付いているにもかかわらず、商標権更新がされなかった理由は謎です。

8. ラーメンチェーンAFURIがジャンル違いの清酒メーカーに商標権侵害訴訟(2023-08-24)

ありましたねー。思ったよりアクセス数が伸びなかったです(記事公開のタイミングの問題でしょうか?)。原告・被告共にネットで代理人を介さず本人が「お気持ち」を表明してしまったのでちょっとややこしい事態になってしまいました。

なお、記事公開時点では、AFURIの日本酒における使用実績に多少の疑義があったのでそのような書き方になっていますが、その後、OEMで(おそらくは海外のAFURI店舗向けに)国内で日本酒を生産していたことが明らかになっているので不使用に関する争点はないと思います。

9. イーロンマスクは X を商標登録できるのか?(2023-07-24)

先の記事と同じく、行き当たりばったり(としか思えない)ブランド変更が産んだ問題のお話です。

10. 氷川きよしさんは所属事務所によるKiinaの商標登録を阻止できるのか?(2023-08-30)

事実関係は確定ではないのですが、氷川さんの独立を阻止するために、その愛称"Kiina"を事務所が商標登録出願したのではという話です。もし、"Kiina"が氷川きよしさんの著名な芸名(またはその略称)と判断されれば、商標法4条1項8号に基づき、氷川きよしさん本人の承諾書がないと登録されませんので、事務所が氷川さんの意思に反して商標登録することは不可能になります。ところで、当該出願は、5月18日の出願なのですが、本日(2024年元日)時点でまだ審査は始まっていません。

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また、知財関連のニュースというと、企業知財部を舞台にしたテレビドラマ「それってパクリじゃないですか?」がありました。地味な企業知財の素材を法律的な破綻もなく、うまく「お仕事ドラマ」化できていたと思いますが、視聴率的には厳しかったので、やはり知財で一般視聴者の興味を引くのは難しいのだなと思いました。

これについて「ぼくがかんがえたすうじのとれるちざいドラマ」という記事を(ちょっとYahoo!ニュースに書くのはそぐわないので)事務所ブログの方に書いています。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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