日本最北の無人駅 令和7(2025)年3月で廃止か 宗谷本線 抜海駅(北海道稚内市)
地元が廃止を受け入れたことが先日報じられた恩根内駅に続き、同じ宗谷本線の抜海駅についても令和6(2024)年度末での廃止方針が昨日報じられた。この方針通りに進めば、廃止は令和7(2025)年3月となる。
抜海駅は、日本最北の駅である宗谷本線の終点・稚内から2駅、稚内市の南部にあり、「日本最北の無人駅」だ。令和3(2021)年3月13日に宗谷本線で無人駅が大量廃止になった際は、廃止対象として名前が挙がるも、稚内市の維持管理に移行することで生き延びている。この際、稚内市は維持管理での存続を当面の措置としており、代替交通の実証実験や地元住民との協議を繰り返してきていた。
抜海駅の令和3(2021)年度の平均乗車人員は2.0人。線内の他の無人駅に比べればマシな数字だが、それでも利用者が多いとはお世辞にも言えない。駅前には人家が一軒あるのみで、抜海の集落とは直線距離で2キロ離れている。抜海は海に面した集落で、郵便局や民宿もあるが、健康な成人の足でも駅まで歩いて約25分かかる。スクールバスが運行されているために学生が駅を利用することは見込めず、車を運転できない住民にとっても乗るまでに歩かなければいけない駅よりも集落の中まで来てくれるデマンドバスの方が便利なのは明らかだ。実際に利用するからというよりも「地域のシンボル」としての存在意義の方が高いと思われる。
集落から離れているゆえに地元利用が見込めない分、存続を求める理由としては「観光客の利用があること」も挙げられていた。日本最北の無人駅である抜海駅は、古い木造駅舎が残っており、その立地から「秘境駅」として鉄道ファンからの人気も高い。抜海集落を観光するために抜海駅で降りる観光客もいるようだ。だが、抜海駅の本数の少なさゆえに鉄道での訪問は難易度が高く、観光客や鉄道ファンでも車での訪問が多いだろう。
抜海駅に停車する列車は下り稚内方面が7:50、11:48、19:29の3本、上り幌延・名寄方面が5:39、10:46、18:21、20:29の4本だ。代替交通については検討中であるが、今の駅のダイヤよりも住民にとって使いやすいものとなることを望みたい。
抜海駅の開業は大正13(1924)年6月25日で、来年で開業百周年を迎える。廃止時期が今年度末ではなく来年度末とされたのは、せめて節目の年を迎えさせてやろうという稚内市から駅へのはなむけであろうか。廃止については稚内市が方針として決めて地元住民に説明をした段階で、正式に決定したわけではないが、このまま廃止となる公算が大きい。原野の中にある日本最北の無人駅に降りることができるのもあと一年八か月ほどだろう。
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