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甲斐拓也や大山悠輔は巨人で活躍できるのか FAで巨人入りした野手の翌年は……

横尾弘一野球ジャーナリスト
日本代表でも活躍する甲斐拓也(右)、阪神の主砲・大山悠輔は巨人を選ぶべきか。(写真:CTK Photo/アフロ)

 今年度のフリー・エージェント(FA)宣言選手が11月14日に日本野球機構(NPB)から公示された。

 海外FA宣言選手が菅野智之(巨人)と九里亜蓮(広島)の2人。国内FA宣言選手は大山悠輔、原口文仁(ともに阪神)、福谷浩司、木下拓哉(ともに中日)、石川柊太、甲斐拓也(ともに福岡ソフトバンク)、茂木栄五郎(東北楽天)の7人だ。

 どの球団でも戦力にしたいであろう魅力的な選手ばかりだが、中でも12年も日本一から遠ざかっている巨人が甲斐、大山に加えて石川のトリプル補強を目論んでいると伝えられている。では、日本代表でも実績のある司令塔・甲斐、また阪神の主砲・大山は巨人を選ぶべきなのか分析する。

 過去にFAで巨人へ移籍した野手は、以下の14人だ。

【フリー・エージェントで巨人へ移籍した野手の移籍前後の成績】
【フリー・エージェントで巨人へ移籍した野手の移籍前後の成績】

 1993年のFA第1号だった落合博満から村田修一までの6人は、打線の軸と期待されるスラッガーが並ぶ。移籍した年齢は、落合の40歳は例外として、ほぼ30歳前半。技術面でも精神的にも最も脂が乗ると言われる時期に巨人のユニフォームを着ている。そして、移籍前年と巨人1年目の成績を比較すると、大きくは変化していない。つまり、期待通りの働きはできているということだ。

 阪神の四番に座り、今年で30歳になった大山は、まさにこの部類だ。入団2年目から7年連続で2ケタ本塁打を放ち、昨年は全143試合で四番を務め、38年ぶりの日本一に貢献した。ただ、今季は6月初旬に6年ぶりのファーム落ちを経験するなどやや苦しみ、130試合で打率.259、14本塁打68打点と2019年以降では最低水準の数字に終わっている。それでも、「東京ドームを本拠地にすれば30本塁打はいくだろう」という声もあり、打線強化を目指す埼玉西武も獲得に前向きだったが、巨人が5年以上の大型契約を提示すると伝えられると手を引いた様子。もちろん、阪神も全力で引き留めるはずだ。

 また、巨人が大山を獲得できれば、当然ファーストのポジションを空けるだろう。そうなると、サードには坂本勇人がいるのだから、岡本和真をレフトで起用することになるか。

「他球団の評価を聞きたい」という気持ちを尊重して宣言残留も認める

 一方、甲斐のケースは2014年の相川亮二や2018年の炭谷銀仁朗が参考になるか。相川は38歳、炭谷は31歳だったが、若手捕手の台頭で出場機会が減り、「もう一度、勝負がしたい」とFA宣言した。32歳の甲斐はバリバリの正捕手であるものの、シーズン中から巨人が獲得の調査をしていると噂されていた。そして、福岡ソフトバンクからも巨人からも好条件を提示されているようで、何を決め手に選ぶのかが注目されている。

 巨人の捕手は、ファーストと併用される大城卓三がFA宣言せずに残留し、28歳の岸田行倫、35歳のベテラン・小林誠司と強者揃い。23歳の山瀬慎之助も伸びている。甲斐がその中に飛び込み、正捕手として活躍する姿は想像できるが、ケガがつきもののポジションで投手との相性もある。どんな環境に身を置くことが刺激になるのかは、甲斐自身にしかわからないだろう。ただ、「あれが入るの?」という本塁打を量産してしまう東京ドームを本拠地にする捕手には、想像以上の苦労があるはずだ。

 大山、甲斐ともに、一度しかない野球人生で後悔をしないよう、他球団の評価を聞ける機会を有効に使いたいというのがFA宣言の目的であり、宣言残留も認められている。もちろん、契約である以上、これまでプレーしてきた“住み心地”よりも今後の年俸や契約年数にこだわるのも理解できる。

 では、大山は阪神、甲斐は福岡ソフトバンクに残るのか、それとも巨人、あるいは他球団への移籍を選ぶのか。いずれにしても、巨人といういい意味でもそうでない部分でも注目される環境に挑むのかがポイントになる。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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