【4月1日廃止】廃止候補だったのに乗換駅として命拾い!?根室本線 東鹿越駅(北海道空知郡南富良野町)
来たる4月1日で廃止となる根室本線の富良野~新得間。そのうち東鹿越~新得間は代行バスによる運行が行われており、乗客は東鹿越駅で列車とバスを乗り換えることになる。乗換駅として重要な役目を担っている東鹿越駅だが、実は一度廃止候補になるも災害のおかげで命拾いしたという数奇な運命を持つ駅なのだ。
東鹿越駅は昭和16(1941)年12月29日、東鹿越信号場として開業。王子製紙が経営する石灰石鉱山から積み出しをするための専用線の分岐点で、鹿越駅(廃止)の東にあることから「東鹿越」と命名された。専用線の開業は太平洋戦争開戦によって製鉄用の石灰石の増産命令が政府から出されたことによるもので、単なる分岐点としての意味しか持たなかった信号場もやがて旅客扱いもするようになる。正式な駅に昇格したのは昭和21(1946)年3月1日で、鉱山関係者や地元住民が多く利用した。昇格にあたっては王子製紙から鉱山の経営を引き継いだ日鉄鉱業が駅舎、ホーム、駅員宿舎を国鉄に提供している。その後、東鹿越駅は石灰石の発送駅として半世紀に渡って賑わいを見せたが、平成9(1997)年3月22日に最後まで残った中斜里駅行きの貨物列車が運行を終了して無人化された。集落は金山ダム建設によって湖底に沈んでいたため駅周辺に人家は少なく、以降は凋落の一途を辿ることになる。
平成28(2016)年6月上旬には翌年3月ダイヤ改正での廃止する意向をJRが地元に伝えた。本来であれば東鹿越駅の歴史もここで終わるはずであったが、同年8月31日に北海道を襲った台風10号がこの駅の運命を変えることになる。根室本線は10月17日に当駅まで復旧を果たすが、その先は被害が甚大で復旧できなかったのだ。東鹿越駅は「仮の終着駅」かつ「バスとの乗換駅」として以降、7年以上に渡って重要な役目を担わされることになる。当然、平成29(2017)年3月での廃止は免れることになったが、元々利用者の少ない線区であったためにJRと地元との間では存廃をめぐって協議が続けられ、令和6(2024)年4月1日での廃止がついに決定した。
駅舎は昭和21(1946)年3月の昇格時に建てられたもので、築77年の古いものだ。内部はそれほど広くはなく、利用者数の少なさを示すかのように待合室のベンチは少ない。
窓口跡は板で塞がれており、駅ノートや本が置かれている。無人化は平成9(1997)年3月22日だ。鉄道ファンが持ち寄ったものが多いのは、バスとの乗換駅ゆえに訪れるファンが多いゆえだろう。
ホームは島式1面2線。富良野方面からの列車は2番線で折り返すため、1番線は使われていない。ホーム上には石灰石がモニュメントとして置かれている。駅裏にはかつて使用されていた側線があるものの、使われなくなってから四半世紀が過ぎて草に埋もれている。
石灰石鉱山からの積み出し駅として栄え、廃止候補となるも命拾いし、「仮の終着駅」となった東鹿越駅。それまでは鉄道ファンの中でもあまり注目されない駅だったのだが、列車の行き先としてその駅名を目にするようになってから知名度も急上昇した。数奇な運命を辿った駅と言えるが、その82年に渡る歴史もあと少しで終わりを迎える。お名残乗車の際は乗り換えの合間にでも東鹿越駅に注目してみてはいかがだろうか。
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