「モンスター警察」モンスターエナジー社の日本での異議申立の履歴について
価値の高いブランドの商標権を所有する企業が、権利保護のための活動に積極的になるのは当然です。権利の行使を怠っていると肝心な時に権利行使ができなくなるリスクがありますので、多少無理筋と思っても異議申立や訴訟などを積極的に行うことは重要です。
しかし、このような権利保護の活動もやり過ぎると、法律論の話以前に消費者の反発を買うリスクがあることに注意が必要です。独アディダスが3本線商標についてかなり強気で「3本線警察」ぶりを発揮していることについては先日書きました。
昨日には「"Monster"は誰のもの?インディーデベロッパーが"モンエナ"商標権侵害で訴訟される…『Dark Deception: Monsters & Mortals』開発元は徹底抗戦の構え」というニュースがありました。エナジードリンクのモンスターエナジーで有名なMonster Beverage社が米国でやや積極的過ぎる商標権行使をしているというお話です。これについては別途触れるとして、同社の日本での状況を見てみましょう。
日本においても、モンスター社は頻繁に他社商標登録への異議申立を行っており、「モンスター」あるいは”MONSTER”という単語を含む商標を出願するとほぼ確実に異議申立が行われる状態になっていたのは私も含め知財業界の多くの人が認識していたと思います。この機会に調べてみました。
特許情報プラットフォームで「モンスターエナジーカンパニー」を請求人にした異議申立の件数を調べると117件ありました(ロゴの類似や「モンスター」以外の言葉に関する異議申立も含みます)。その中には、ミクシィの「モンスターストライク」「モンスト」や任天堂の「ポケットモンスター」も含まれています(モンスターが出てくるゲームの商標に「モンスター」という言葉を使うなというのはちょっと無理筋ではと思います)。そして、今までに異議が認められたものはありません。0勝117敗です。
企業間の対立構造となる侵害訴訟や無効審判とは異なり、商標登録への異議申立は特許庁に対する審査の見直しの請求であり、あくまでも申立人(この場合はモンスターエナジー社)と特許庁の間で話が進みます。極端な場合、商標権者は関与しなくても話が進みますので商標権者いじめという要素は薄いです。そして、上述のとおり、多少無理筋でも自らの権利を守る姿勢を取ることは重要です。ということで、同社の姿勢を批判する理由はないのですが、正直、何かすごいと思わざるを得ません。