【4月1日廃止】山間の交換駅に残る国鉄闘争の名残 根室本線 金山駅(北海道空知郡南富良野町)
根室本線で富良野から4駅、南富良野町の西部にあるのが金山(かなやま)駅だ。名古屋にある金山駅と区別するため、乗車券では「(根)金山」と表記される。全国に3つある金山駅の中で最も古く、明治33(1900)年12月2日の開業以来123年の歴史を持つが、来年4月1日で廃止予定だ。
金山の地名はこの地を流れる十梨別(トナシベツ)川や空知川で砂金が採れたことに由来する。明治24(1891)年、日高山脈を越えてきた砂金採りの人々が入植したのがこの地の開拓の始まりで、南富良野町の開基とされている。
駅舎は昭和9(1934)年10月に建てられたもので、築89年。ホーム側の方が長い「招き屋根」と呼ばれる造りだ。入口の車寄せが左端に寄っているので、正面からよりは左前からの方がバランスよく写すことができる。
駅舎内には窓口跡が板で塞がれながらも残っている。無人化は昭和61(1986)年11月1日だ。周辺駅と比べると駅舎内の掲示や装飾は少なく、素っ気ない印象を受けるが、ごみ一つ落ちていない待合室は清潔で気持ちがいい。
ホームは相対式2面2線。かつては道央と道東を結ぶ大動脈だったため、ホームの有効長は長い。山間の交換駅という雰囲気は留萌本線の峠下駅を思い出させる。
ホーム上には明治44(1911)年に建てられた赤煉瓦造りのランプ小屋が残されている。明治時代の列車で車内照明に使われていた灯油ランプやその燃料を保管するためのもので、2つ隣の山部駅にも現存している。
ランプ小屋の側面には掠れた白い文字が残っていた。「反動支区長追放 マル生粉砕 72春斗勝利 斗争勝利」と読み取ることができ、昭和40年代に激化した国鉄闘争の時に書かれたもののようだ。「マル生」とは国鉄が行った生産性向上運動のことで、これに反対する労組が車両にスローガンを大書して走らせる光景なども見られた。
ランプ小屋の隣に建つ2階建ての建物は金山保線管理室として使われていたもので、その壁にも「スト支援」の文字が残っている。反マル生運動に勝利した労組側が「スト権スト」と称してストライキを度々実施。列車の遅延や運休が相次ぎ、これに対する乗客の不満が首都圏国電暴動や上尾事件に繋がっていく。国鉄闘争は、国鉄へのノスタルジックな回想ではあまり語られることのない「負の歴史」だが、半世紀が経つというのにその名残がこうして消されずに残っているというのは奇跡と言っていいだろう。メインルートから外れた駅だったからこそ残ることができたとも言えるかもしれない。
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