MetaそしてMicrosoftが既に米国でXを商標登録済
昨日の記事「イーロンマスクは X を商標登録できるのか?」では、イーロンマスク氏がツイッターの新ブランドとしてXという、単純かつありがちな名前を選択してしてしまったために、各国での商標登録出願に苦労するのではないと書きました。
さっそく、Business Insiderには、”Meta already appears to hold the rights to 'X.' It could make Twitter's rebrand complicated.”(Metaが既に'X'の権利を保有、ツイッターブランド変更に影響を及ぼすか)といった記事が載っています。問題の米国商標登録は5777374号です。2018年9月18日(まだFacebookだった時代)に登録されています。指定商品・役務はコンピューターソフトウェア、インターネット、エンタテインメント等々関連です。願書には2017年5月28日に最初に商用使用されたと書いてあります(原則的に米国の商標登録では商標を実際に使用していることが求められます)が、現時点で画像サーチしても見つかりません。いずれにせよ、商品・役務はかぶっているものの、元ツイッターのXのロゴとは外観が大きく異なるので、商標登録可能性においても商標権侵害においても影響はないでしょう。
さて、マイクロソフトも、Xの1文字を商標登録しています(明らかにXbox関係でしょう)。登録番号は5163578号、登録は2003年3月4日です。書類上は標準文字ではないのですが限りなく標準文字に近いです。つい先日に更新されましたので、マイクロソフトの権利維持の意思は強そうです。指定商品は、ゲームに関するチャットサービスやオンラインゲームの提供などゲームに限定したものになっていますので、旧ツイッターとは直接的にかぶることはありません。なお、指定商品・役務の類似については、類似群というコードによって原則機械的に判断される日本とは異なり、米国では消費者が混乱するかどうかを基準に個別判断されますので、このケースでは混乱のおそれなし(ゆえに元ツイッターのXの登録の拒絶理由にはならない)とされる可能性が高いと思います。
ということで、現在のツイッターの利用範囲内で考えればおそらく問題はないと思われるのですが、今後、マスク氏はXをスーパーアプリとして、金融サービスを含む様々な用途向けに拡張していく意向であるそうです。そうなってくると、商標登録において今後も問題が起きる可能性はかなり高いです。Xという単純かつありがちな商標を選んでしまったことの当然の帰結です。ただ、マスク氏の場合、「商標登録なんかしなくていい、必要があれば金で買い取る」「やっぱツイッターに戻しますわ」等々、どんなシナリオになっても驚きませんが。