仙石線に新型車両「E131系」投入へ 首都圏の「お下がり」ではない純然たる新車は約80年ぶり
12月24日、JR東日本東北本部は、宮城県を走る仙石線に新型車両を導入すると発表した。E131系電車を、4両編成14本計56両導入し、令和7(2025)年冬頃より営業運転を開始する。全編成をE131系に統一してからはワンマン運転を実施する予定だ。
現在、仙石線で活躍するのは205系3100番台で、4両編成16本64両が在籍している。山手線・埼京線で活躍していた車両を改造の上で転用してきたもので、平成14(2002)年から平成16(2004)年にかけて入線した。製造年は昭和60(1985)年から平成2(1990)年。製造から約35~40年を経て老朽化している上に、海に近い路線環境ゆえに塩害の影響もあってか、近年は車両故障による遅延や運休も発生していた。
205系3100番台の先頭車は中間車から改造されたもので、205系の原型とは印象が異なる前面が特徴だ。転用にあたっては耐寒改造とトイレの設置が行われた。M2~M5とM8の4編成の石巻方先頭車には、クロスシートとロングシートの両方を切替えることができる「2WAYシート(デュアルシート)」が装備され、塗装も他の編成と異なっていたが、仙石東北ライン開業で仙石線の快速が廃止されてからはロングシートに固定されている。
当初19編成が投入された205系3100番台だが、東日本大震災で被災してM7、M9の2編成が廃車となった以外は、20年に渡って仙石線での活躍を続けてきた。しかしながら、今年4月18日にM4編成が郡山総合車両センターに回送され、4月20日に廃車。被災車両以外では初の廃車で、ダイヤ改正での減便により運用が減ったことがその理由と思われる。これにより205系は残すところ16本となった。
仙石東北ラインで活躍するHB-E210系を除けば、仙石線への純然たる「新車」の導入は実に約80年ぶりとなる。私鉄の宮城電気鉄道を戦時中に国有化した仙石線は、周囲の路線が交流方式で電化されたのに対し、その開業経緯から直流電化の「離れ小島」と言うべき路線だった。宮城電気鉄道が国有化直前に発注した車両を国鉄が昭和21(1946)年8月に購入したモハ810形を最後に、国有化以降に入線した車両は205系に至るまですべて首都圏の「お下がり」である。国鉄・JRとしては、離れ小島の路線のためにわざわざ予算を割いて直流電車を直接新製投入するくらいなら、首都圏に新車を入れて、それにより捻出した「お下がり」を仙石線に送った方が安上がりとの判断だったのだろう。同様の事例は、同じく私鉄買収路線である富山県の富山港線(富山ライトレールを経て現在は富山地方鉄道)でも見られた。
そんな仙石線に約80年ぶりの新車として導入されるE131系は、房総半島各線のワンマン化に合わせて令和3(2021)年3月13日より営業運転を開始した車両で、のち相模線に4両編成の500番台、東北本線・日光線に3両編成の600番台、鶴見線に3両編成の1000番台が導入された。房総では209系、相模線と東北本線・日光線、鶴見線では仙石線と同じく205系を置き換えている。600番台までは連結運転を考慮して貫通扉を装備していたが、1000番台では固定されたダミーの扉となり、仙石線用ではダミーの扉も廃して非貫通のデザインとなる。これまでのE131系とは印象を一新することとなりそうだ。
205系の老朽化が進む中での新車導入は、利用者にとっては福音であるが、導入予定本数が205系よりも少ないのが気にかかるところである。
国鉄末期、山手線を皮切りに首都圏各線に導入され、JRになってからも増備が続いた205系も、JR東日本で営業を続けるのは仙石線と南武支線のみだ。南武支線ではE127系への置き換えにより1本のみ残っているだけであることを考えれば、仙石線は205系が主力として活躍する最後の路線と言える。JR東日本で最後まで残った205系の楽園が消える日もそう遠くないだろう。