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新型車両「HB-E220」導入により置き換えか 今乗っておきたい八高線のキハ110系

清水要鉄道ライター
明覚で交換するキハ112(左)とキハ110(右)

東京都の八王子と群馬県の高崎(倉賀野駅)を結ぶ八高線。高麗川以北は首都圏では珍しい非電化路線で、ディーゼルカーのキハ110系が活躍している。先週、この八高線に新型車両「HB-E220」が導入されるというニュースがX(旧:Twitter)を駆け巡った。情報の出所は鉄道車両の設計も行う三共技研工業というメーカーのホームページ(現在はメンテナンス中)で、京成電鉄の新型車両3200形と共に「JR東日本 HB-E220 車体設計」の記述があったのだ。形式名から見てハイブリット気動車とみられる「HB-E220」の詳細は不明で、導入線区も明らかになっていない。では、なぜ導入線区が八高線と予測されているのか。

キハ110‐207(明覚にて)
キハ110‐207(明覚にて)

その根拠として挙げられるのが今年度から八高線への導入が予定される踏切制御システムだ。現在の踏切制御は地上設備によって行われているが、これを衛星を活用した列車位置検知と携帯無線情報システムによる伝達に切り替えることで、精度向上とコスト削減を図るというもので、導入にあたっては車両の改造も必要となる。一方、現在八高線で運行されるキハ110系列は30年前に製造された車両で、経年を考えると改造よりはこの機会に置き換えられると考えた方が自然だろう。

キハ111‐204(寄居にて)
キハ111‐204(寄居にて)

八高線で活躍するキハ110系は平成5(1993)年3月18日から平成8(1996)年3月16日にかけて導入されたもので、特に延命工事などは施行されていない。単行でも走れる両運転台のキハ110が9両、片運転台のキハ111+キハ112が6本12両の計21両が在籍しており、1~3両編成で運行されている。キハ111とキハ112の違いはトイレの有無で、キハ112にはトイレがない。

キハ112‐206(倉賀野にて)
キハ112‐206(倉賀野にて)

キハ110系はJR東日本が初めて開発した量産型気動車で、八高線だけでなく東北や東山の路線でも数多くが活躍するいわば「東日本のローカル線の主力」だ。同じデザインで車体が3.5m短いキハ100系も東北で活躍している。国鉄型のキハ40が定期運用を終了した今では現役最古参のディーゼルカーで、初期車は製造から30年以上経っていることを考えると、そろそろ引退してもおかしくない。

高麗川でキハ110の3両編成(左)と209系3000番台(右)が並ぶ。209系は引退済み
高麗川でキハ110の3両編成(左)と209系3000番台(右)が並ぶ。209系は引退済み

八高線で活躍する21両はドアが引き戸に変更されるなどマイナーチェンジが行われた200番台で、東北で活躍するもっと古い車両の中にはプラグドアの車両も存在する。これらの車両の方が車齢が高いことや、プラグドアの整備の手間などを考えると、八高線への新型車両投入で捻出された200番台を盛岡などに転属させてより古い車両を玉突きで置き換えるというのも考えられないことではない。

キハ112‐204(寄居にて)
キハ112‐204(寄居にて)

他線区への転属だけでなく、他の鉄道会社への譲渡も可能性としてはあるだろう。キハ110は製造から30年が経過しているとはいえ、車齢60年超えの車両もいる小湊鉄道キハ200に比べればはるかに新しいし、第三セクターの軽快気動車(LE-DC、NDC)と比べれば状態はいい。中古車両5両の導入を計画している山形鉄道が購入するのではなどとの予測もあるが、果たしてどうなるだろうか。

キハ110‐222(明覚にて)
キハ110‐222(明覚にて)

もっと古い国鉄型のキハ40がまだまだ現役であるがゆえに、鉄道ファンからはあまり「古い車両」として扱われることのないキハ100系・キハ110系。製造から30年が経過し、そろそろ今後が気にかかる車両の一つだ。当たり前のように乗ったり撮ったりできる今のうちに、記録したり旅を楽しんだりしておきたいものだ。

鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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