【4月1日廃止】北の国から此処に始る 人気ドラマに登場した駅舎 根室本線 布部駅(北海道富良野市)
昭和56(1981)年に放送されたフジテレビ系列の大ヒットドラマ『北の国から』。その第一回に登場した北海道の無人駅がもうすぐその長い歴史に幕を閉じようとしている。北海道富良野市にある布部(ぬのべ)駅だ。令和6(2024)年4月1日、根室本線の富良野~新得間の廃止に伴って廃止となる。
布部駅は昭和2(1927)年12月26日に開業。東京帝国大学北海道演習林および麓郷地区の森林資源開発を目的として、東京帝国大学などの請願により開業した駅だった。駅名はアイヌ語の「ヌモッペ(果実がある川)」に由来するとされ、かつては「ぬのっぺ」と発音されていたという。麓郷地区との間には森林軌道が敷かれ、当初は馬力で、後に機関車により木材輸送が行われていた。森林軌道は昭和22(1947)年頃に廃止されて、木材輸送はトラックに移行している。
駅舎は開業時のもので築96年。昭和57(1982)年11月15日の無人化後もあまり大きく手は加えられていない。『北の国から』の第一回が放送された昭和56(1981)年10月9日時点では既に無人化に向けての協議が行われているところだった。駅は無人になり、壁やドアなどの素材も変化しているが、全体の雰囲気はドラマに登場した42年前の姿からあまり変わっていない。ドラマ自体が完結して20年以上が経過した今も、作品のファンが時折訪れているようだ。駅の廃止が決まってからは、作品を知らない人たちも「せっかくだから廃止になる前に」と訪れているようで、筆者が10月に再訪した時も駅を撮影している観光客を数組見かけた。
ホームは島式1面2線で、駅舎との間に側線がある。ホームは駅舎側とは反対の2番乗り場しか使われておらず、使われていない線路は錆びて一部が草に覆われている。
ホームの背後には芦別岳、松籟山、布部岳と山並みが連なっていて美しい。この景色も布部駅がロケ地として選ばれた理由の一つだろう。駅の廃止後もこの山並みはいつまでも残るが、現役の駅や列車と組み合わせた写真を撮れるのもあと数か月だ。
駅舎の前には原作者・倉本聰氏の直筆による「北の国から 此処に始る」の看板が建てられている。この駅で物語が始まってから42年、主演の田中邦衛さんや地井武男さん、大滝秀治さんなど出演者も多くが過去の人となった。物語が始まった駅もまもなく消えるが、作品の中で永遠に生き続けるに違いない。廃止後も訪れる人はいるだろうから、できればロケセットと同じように保存してもらいたいところだ。
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