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令和7(2025)年の鉄道 注目ニュースは?

清水要鉄道・旅行ライター
夢洲延伸が予定される大阪メトロ中央線

 あけましておめでとうございます。

 万博会場の最寄り駅である夢洲駅までの大阪メトロ中央線の延伸、新京成電鉄と泉北高速鉄道のそれぞれの親会社と合併、広島電鉄駅前大橋線の開業が予定される令和7(2025)年。新年一本目の記事では、日本の鉄道について今年予定されているニュースを紹介していこう。

大阪メトロ中央線
大阪メトロ中央線

 まず1月19日には大阪メトロ中央線がコスモスクエア~夢洲間を延伸する。終点の夢洲駅は4月13日から10月13日まで開催される「大阪・関西万博」の会場最寄り駅で、そのアクセス路線としての意味合いも持つ。万博の閉幕後は、夢洲に建設中のIR(統合型リゾート)へのアクセス路線となる予定だ。大阪の地下鉄の新規開業は今里筋線以来19年ぶりとなる。

阪神5001形
阪神5001形

 2月には阪神5001形の引退が予定されている。昔ながらの塗装を纏った「青胴車」の最後の生き残りで、昭和52(1977)年に登場した。32両が製造されたが、現在は1編成4両を残すのみだ。

最後の青胴車・阪神5001形(2代目)、来年2月引退へ

宗谷本線 抜海駅
宗谷本線 抜海駅

 3月15日にはJRグループなどがダイヤ改正を実施する。これに伴い、越後線では上所駅(新潟市中央区)、日豊本線では仙厳園駅(鹿児島市)が開業する予定だ。一方、北海道では宗谷本線の抜海駅(稚内市)、南幌延駅雄信内駅(幌延町)、根室本線の東滝川駅(滝川市)、東根室駅(根室市)が廃止となる。日本最北の木造駅舎かつ秘境駅と、日本最東端の駅、鉄道ファンに人気の駅が廃止予定駅に含まれているため、例年よりも注目を集めそうだ。また、合わせて釧網本線の緑駅(清里町)が自治体の維持管理に移行する予定である。

抜海駅、南幌延駅、雄信内駅、東滝川駅、東根室駅 JR北海道の5駅 令和7(2025)年3月廃止へ

特急「大雪」
特急「大雪」

 同ダイヤ改正では、旭川~網走間の特急「大雪」が、特別料金不要・全車自由席の特別快速に格下げされる。車両は現在のキハ283系からH100形2両編成に変更となるが、通常のH100形よりも座席定員の増加や座り心地の改善が図られるとのことだ。一部の便が瀬戸瀬駅に停車する以外は停車駅に変化はなく、所要時間はそれほど変わらない。また、特別快速「きたみ」は快速に変更の上、運転区間を網走まで延長(北見~網走間各駅停車)される。同ダイヤ改正での引退が予定されていたキハ40形は石勝線から撤退するものの、完全引退は免れる模様だ。

特急「むろと」
特急「むろと」

 同ダイヤ改正では徳島~牟岐間の特急「むろと」も廃止となる。1日わずか1往復、下りが夜、上りが朝に運転されるローカル特急で、沿線民以外が乗り通すには牟岐に宿泊するしかないという乗車難易度の高さが鉄道ファンの間で知られていた。

1日わずか1往復 乗車難易度が高すぎる特急「むろと」 令和7(2025)年3月ダイヤ改正で廃止へ

E217系
E217系

 同ダイヤ改正では、首都圏の電車にも大きな変化が予定されている。中央線ではグリーン車の運転が開始され、それと引き換えに特急「はちおうじ」「おうめ」が廃止となると予定だ。また、E235系の導入が進む総武・横須賀線ではE217系の引退が迫っており、ダイヤ改正でE235系に統一される。

キハ100系
キハ100系

 同ダイヤ改正では、大船渡線のキハ100系がキハ110系に置き換わる。キハ100系は全長16mと短い気動車で、置き換え相手のキハ110系はデザインは同一ながら全長が20mと長い。同じくキハ100系の活躍する釜石線には冬より新型車両HB-E220系が導入される予定で、こちらも置き換えが進みそうだ。HB-E220系は八高線にも導入されてキハ110系を置き換える。

大船渡線のキハ100 車体の長い兄弟形式キハ110へ置き換えで引退へ

HB-E220系により置き換えか 釜石線・東北本線で16両が活躍するキハ100形0番台

新型車両「HB-E220」導入により置き換えか 今乗っておきたい八高線のキハ110系

211系
211系

 静岡地区で活躍を続けるJR東海の211系もこのダイヤ改正で引退する見込みだ。JR化以降に製造された車両とはいえ、国鉄型車両がまた一つ消えることとなる。211系の引退により、JR東海に残る国鉄型車両は飯田線の213系のみとなる。先に引退した車両の一部は三岐鉄道に譲渡済みで、三岐線での今後の活躍は要注目だ。

201系
201系

 関西では、風前の灯火といった感のある201系がついに引退する。東海道・山陽本線、大阪環状線、関西本線、おおさか東線などで活躍してきた同形式も残りはわずか4本のみとなり、いつ全廃されてもおかしくない状況だ。令和6(2024)年度中の引退が予定されているが、ダイヤ改正まで持たない可能性もあるだろう。

小田急8000形
小田急8000形

 3月頃には西武国分寺線で「サステナ車両」8000系がデビューする。小田急電鉄から譲り受けた8000形を改造したもので、塗装は30000系に準じた市松模様となる予定だ。大手私鉄が他社から中古車両を譲り受けるのは珍しい事例で、他に東急電鉄から9000系の譲渡も予定されている。

京王からの中古車が活躍する伊予鉄道(写真の3000系は置き換え対象ではない)
京王からの中古車が活躍する伊予鉄道(写真の3000系は置き換え対象ではない)

 大手私鉄の西武鉄道が中古車両を導入する一方、中古車両が一般的だった地方私鉄では自社発注車が相次いで導入される。2月には伊予鉄道で7000系がデビューし、京王電鉄からの中古車両を置き換える予定だ。3月2日には一畑電車で8000系がデビューし、こちらも京王電鉄からの中古車両を置き換える。また、高松琴平電鉄も来年度以降の新型車両導入を予定している。

南海2200系
南海2200系

 春には南海2200系の引退が予定されている。高野線用の22000系「角ズーム」を支線用に改造・転用したもので、後継車両2000系の支線転用により置き換えが進んでいた。2編成が銚子電鉄に譲渡、1編成が廃車され、現在は2編成が残るのみだ。引退にあたって2231編成を22000系時代の塗装に復元する。また、南海電鉄では高野線の6000系も年度内の引退が予定されている。

元「角ズーム」南海2200系 令和7(2025)年春引退へ 残る2編成のうち1編成を旧塗装に

東武10030系
東武10030系

 春には東武野田線に12年ぶりの新型車両80000系が導入される。置き換え対象は8000系と10030系で、残存する60000系は5両編成に減車される。8000系の陰に隠れてあまり注目されてこなかった10030系も早めに記録しておいた方がよさそうだ。

新京成8800系
新京成8800系

 4月1日には新京成電鉄が親会社の京成電鉄に吸収合併され、京成松戸線となる。新京成線は陸軍鉄道連隊が演習用に建設した線路を元に建設された路線で、京成電鉄の子会社である新京成電鉄によって運行されてきた。合併により、新京成の社名は消えるが、運行形態などは大きく変わらない予定だ。これにより、関東地方から準大手私鉄は消滅する。

泉北高速5000系
泉北高速5000系

 同じく4月1日には泉北高速鉄道も親会社の南海電鉄に吸収合併され、南海泉北線となる。元は大阪府などが出資する第三セクターの「大阪府都市開発」で、外資系投資ファンドへの株式売却を巡る問題の結果、平成26(2014)年7月1日に南海電鉄の子会社となった。開業当初より南海高野線と相互直通運転を行っており、子会社化後は南海の路線の一つのような運行形態が取られてきたが、こちらも吸収による大きな変化は当面ない模様だ。

泉田駅に到着する701系
泉田駅に到着する701系

 ゴールデンウイーク前には奥羽本線の新庄~院内間が非電化で復旧する予定だ。同区間は昨年7月25日の豪雨で被害を受け不通となっていたが、復旧に際して電車(701系)での運転から、気動車(GV-E400系もしくはキハ110系)での運転に変更される。県境を含む同区間は利用者が極めて少ないことから、維持費が高価な電化設備を維持する必要はないと判断されたのだろう。

広島駅停留場
広島駅停留場

 夏には広島電鉄駅前大橋線が開業する予定だ。広島駅~猿猴橋町~的場町間が廃止され、広島駅~稲荷町~松川町(仮称)~比治山下間の新線に切り替わる。これにより、広島電鉄は広島駅に高架で乗り入れ、一部区間が環状線化する。路面電車の町・広島がさらに進化することになりそうだ。

仙石線205系
仙石線205系

 冬頃には仙石線に新型車両E131系が導入され、既存の205系3100番台を置き換える。長らく首都圏の中古車両が運行されてきた仙石線への新型車両導入は、宮城電気鉄道国有化以来約80年ぶりだ。JR東日本の205系は仙石線の他には南武線支線に1本を残すのみで、もはや風前の灯火といった感がある。

仙石線に新型車両「E131系」投入へ 首都圏の「お下がり」ではない純然たる新車は約80年ぶり

 令和7(2025)年度にはこのほか、春に京福電気鉄道の新型車両モボ1形、下期に東京臨海高速鉄道の新型車両71‐000形、冬に京成電鉄の新型車両3200形が導入される。また、甘木鉄道や天竜浜名湖鉄道も新型車両導入を計画している。

 車両以外の面では、ICカードの利用可能エリアが一層拡大する予定で、中京・長野・鳥取・高岡・長崎(大村)・宮崎の各エリアのほか、伊予鉄道と近江鉄道の全線と三岐鉄道北勢線にも導入される。

 準大手私鉄2社の合併による消滅や各路線への新型車両導入のある今年もまた、鉄道ファンにとって忙しい年になりそうだ。

鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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