Zoom(音楽用電子機器)対Zoom(ビデオ会議)の商標権争いの現状について(3)
ビデオ会議サービスプロバイダーのZoom Video Communications, Inc. (以下、米Zoom Video社)と日本の音響電子機器メーカーの株式会社ズーム(以下、ズーム社)の商標権の争いについては、今までにも書いてきました(過去記事1、過去記事2)。ズーム社が米Zoom Video社に対して提起した商標権侵害訴訟については動きがわかりませんが、その前提となる商標登録についてはある程度の情報を得ることができます。
10月31日、知財高裁において、ズーム社に有利な判決がありました(判決文)。原告は米Zoom Video社と株式会社トンボ鉛筆、被告は有限会社パームという会社でズーム社が補助参加しています(前回の記事ではパーム社はズーム社のダミーではと(断定を避けて)書きましたが、やはりダミーだったということでしょう)。
この裁判は、パーム社がトンボ鉛筆のZOOM商標登録(4363622号)の「電子計算機、電子計算機用プログラム、電子式卓上計算機」(9類)について請求した不使用取消の取消審決を取り消すための(ややこしいですが、取消を取り消して登録状態を維持することを求める)訴訟です。トンボ鉛筆のZOOMはハイエンドの筆記具の歴史あるブランドですが、筆記具(16類)での使用は明白であるものの、9類のコンピューター関係で使用されているかどうかが争点となります。
米Zoom Video社は、対ズーム社の訴訟対策としてZOOM商標の指定商品「電子計算機用プログラム」(9類)の部分をトンボ鉛筆から分割譲渡してもらっていますので、不使用取消で取り消されるとせっかく苦労して(おそらくはそれなりの対価を支払って)獲得した商標権が無駄になってしまいます。
米Zoom Video社とトンボ鉛筆側は、ペンのお尻に付けてスタイラスとして使用できるアタッチメント(タイトル画像参照)をZOOMブランドで販売していることを電子計算機(周辺機器)での使用であると主張しましたが、知財高裁は、それは電子計算機としての使用にあたらない(「”電子計算機”は、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素として含む」ものである)と判断しました。この商標権を無事ゲットできていれば、米Zoom Video社は侵害訴訟で圧倒的に有利でしたが、それはかないませんでした(最高裁に上告という道も残されていますがかなりの無理筋です)。
これで、侵害訴訟の方も先に進むことになるのでしょうか?