【4月1日廃止】東大演習林からの積み出しで栄えた駅 根室本線 下金山駅(北海道空知郡南富良野町)
根室本線で富良野から3駅、富良野市から空知郡南富良野町へ入ってすぐのところにあるのが下金山(しもかなやま)駅だ。駅名は金山駅よりも空知川の下流に位置することに由来する。開業は大正2(1913)年2月1日、駅設置運動の中心人物だった清水権兵衛が経営する「清水農場」の敷地内に開業した。下金山は清水農場と鶴谷農場という二つの農場を中心に開拓が進められた集落で、埼玉県北埼玉郡種足(たなだれ)村(現:加須市)から入植した清水寿棟が明治39(1906)年11月より開拓を始めたことに由来する。駅の開業後、駅前には小市街が形成され、下金山地区および隣接する山部村(現:富良野市)西達布地区の農産物および木材の積み出し拠点として賑わいを見せた。西達布には東京帝国大学の演習林があり、森林軌道が原木を下金山駅まで搬出していた。森林軌道は沿線住民の便宜のために旅客輸送と農作物・生活必需品の輸送も行っていたそうだ。戦後、道路整備が進むと、木材の輸送手段はトラックに移り、西達布森林軌道も昭和27(1952)年に廃止されている。
現在の下金山駅には残念ながら木材の積み出し拠点として栄えた往時を偲ばせるものはない。昭和57(1982)年11月15日に無人化されており、駅舎は翌58(1983)年に建て替えられた。昭和14(1939)年12月29日に駅舎を滝川寄りに200m移転したとの記録があるので、現駅舎は開業時のものから数えて3代目と思われる。
利用者数の少なさを示すかのように駅舎内は手狭だが、切符を売っていたと思われる窓口跡も残っている。無人化後に建てられた駅舎だが、簡易委託でその後も切符を売っていたのだろう。扉は駅舎の半分を占める事務室に通じているが、関係者以外は立入うことができず、施錠されている。
ホームは島式で、駅舎とは反対側の片面のみが使用されている。駅舎とホームの間にはかつて線路が敷かれていたと思われる空間があり、広い構内を使って森林軌道から国鉄の貨車へと木材の積み替えが行われていたのだろうと推測できる。かつては駅裏にも多くの側線があったようだ。
駅があるのは国道237号から分け入った坂道の突き当りで、集落の中心を見下ろす形になる。集落の中心からは南に外れており、駅周辺に人の気配は少ない。令和4(2022)年度の一日平均乗車人員はわずか3.6人だった。
国道237号沿いには簡易郵便局や喫茶店、農産物直売所があるが、南富良野町の中心・幾寅市街や帯広方面へ向かう車は国道38号を経由するので、交通量自体あまり多くない。南下すると金山市街を経て占冠村に至るルートで、集落内には占冠と富良野を結ぶ占冠村営バスも停車する。根室本線の本数は少ないが、占冠村営バスと上手く組み合わせれば効率よく巡ることもできるだろう。下金山駅が富良野~新得間の廃止に伴って廃駅となるまで5カ月ほどだ。
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