北陸新幹線敦賀延伸に、国内からのトロリーバス消滅など 令和6(2024)年の日本の鉄道を振り返る
令和6(2024)年も残すところあと2日。日本のみならず世界中で様々な出来事のあった一年だったが、日本の鉄道もまたその例外ではない。この記事では一年の締めくくりに、今年の日本の鉄道にあった出来事を振り返っていこう。
今年一番の出来事はやはり3月16日の北陸新幹線敦賀延伸だろう。金沢~敦賀間が延伸され、これに伴い、並行在来線である北陸本線敦賀~金沢間が「IRいしかわ鉄道」「ハピラインふくい」として分離された。福井県にとっては初めての新幹線で、これにより東京駅から福井駅まで一本で行けるようになった一方で、大阪・名古屋へは敦賀での乗換えを強いられることとなった。一日も早い敦賀~京都・大阪間の開業が待たれる。
新規開業路線としては、他に北大阪急行電鉄南北線の延伸があり、3月23日に千里中央~箕面萱野間が開業した。
開業した路線がある一方で廃止になった路線も存在する。4月1日には根室本線の富良野~新得間が廃止となった。同区間はかつては道央と道東を結ぶ大動脈の一部であったものの、石勝線の開通によってローカル線に転落。過疎化や車社会化の進行により乗客の減少が続く中、平成28(2016)年8月31日の台風10号による被害で東鹿越~新得間が不通となったことがとどめを刺す形となった。ドラマ『北の国から』に登場した布部駅、映画『鉄道員』に登場した幾寅駅も路線と共に廃止となっている。
『北の国から』『鉄道員』の舞台 4月1日で部分廃止となる根室本線(富良野~新得間)
作中と現実、二度の廃止を迎えた『すずらん』明日萌駅と『鉄道員』幌舞駅
また、同日には貨物専業路線ながら名古屋港線も廃止されている。
5月1日にはスカイレール広島短距離交通瀬野線が廃止となった。平成10(1998)年8月28日に開業したスカイレールは、懸垂式モノレールとロープウェイを組み合わせたような乗り物で、日本はおろか世界で唯一の珍しい存在であった。その特殊さゆえに維持や設備更新に多額の費用がかかることから、車両や軌道などを製造するメーカーの廃業を期に、電気バスに転換されることとなった。
【5月1日廃止】世界でも広島にしかないゴンドラとモノレールを合わせた不思議な乗り物「スカイレール」
12月1日には立山トンネルトロリーバスも電気バスへの更新により廃止となっている。見た目はバスながら、屋根上のトロリーポールで架線から電気を取り入れて走る乗り物で、法的には鉄道の一種だ。同じ立山黒部アルペンルートの関電トンネルトロリーバスが電気バスに更新されてからは、国内唯一のトロリーバスであった。当線の廃止により、日本無軌道電車以来96年に渡る日本のトロリーバスの歴史に終止符が打たれている。
今年はトロリーバスの話題が続いた年で、12月には川崎市営トロリーバスの保存車が解体寸前のところで愛好家に救出されるというニュースもあった。
11月30日で営業を終了する日本で最後のトロリーバス 立山トンネルトロリーバス(室堂~大観峰)
大都市からは早々と消えるも、観光用として細々と生き続けた日本のトロリーバス その96年の軌跡
路線だけではなく駅もまた生まれたものと消えたものがあった。3月16日ダイヤ改正では北海道で無人駅が5駅(恩根内駅、初野駅、愛山駅、滝ノ上駅、中ノ沢駅)廃止されている。
令和6(2024)年3月16日ダイヤ改正で開業する駅・廃止される駅・改称される駅・移転する駅
恩根内駅、初野駅、愛山駅、滝ノ上駅、中ノ沢駅 JR北海道の無人5駅の来年3月廃止が確定
一方で、路線の開通によらない新規開業駅は西松任駅(石川県、IRいしかわ鉄道線)、桜並木駅(福岡県、西日本鉄道天神大牟田線)の2駅のみと少なかった。
12月1日には大沢駅(山形県、奥羽本線)が休止となり、廃止の前段階と見られている。
12月1日より休止 スイッチバック跡が残るスノーシェルター内の無人駅 奥羽本線 大沢駅を再訪してみた
他に、駅にまつわる特筆すべき出来事としては9月29日の予讃線松山駅の高架化がある。なお、建替え等で解体されたり役目を終えた駅舎については別途まとめているので、気になる方はそちらを参照してほしい。
【消えた駅舎2024】令和6(2024)年上半期(1月~6月)に解体・役目を終えた駅舎たち
【消えた駅舎2024】令和6(2024)年下半期(7月~12月)に解体・役目を終えた駅舎たち
今年に登場した新型車両も見てみよう。4月6日からは岡山と山陰を結ぶ特急「やくも」で273系が走りはじめた。「やくも」にとっては42年ぶりの新車で、国鉄時代からの381系を置き換えている。
他に特筆すべきものとしては山形新幹線のE8系、阪急2300系(2代目)、近鉄8A系、仙台市営地下鉄3000系、熊本市電2400形、福岡市営地下鉄4000系などがあり、関西私鉄と地下鉄の新型車両が目立つ年となった。阪急電鉄では2300系導入と同時に座席指定サービスを開始、広島地区のJRの快速でも「うれシート」が導入されるなど、座席指定サービスがさらに広まりを見せた年でもあった。
譲渡車では上毛電鉄800形、京都丹後鉄道KTR8500系、銚子電鉄22000形、大井川鐡道6000形が第二の車生を歩み始めている。
東京メトロ日比谷線03系を改造した上毛電気鉄道の新型車両「800形」、2月29日より営業運転を開始!
銚子電鉄で「シニアモーターカー」として再出発! 「角ズーム」南海22000系の波乱万丈人生
登場した車両があれば、当然その一方で引退した車両もある。6月15日には特急「やくも」の定期運用から381系が引退。これに国鉄型特急電車の定期運用は消滅した。国鉄型車両の撤退は他でも進み、キハ40系や205系が一部路線から引退したほか、SL「人吉」やJR東日本高崎支社のEF64・EF65・DD51が引退。岡山地区では113系・115系が活躍の場を徐々に狭めている。JR世代では房総地区の特急で活躍していた255系が引退した。
「振り子式」特急車両381系 特急「やくも」での42年に及ぶ定期運行に終止符
私鉄・地下鉄では、南阿蘇鉄道MT-2000形・MT-3000形、いすみ鉄道キハ52、大阪メトロ20系、東京メトロ02系、あいの風とやま鉄道413系、静岡鉄道1000形、舞浜リゾートライン10形、ひたちなか海浜鉄道キハ205・ミキ300、阪神電鉄201・202形が引退したほか、形式消滅こそしていないが引退した車両は多い。
2月12日で引退!大きな窓から雄大な風景を眺めることができる名車 南阿蘇鉄道MT‐3001
残りわずか3本!3月で引退する地下鉄初のVVVF車 大阪メトロ(旧:大阪市営地下鉄)中央線20系
アルピコ交通 上高地線3000形(モハ3005+クハ3006) 初代「なぎさTRAIN」が引退
富士山麓電気鉄道 富士急行線 1000系1001号編成が定期運用から引退
1月1日に発生した能登半島地震は鉄道にも大きな影響を与えた。のと鉄道や七尾線は大きな被害を受けたが、関係者の日夜も問わぬ努力の結果、4月6日には能登半島を走るすべての鉄道が運行を再開している。一方、黒部峡谷鉄道は鐘釣橋の損傷から今季の全線開通を断念し、猫又駅までの一部区間運行となった。猫又駅は通常では降りることのできない関係者専用駅であったのが、今年は仮設ホームにより旅客営業。日本で唯一「猫」のつく駅名ということもあって注目を集めた。なお、黒部峡谷鉄道は来年度も全線開通ができない見通しで、全線開通の目途は立っていない。
黒部峡谷鉄道のトロッコ列車で、今しか降りられない猫又駅に行ってみた
10月末から11月にかけては、青春18きっぷの大幅改定が鉄道ファンを中心に大きな反響を呼んだ。これまでは期間内の任意の5日間を飛び飛びに利用することができたのが、自動改札対応に伴って連続化された。一方、3日間用も登場しているが、こちらは5日間用よりも1日あたりの価格が高い。以前と比べると使い勝手が悪くなったので、筆者は今期の購入を見送ったが、果たして来春の18きっぷはどのようになるだろうか。
青春18きっぷに大変化! 自動改札に対応するも連続使用のみ、複数人での使用は不可能に
18きっぷ改悪の陰に「転売」「偽造」問題 一部の不心得者のせいで多くの利用者に皺寄せが…
以上、今年の日本の鉄道についてざっくりと振り返ってみた。今年廃止になったわけではないが、11月末には久留里線の廃止方針と弘南鉄道大鰐線の休止が相次いで表明され、反響を集めている。果たして、来年以降の日本の鉄道はどのように変わっていくであろうか。それでは、よいお年を。