ダムに沈んだ旧駅と未舗装道の先の廃駅 根室本線 鹿越仮乗降場(北海道空知郡南富良野町)
来年4月1日で廃止となる根室本線の富良野~新得間には途中駅が7つあるが、かつては金山~東鹿越間にもう一つ駅があった。その名も「鹿越(しかごえ)」、金山ダム建設に伴う線路付け替えに翻弄された駅だった。今では隣駅「東鹿越」だけがその名を留めている。
鹿越駅は明治33(1900)年12月2日、北海道官設鉄道空知線の終点として開業。明治34(1901)年9月3日の落合延伸までは、十勝を目指す入植者たちの下車駅であった。駅前には集落も形成され、隣に東鹿越信号場(現:東鹿越駅)が開業するまでは、馬車軌道から積み替えて石灰石の出荷も行われていた。そんな鹿越駅だが、金山ダム建設に伴う線路付け替えで昭和41(1966)年9月29日に移転。移転前は正式な駅だったが、移転と同時に信号場に降格して「鹿越信号場」となっている。ただし、仮乗降場として旅客扱いは継続された。昭和42(1967)年3月31日、金山ダムが完成。移転前の旧駅跡は集落261世帯と共にかなやま湖の底に水没した。
移転により誕生した鹿越信号場だが、石勝線開通によって根室本線の本数が減ると昭和57(1982)年10月15日に廃止。以降は鹿越仮乗降場として存続したが、昭和61(1986)年11月1日についに廃止された。その駅跡は未舗装道の先にある森の中で、熊も出没するようなところだ。
駅跡への道は保線関係者などに利用されているようだが、悪路なので走行には注意が必要だ。未舗装道を約3.1キロ走ったところにあるのが鹿越仮乗降場跡だが、周辺に人の気配はなく今にも熊が出そうな雰囲気である。
鹿越仮乗降場跡には今も建物が残っている。詳細は不明だが、信号設備か保線関係の建物だろう。信号場としての現役当時は板張りのいわゆる「朝礼台」ホームがあり、ポイント部分にはスノーシェッドが架けられていたそうだ。今ではすべて撤去されてしまい、往時を想像するのは難しい。
鹿越仮乗降場の廃止は昭和61(1986)年11月1日。37年の月日を経て路線そのものもまもなくその長い歴史に幕を下ろす。危険が多い場所なので鹿越仮乗降場跡の訪問はあまりお勧めできないが、お名残乗車の際は鹿越仮乗降場跡の通過の際に車窓に注意を払って見てほしい。東鹿越方面行きなら右側、富良野方面行きなら左側に一瞬、仮乗降場跡の建物が見えるはずだ。
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